体格の特徴を生かす! 身長・体重を強みに変える!

季節は秋から冬へ。勉強にもスポーツにも最適な季節と言えます。スポーツの世界では、体格の違いというのは、ハンデであると考えている人も多いと思います。実際「うちの子は身体が小さいから……」とか「うちのは、ちょっと肥満気味だから運動に向いてないのでは……」という声をよく耳にします。しかし、決してそんなことはないのです。もちろんプロのレベルになると、体格や体力の違いが結果に直結することはありますが、友達とスポーツを楽しんだり、クラブ活動でスポーツに親しんだりするレベルでは、決して体格のハンデを嘆く必要はありません。そこで今日は、スポーツと体格についてお話ししたいと思います。



生体力学(バイオメカニクス)的なスケール効果を~小さい身体

まず、「なぜ、なでしこジャパンは、大柄な外国人に勝ったのか?」ということからお話ししたいと思います。皆さんは、≪スケール効果≫という言葉をご存じでしょうか? スケール効果とは、生体力学(バイオメカニクス)の世界で使われる言葉なのですが、スポーツの場合、簡単に言うと、「小さいほうがより俊敏性が高い」ということです。
たとえば、脚の長さが1メートルの人と50センチの人がいるとします。この時、1メートルの人が脚を1歩踏み出した距離を、50センチの人は2歩かかるということになります(厳密にはそうではないですが、わかりやすく説明しています)。同じ距離を脚が長い人は1歩で、脚が短い人は2歩かかる、ということは、脚が短い人にとって一見ハンデのように思えますが、実は、「方向転換をしやすい」という長所になるのです。皆さんは「小さくてすばしっこい」という言葉をよく聞くと思います。これは、歩幅が短いために、方向転換がしやすく、「小刻みな動きができる」ということなのです。まっすぐ走ったり、身体が接触したりする時などは、大きな身体のほうが有利であることは間違いないですが、小刻みに前後左右に、素早く動くには、≪スケール効果≫によって小さい身体のほうが有利なのです。なでしこジャパンは、この≪スケール効果≫を生かして、俊敏な動きと素早いパスワークで、体格的にはるかにまさっている海外の選手達を翻弄したと言えるでしょう。
サッカーをはじめ、バスケットボールのドリブル、バレーボールのレシーブ、野球の内野手の守備、卓球やテニス、バドミントンも、前後左右の素早い動きを要求されるスポーツは、身体が小さいほうが逆に有利だと言えるのです。



筋力が強く、秘めたる運動能力が~肥満気味の子

さて、次は「太って、体重が重い子」の場合です。「うちの子は球技をやりたいのだけれど、身体が重くて……」という保護者のかたも多いと思います。
こういう、いわゆる肥満体の子は、身体の俊敏性がない場合が多いので、特に運動に対して苦手意識がある子が多いのですが、実はこういうタイプの子は、たいへんな可能性を秘めている場合が多いのです。というのは、肥満気味の子は、自分の重い身体を動かすために、筋力が優れている場合があるからです。わたしの知る限りでも、小学校時代に肥満体で運動が苦手だった子が、中学生や高校生になって、身体が締まり体重が減ると、突然運動能力が開花したという例がたくさんありました。従って、保護者の方々にお願いしたいのは、今、運動が苦手だからといって、あきらめないでいただきたいということです。もし、今やっているスポーツがあるなら、続けさせてください。これから何年か先にその努力が開花する可能性が大きいと思います。
肥満の子は、食事の時にカロリーを摂り過ぎているかもしれませんが、小学生のうちは特にダイエットなどは必要ありません。1日3食を規則正しく食べさせてください。ただし、いつも間食しているようなら、それはやめましょう。適したカロリーを摂取して、運動により消費していれば、肥満も徐々に解消されるはずです。規則正しい食生活をして、運動を続けていれば、将来見違えるようなスポーツ選手になる可能性は大きいのです。



励ましでモチベーションアップ!~スポーツ好きになるために

実は人間の運動神経に差はありません。友達と楽しむ程度であれば、スポーツは、誰でもできるようになります。もし、お子さんが、身体が小さいことや、体重が重いことにコンプレックスを持っているようであれば、ここでお話ししたことを元にお子さんを励ましてあげてください。もしお子さんが「自分はスポーツが苦手」と思っていたとしたら、「そんなことはない。運動神経に大きな差はないよ」と教えてあげてください。大事なのは好きになること、スポーツを楽しむことです。そのために、お子さんに自信を持たせてあげて、モチベーションを上げることが何より大切なのです。


プロフィール


深代千之

東京大学大学院 総合文化研究科 教授。(社)日本体育学会理事、日本バイオメカニクス学会理事長、日本陸上競技連盟元科学委員。文部科学省の冊子や保健体育教科書の作成にも関わる。*主な著書:「運動会で1番になる方法」「運脳神経のつくり方」など

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