小中一貫「義務教育学校」の可能性は

4月から改正学校教育法が施行され、「義務教育学校」などの小中一貫教育が制度化されました。文部科学省の調査によると、公立学校のうち「義務教育学校」は22校、「小中一貫型小学校・中学校」は115件が開設されたことがわかりました。今後も、小中一貫教育は増加してくると予想されます。義務教育学校などの狙いとは、いったい何でしょうか。

  • ※小中一貫教育の制度化に伴う導入意向調査について
  • http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/ikkan/1369585.htm

調査は2016(平成28)年2月1日現在で、全国の市区町村教委などに、小中一貫教育の導入意向などを聞いたものです。9年間一貫教育を行う「義務教育学校」を2016(平成28)年4月に設置するのは、13都道府県(15市区町)の22校でした。内訳は、小中段階が同一施設内にある「施設一体型」が19校、小中段階の校舎が近くにある「施設隣接型」が3校。

学年の区切りを見ると「4-3-2」が15校、「6-3」が5校、「4-4-1」と「4-5」が各1校でした。この他、2017(平成29)年度以降の「設置予定」が114校で、開設済みも合わせて136校となる計算です。この136校の中身を見ると、施設一体型が109校(80%)、学年の区切りは「4-3-2」が77校(57%)と最も多く、これらのタイプが義務教育学校の主流となりそうです。

小中一貫教育では、義務教育学校以外にも、既存の小学校と中学校で一貫した教育課程を組める「小中一貫型小学校・中学校」も制度化されました。義務教育学校が一つの学校であるのに対して、一貫型小・中学校はあくまで別々の学校であるという違いがあります。一貫型小・中学校を2016(平成28)年4月に設置したのは21府県(37市町村)の115件(小学校231校、中学校115校)でした。内訳は、施設一体型が13件、隣同士の「施設隣接型」が10件、小・中学校がある程度離れている「施設分離型」が89件、「未定」が3件となっています。2017(平成29)年度以降の設置予定は322件で、設置済みと合わせて437件となっています。

一方、既に小中一貫教育を実施・実施予定の377市区町村のうちで、義務教育学校の設置予定は「ない」が64%、一貫型小・中学校の設置予定は「ない」が52%に上っています。まだ多くの市区町村が様子見の段階のようです。

ただ小中一貫教育は今後、次第に増えてくると思われます。それは義務教育学校などが一般的に言われる「中1ギャップ」の解消などの狙いと同時に、地域の再構築という役割も担っているからだといえます。

少子化による学校統廃合などと並行して、地域社会を形成していた力が衰えつつあることが現在の大きな課題となっています。これに対して文部科学省は、義務教育学校や一貫型小・中学校について、保護者や地域住民が学校運営に参加する「コミュニティ・スクール」(CS)にすることを期待しています。少子化による学校統廃合が避けられないなかで、新たに義務教育学校や一貫型小・中学校をCSにすることで、学校を中核にして衰退しつつある地域を再構築しようというのが、小中一貫教育のもう一つの狙いなのです。

小中一貫教育の制度化では、「中1ギャップ」対策ばかりに目を奪われがちですが、「地方創生」という役割もあるということを認識しておくことも必要でしょう。

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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