昨年度の高校3年生、「使える英語」にほど遠く……?

文部科学省が昨年(2014<平成26>年)7~9月に、国公立高校の3年生を対象に行った「英語力調査」の結果(外部のPDFにリンク)を公表しました。外国語教育の強化は現在検討されている学習指導要領の改訂の課題ですが、現行の教育でも深刻な実態を表した結果だといえそうです。

調査の分析に当たっては、世界標準となりつつある「CEFR」(セファール=ヨーロッパ言語共通参照枠)にしたがい、テストの得点をレベル分けしました。このうち、よく使われる日常表現や基本的な言い回しを、理解できるし、使えるという「A1」から、抽象的な話題でも複雑な文章の主な内容を理解したり、英語を母語とする人(ネーティブ)ともお互い緊張しないで普通にやり取りしたりできる「B2」までの4段階を指標として用いています(C1・C2は「熟練した言語使用者」のレベル)。
「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能別に見たところ、A1レベルの割合が「読む」で72.7%、「聞く」で75.9%、「書く」で86.5%、「話す」で87.2%を占めるという結果でした。つまり高校卒業間際になっても、まだ多くが英語初心者レベルにとどまっていると判定されるのです。

ところで、昨年度の高校3年生といえば現行ではなく、その前の指導要領(1999<平成11>年告示、2003<同15>年度入学生から全面実施)で学んできた生徒です。彼らが小学校に入学する直前の03(同15)年3月、文科省は「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」を策定し、中学校卒業者の平均が実用英語技能検定(英検)で3級程度、高校卒業者が準2級~2級程度)という目標を立てました。一方、CEFRに英検を対応させると、A1は3~5級、A2は準2級、B1は2級に該当するといいます。行動計画が実現されていれば、少なくともA2が多くなっていなければならないはずですが、高校卒業を控えても、まだ中学卒業レベルだったということになります。

一方、現行の指導要領では「英語I」を「コミュニケーション英語I」とし、英語での授業を基本にするなど、コミュニケーション重視の姿勢を更に鮮明にしています。閣議決定された「第2期教育振興基本計画」(13<同25>~17<同29>年度)でも、高校3年生の目標は英検準2級~2級「以上」です。文科省は今年度も英語力調査を行うことにしていますが、新年度の高校3年生は、このコミュニケーション重視の英語を3年間学んできたわけですから、「今回よりは成績が上がるはずだ」と関係者は期待をかけています。

ただ、質問紙調査の結果では、「英語が好きではない」という回答が6割近くを占めています。英語嫌いが多いままでは、「英語で授業」を行っても効果が上がりにくいでしょう。次期指導要領では、中学校でも「英語で授業」を行うことにしたらどうかという提案もあります。グローバル化が国内にもますます浸透してきている今日、早急に学校での英語の授業を変え、英語嫌いを一人でも減らすことが求められるでしょう。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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