字が乱雑なので減点されることがあります[中学受験]
平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。
質問者
小5男子(性格:大ざっぱ)のお母さま
質問
問題は理解しているようですが、字が乱雑なので、この点を減点されることがあります。読む人のことを考えて丁寧に書くように話していますが、なかなか改善しません。
小泉先生のアドバイス
答案は丁寧な字で、しかも「親切」でなければならない。
字が乱雑なお子さまは男の子に多く、それを心配されるお母さんは少なくありません。字が下手なのは仕方ありませんが、読めないような字を書いて済ませているのは問題です。少なくとも、採点者が間違いなく読める字を書けるように練習すべきでしょう。しかし、「もっと丁寧に書きなさい」と言うと、「でも、試験では時間がない」と反論するかもしれません。たしかに問題数に比べて、時間は十分とは言えない試験もあります。たとえば、記述問題が多く出題される問題を解く場合は、答案を仕上げることを急ぐあまり、なぐり書きになってしまうかもしれません。特に、書くことがなかなか決まらず、「書いては消し」を繰り返すようであれば、時間は足りなくなり字もさらに乱雑になるでしょう。
しかし、自分が考えていることが正確に伝わらなければ、たとえそれが正しかったとしても、結果は減点あるいは0点です。この厳しい現実を、なるべく早く納得させる必要があります。おそらく、お母さんが何度も注意するよりも、他人である先生からしっかり意見してもらうほうが効果的だと思います。答案の字は、上手な字である必要はありません。下手くそでも、きっちりと読める字であれば良いのです。心がけ次第で、丁寧な字の答案は必ず書けるようになると思います。
さて、答案の字が丁寧になっても、実はそれだけでは困ります。答案は「親切」でなければならないのです。「親切な答案」とは、どんなものでしょうか。それは、記述問題の場合が多いと思いますが、採点者が間違いなく解答者の考えを読みとれる答案です。たとえば、記述の答案では「比ゆ表現」「指示語(指示内容がない場合)」「俗語」は使わないのがルールです。これらの表現を使うと、答案があいまいになってしまうからです。解答者は、自分の答案を自分の目の前で採点してもらうことはできません。どんなに自分が考えたことが正しくても、それが採点者に伝わらなければ満点はもらえません。弁解はできないのですから、パッと見て、丸を付けたくなるような、わかりやすい親切な答案を心がける責任が解答者にはあるのです。
また、答案は書く順番についても注意する必要があります。たとえば、「犬の習性」について書かれている問題文があったとします。そして問いでは、「犬の習性について50字以内で説明しなさい。」とあったら、犬の習性についての記述がある、たとえば、3段落、4段落、5段落をそれぞれまとめれば良いでしょう。ただし、書く順番は3段落、4段落、5段落の内容順番にすべきです。理由もなしに、4段落、5段落、3段落にしてはいけません。採点者としては、当然、3、4、5段落の順番で書かれている答案を期待しています。それが、4段落の内容から書き始めてあると、3段落の内容を読み飛ばしたと判断するかもしれません。そして、最後のほうの3段落の内容を見過ごして、その分を減点してしまう可能性もあります。しかし、そのようなことが起こったとしても、残念ながら解答者がクレームをつけることはできないのです。
「親切な答案」とはどのようなものか、なぜ必要なのかが大体おわかりになったと思います。「親切」とは採点者にわかりやすい、すなわち、採点者に親切な答案を意味しますが、実はそれ以上に解答者に親切な答案なのです。ことわざに、「情けは人のためならず」というのがありますが、この表現を借りるのであれば、「親切な答案は採点者のためならず」といったところだと思います。