帰国子女ということもあり文章を組み立てるのが苦手なようです[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小3女子(性格:感情的なタイプ)のお母さま


質問

あなたはどう思いますか? のような、自分の気持ちを問われる問題が苦手です。帰国子女ということもあり、うまく文章を組み立てられません。作文や読書感想文などが不得意です。


小泉先生のアドバイス

高学年になる前の語彙(ごい)の強化と読書などで、文章に慣れることが大切。

「自分の気持ちを問われる問題」や「文章を組み立てる」のが苦手ということですが、帰国子女のため国語が苦手、というお子さまは少なくありません。年数や過ごし方によって度合いは異なりますが、海外に滞在していたことが、国語のでき具合になんらかの影響を及ぼすことは多いようです。

そこで、今回は帰国子女の皆さんのための、国語の苦手克服法を考えてみます。なお、ご質問は記述問題や作文に関するものですが、それらの苦手の原因も以下に示す語彙不足や、文章に慣れていないということなどが深くかかわっていると思われますので、参考にしてください。

まず、苦手な原因として圧倒的に多いのが「語彙の不足」です。漢字の書き取りや読み取りができない、ことわざを知らない、そして慣用句の意味がわからないなどで苦労しています。問題文も2~3個の言葉がわからないならまだ読めるでしょうが、それが5個、6個ともなればちんぷんかんぷんになってしまいます。「語彙が足りない」と感じたら、とにかく言葉を増やす工夫をすべきでしょう。市販のドリルなどを使用して漢字の書き取りや読み取りを毎日勉強するとか、読書の習慣をつけて本をたくさん読むなどするとよいでしょう。
また、ことわざや故事成語などを勉強する必要もありますが、忘れがちなのが慣用句です。慣用句とは「鼻が高い」などの言い回しのことですが、日常的に使う簡単なものさえも知らない場合があります。漢字とともに慣用句の学習も忘れずに行ってください。高学年になってからでは時間的に余裕がなくなりますから、できるだけ低い学年のうちから語彙は増やしておくべきです。ただし、6年生になってからでも語彙不足を感じたら、補強のための勉強はすべきでしょう。語彙の勉強は、やればやっただけの成果は出てきますから、あきらめずに取り組んでください。

読解では、物語文における登場人物の気持ちがわからないなどの悩みが多いようです。心情表現が意味する気持ちがわからないと、記述問題や選択肢問題で点数がとれないばかりか、物語の展開自体も理解できない場合があります。特に、微妙な心情表現などは、教えてもなかなか実感できないものもあるでしょう。物語文に強くなるためには、やはり物語を読むことがいちばんです。人と人との感情のやりとりをお話の世界の中で疑似体験できますから、手軽にできる勉強方法だと思います。ただし、これも5、6年生になるとなかなか時間がとれませんから、低学年、中学年のうちに本を積極的に読むようにしておくとよいと思います。

さて、読書だけではなかなか解消しないのが説明的文章の読解です。説明的文章とは、説明文や論説文ですが、このような文章を本で読むことはあまりないからです。この手の文章に慣れていないのは中学受験(検)生全般にいえることですが、帰国子女の皆さんは既に述べたように、語彙が不足している分、さらに不利だと思います。日常的に使われるものばかりではなく、説明的文章で使われるような抽象的な言葉にも慣れる必要があるでしょう。そのためには、やはりそのような文章を問題文で多く読むことが必要だと思います。また、知らない言葉が出てきたら、辞書で言葉の意味を積極的に調べる努力をすべきでしょう。

以上、帰国子女の皆さんの国語の苦手を克服する方法として、高学年になる前の語彙の強化と読書などで文章に慣れることが大切であると述べましたが、それらの勉強には地道な努力が必要です。1つ言葉の意味を覚えたからといって、すぐにテストの点数に反映されることはまずないからです。しかし、努力を積み重ねれば必ず成果は出てきます。努力しがいのある学習分野ですから、焦らず、たゆまず、怠らずに続けていってください。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

子育て・教育Q&A