「勉強しなさい」よりも効果的!?な、子どもの学習意欲を高める関わり方

ベネッセ教育研究開発センターでは2011(平成23)年9月、首都圏の小中学生の子どもを持つ母親約7,500名を対象に「第4回子育て生活基本調査」を実施しました。
子どもへの関わり方で、母親が最も頭を悩ませるのは学習面。いつ、どのような働きかけをしたらよいのか、いつごろ手を離してもよいのか……。今回は母親の関わり方と子どもの学習への取り組みの状況について、小1~中3までを比較しながら、子どもの学習意欲を高める効果的な関わりについて考えていきたいと思います。


「勉強しなさい」よりも効果的!?な、子どもの学習意欲を高める関わり方


母親が子どもの勉強をみる時間(小1~中3)

まずは、子どもの平均的な学習時間(学校以外)と、母親が子どもの勉強をみる時間を見ていきます。

【図1 子どもの勉強時間・母親が子どもの勉強をみる時間(平均 学年別)】

図1 子どもの勉強時間・母親が子どもの勉強をみる時間(平均 学年別)



注)子どもの勉強時間の平均は学習塾や予備校などでの勉強を含む時間であり、「ほとんどしない」を0分、「およそ30分」を30分、「3時間30分」を210分、「それ以上」を240分のように置き換えて、無回答・不明を除いて算出した。母親が子どもの勉強をみる時間の平均は「3時間」を180分、「それ以上」を210分のように置き換えて、無回答・不明を除いて算出した。


●小1のときは、母親が子どもの勉強時間約30分を、ほぼつきっきりでみている
小1のときは、子どもの勉強時間平均37.0分に対して、母親が勉強をみる時間が平均31.4分ですから、ほぼつきっきり状態です。

●小4の子どもの平均勉強時間は1時間。その半分(約30分)をみる母親
母親が子どもの勉強をみる時間は、小1~小4までほぼ変化なく、平均30分。一方、子どもの勉強時間は着実に増えていき、小4で約1時間に。小4の母親は子どもの勉強時間の半分に関わっていると言えます。

●中学生になると、母親がみるのは10分前後
小学校高学年に入ると、母親が勉強をみる時間は減り始め、中学生になると10分前後となり、ほとんどみることがなくなるようです。


親の関わりが減るもの、変わらないもの

では、母親は具体的にどのように子どもの学習に関わっているのか聞きました。

【図2 学習面での母親の関わり】

図2 学習面での母親の関わり


注)「よくある」+「時々ある」の計


●学校の宿題を手伝う親は小1で5.5割。学年とともに減少して、中3で1割
小1~小2は約半数の親が学校の宿題を手伝っていますが、小3~小4で約4割、小5~小6で約3割、中1で約2割、中2~中3で約1割……と、徐々に減少していきます。

●夏休みの宿題は親の手伝い率が高く、小1で8割。学年とともに減少して中1で4割
学年が上がるにつれ親が手伝う率が減少するのは、ふだんの宿題も夏休みの宿題も同じですが、夏休みの宿題のほうがよく手伝っています。中1になっても4割の親がなんらかの手伝いをしているという結果に。

●「勉強しなさい」の声かけは、全学年共通で約8割の母親がしており、変わらない
小1~小5で8.5割前後、小6~中学生で8割前後と、高学年になれば親の声かけも少しは減りますが、それでも約8割の親が、「勉強しなさい」と、声をかけ続けていると言えます。

ここで、「勉強しなさい」という声かけをした場合と、しない場合の子どもの学習時間をチェックしてみます。

【図3 「勉強しなさい」という声かけ有無別に見た子どもの学習時間】

図3 「勉強しなさい」という声かけ有無別に見た子どもの学習時間


注1)ある群は「『勉強しなさい』と声をかける」ことが「よくある」「時々ある」、なし群は「あまりない」「ぜんぜんない」
注2)子どもの勉強時間の平均は学習塾や予備校などでの勉強を含む時間であり、「ほとんどしない」を0分、「およそ30分」を30分、「3時間30分」を210分、「それ以上」を240分のように置き換えて、無回答・不明を除いて算出した


●「勉強しなさい」と声かけをしないほうが、勉強時間が長い学年も!
小1~中2までは、「勉強しなさい」と声かけをしても、しなくても、5分程度しか差はつきません。声かけの有無で、勉強時間の長さは変わらないと言えそうです。しかし、中3生になると差がつき、「勉強しなさい」と声かけされないほうが、約25分も多く勉強しています。


親の関わりが増えるもの

次に、「子どもと将来や進路について話をする」といった関わり方の割合と、こういった将来や進路の話をするかしないかで、学習時間に差異があるか見ていきます。

【図4 子どもと将来や進路について話をする】

図4 子どもと将来や進路について話をする


注)「よくある」+「時々ある」の計



【図5 子どもと将来や進路について話すことの有無別に見た子どもの学習時間(平均)】

図5 子どもと将来や進路について話すことの有無別に見た子どもの学習時間(平均)


注1)ある群は「子どもと将来や進路について話をする」ことが「よくある」「時々ある」、なし群は「あまりない」「ぜんぜんない」
注2)子どもの勉強時間の平均は学習塾や予備校などでの勉強を含む時間であり、「ほとんどしない」を0分、「およそ30分」を30分、「3時間30分」を210分、「それ以上」を240分のように置き換えて、無回答・不明を除いて算出した


●将来や進路のことを話す親子は、小1で5割弱→中3では9割以上に
学年が上がるごとに、将来や進路について話をする割合は着実に増えていき、小1では約5割弱でも、小6で8割、中3で9割以上となります。

●親子で将来や進路について話をするほうが、学習時間は長い
母親と将来や進路について話をしている子どものほうが、勉強時間が長いのはどの学年も共通。特に小4以降はその差が歴然として、小4~小5では20分前後、小6では30分以上の差に。これは中学受験勉強などが関係するかもしれません。
中学生でも同様に、中1~中2は20分弱、中3では30分以上の差と、受験の前にさらに差がつく傾向が見てとれます。


「勉強しなさい」の声かけより、「親子で将来や進路について話をする」ことのほうが、子どもの学習意欲を高める効果ありかも!?

学年が上がるにつれ、母親が学習を手伝う時間は減りますが、「勉強しなさい」という声かけは8割前後の母親が、小1~中3まで変わらず続けています。しかし、「勉強しなさいという声かけの有無で勉強時間に差はなく、中学生ではむしろ声かけされていない子どものほうがよく勉強している」といった結果が出てきました。

一方、「将来や進路について話す」ことは、学年が上がるにつれ増えていきますが、「母親と将来や進路について話している子どものほうが、低学年においてさえ勉強時間が長い」という傾向が見えてきました。それを裏付けるかのように、「将来の目標イメージが明確な子どもは、自律的に勉強している」というデータもあります。自分の将来の目標イメージを描く手助けとして「子どもと将来や進路について話をする」ことは、どの学年の子どもにとっても学習意欲を高めるために大切な働きかけであり、中学生になるまで待つ必要はないと言えます。

「勉強しなさい」の声かけが必要なときも、もちろんありますが、それだけでなく、低学年のうちから将来について親子で楽しく話し合うことを、積極的に始めてみてはいかがでしょうか。


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