淑徳大学 総合福祉学部 社会福祉学科 (2) 終身雇用の時代が終わりつつある今、人生を長い目で見れば、どんな企業に就職したかより、どんな知識や技術を身につけたかが大切[大学研究室訪問]

日本が転換期を迎えた今、大学や学部をどう選び、そこで何を学べば、お子さまの将来が明るく照らされるのでしょうか。連載6回目に訪れたのは、社会福祉士の育成と社会福祉制度問題の解決などに取り組む、淑徳大学の結城康博准教授の研究室。前回に引き続き、大学で学んだことが社会でどう生かされるか、そのためには高校時代までに何をすべきか、などについて伺いました。



淑徳大学 総合福祉学部 社会福祉学科 (2) 終身雇用の時代が終わりつつある今、人生を長い目で見れば、どんな企業に就職したかより、どんな知識や技術を身につけたかが大切[大学研究室訪問]


■高齢化社会を迎えた今、介護の現場に限らず多くの企業や団体で「福祉」という視点が求められている

社会福祉学科の卒業生の就職先として最も多いのは、社会福祉系の法人や団体、企業です。しかし、全員がそうした進路を選ぶわけではありません。金融・保険や製造業などに就職する学生も少なからずいます。高齢化社会を迎えた今、福祉という視点は、介護などの現場に限らず、多くの企業や団体で求められているからです。

たとえば、これからますます増えてくる高齢者向けの商品やサービスを開発することは、どんな分野でも必要になってくるでしょう。また、職場における社会的な弱者の受け入れも、多くの企業で進んでいます。社会福祉学科で学んだ人たちがそうした企業で働くことは、企業にとっても社会にも意味のあることだと思います。



■「福祉という産業」に足場をつくれば、転職をし、ステップアップできる可能性が高い

高齢者施設や障がい者施設などでの実習は、国家試験の受験資格を得るために必要というだけでなく、将来、福祉の仕事に就くための貴重な経験になる。

福祉関係の企業は給料が安い--そんな言葉をよく耳にします。私自身、それは間違いないと思いますし、福祉の現場の問題のひとつだとも思います。しかし、だからといって福祉の仕事を敬遠するべきだとは思いません。確かに、ひと昔前なら、できるだけ給料の高い企業に就職することが、一生を左右する大きな問題だったでしょう。しかし、終身雇用の時代が終わりつつある今、人生を長い目で見れば、どんな企業に就職したかではなく、どんな知識や技術を身に付けたかのほうが大切だと私は思います。


先ほども触れたように、これからの時代、福祉という視点は社会のさまざまな分野で求められるようになっていくでしょう。社会福祉士という資格や、福祉に関する知識や技術が生きる職場も増えてくると予測できます。つまり、一つの職場を辞めたとしても、「福祉という産業」に足場をつくれば、転職をし、ステップアップできる可能性が高いということです。これは福祉に限ったことではありません。保護者の皆さんがお子さんの進路についてアドバイスする時には、個々の企業ではなく、どんな産業が伸びていくかという視点も持つべきではないでしょうか。



■高校生までのうちに、家族や友達との関係を通じて、コミュニケーション能力の育成を

福祉の仕事にはコミュニケーション能力が求められます。しかし、最近はコミュニケーション能力が不足している学生が多いように感じられてなりません。みんなで話をしている時、これから一緒にどこかに遊びに行ったりする流れになっているのに、そんな空気をまったく察知できず、当然のように自分だけ帰ってしまう--そんな学生が増えているのです。近所付き合いや親戚付き合いが減っているといった、社会的な要因もあるのでしょうか。

学生の就職活動を見ていても、企業は学力よりもコミュニケーション能力を持った学生を求めていると感じます。あいさつや礼儀をきちんと身に付け、意思疎通を図りながら人間関係を築いていける力は、どんな仕事にも生かされるのです。コミュニケーション能力を重視する社会福祉学科での学びは、そういう点でもメリットがあると思います。社会福祉学科に進もうという場合はもちろん、それ以外の進路をめざす場合も、高校生までのうちに、家族や友達との関係を通じてコミュニケーション能力を育てておいていただきたいと思います。


OGに聞きました!

森田 有香さん(2011年卒業、株式会社やさしい手勤務)

大学時代に学んだ社会福祉の知識を、働き始めた今、思い出し、「こういうことだったのか」と納得

「人の役に立つ仕事がしたい」と考えていた私は、高校の現代社会の授業で「社会福祉士」という仕事の存在を知り、社会福祉学科を志望しました。学生時代のことで忘れられないのは、3年生の時に1か月間、特別養護老人ホームへ現場実習に行ったことです。技術も知識も不足していると痛感するばかりで、1か月間がとても長く、つらく感じることもありました。しかし、職員のかたは日々の業務が忙しいにもかかわらず丁寧に指導してくださり、得たこともたくさんありました。最初は私の名前も覚えて下さらなかった入所者のかたが、最終日に「ありがとう」と言ってくださったことは忘れません。私の大学生活の中でいちばん充実した時間だったと思います。

現在は、サービス付き高齢者向け住宅で、介護の仕事をしています。大学では介護の技術よりも知識を多く学んできました。難しい理論もたくさんあり、正直、こんなことを学んでも現場で役に立つのか、もっと技術を学んだほうがいいんじゃないか、と疑問に感じたこともあります。しかし、実際に現場で働いてみると、技術は働いているうちに少しずつ身に付いていきましたし、逆に大学時代に学んだ内容を、「あの時に学んだ理論は、こういうことだったのか」と納得することもあり、大学で学ぶことの意義を実感しています。

高校時代まで、私はボランティア活動によく参加していました。初めて参加したボランティアは中学1年生の時、敬老会のお手伝いでした。その時は、将来、高齢者関係の仕事をしたいとは思っていませんでしたが、今振り返れば、その経験が現在の仕事につながっており、小さなことでも、興味を持ったことに参加してみるのは大切だなと感じています。両親は私が決めたことについて、反対せず静かに見守ってくれ、行き詰まったりした時にはアドバイスをくれました。それは、大学進学についても就職についても同じです。何かを押し付けるのではなく、まずは自分で考えてやらせてくれたことで、行動力が身に付いたと思い、感謝しています。

プロフィール



淑徳大学卒業。社会福祉士。公務員として福祉の現場で働きながら法政大学大学院で学び、政治学研究科博士後期課程修了後、母校で研究職に転身。専門は社会保障政策など。政府の社会保障審議会介護保険部会委員も務める。著書に『日本の介護システム』(岩波書店)など。

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