千葉工業大学 工学部 未来ロボティクス学科(2) 心のリミッタを外して、未来を切り拓け[大学研究室訪問 学びの先にあるもの 第16回]

千葉工業大学 工学部 未来ロボティクス学科(1)
心のリミッタを外して、未来を切り拓け



日本が転換期を迎えた今、大学や学部をどう選び、そこで何を学べば、お子さまの将来が明るく照らされるのでしょうか。連載16回目は、千葉工業大学工学部未来ロボティクス学科の林原靖男先生の研究室です。前回は、力を入れて取り組まれている「RoboCup」について紹介しましたが、今回は、ロボット研究で大切なこと、学生への指導で心がけている点などについて伺いました。



ロボット工学は、さまざまな学問の集合体

千葉工業大学工学部未来ロボティクス学科は、学科名からロボットを作る学科と思われるかもしれませんが、自律的なロボットを開発するためには、センサ技術、認識技術、行動を選択する人工知能、的確に動作する制御技術など多岐な技術を研究・開発する必要があります。そこで得られた最新技術は、家電や自動車など我々の生活を豊かにするために生かされています。




移動ロボットに公道を自律走行させる技術チャレンジ「つくばチャレンジ」にも参加。

現在は、サッカーをしたり、自律して公道を歩行したりするヒューマノイドを開発していますが、もっと安定してヒューマノイドが動くことができるようになれば、家庭の中に入り、我々の生活を助けることができるようになると考えています。そのため、ロボット工学は、数学や物理だけでなく、社会学、心理学、経済学など、さまざまな学問を総動員してロボットを社会で役立たせていくことを考える学問だといえます。



社会経験を積んでほしい

工学者は、経験や勘で研究開発を行うのではなく、理論を積み重ねていきます。高校で学ぶ数学や物理が前提になってつくられていますから、もしロボット工学をめざすのであれば、土台となる学問をしっかりと身に付けてほしいですね。
また、実社会で活用できるロボットを開発するには、机上で学ぶだけでなく、社会的な経験をしていることが大事だと考えています。それは、難しいことではありません。本を読んだり、人と話したり、旅行に出かけたりといったことです。以前、ドライバーの使い方を知らない学生がいたのですが、これは社会的な経験が不足していると感じます。テストでよい点をとることをめざすだけではなく、さまざまなことに興味を持って取り組んでほしいと思います。一見、学びに関係のないように思えますが、そうした経験がロボット開発においても非常に大切になるのです。



百見は一行に如かず

1、2年次は座学が多いですが、研究室配属になる3年次からは、座学で得た知識を自分なりに咀嚼(そしゃく)し、実際のものづくりに生かしていくことが求められます。
「百聞は一見に如かず」ということわざをご存じだと思いますが、のちに続きが作られ「百見は一考に如かず、百見は一行に如かず」という言葉があります。つまり、100回見るよりも、1回やってみてわかることがあるということです。ロボット工学はまさに、実際に自分の手で行うことで、授業や教科書から学んだ知識の意味を初めて理解できるのです。

千葉工業大学では、しっかり理論や知識を学びつつ、どのようにそれらを生かして具体化していくか、実習を通して学生自身が学んでいく場をたくさん用意しています。また、ロボットを動かすために必要な機械と電気と情報、3分野についてバランスよく学ぶことができる環境だと自負しています。



心のリミッタを外せ


学生たちは試行錯誤しながらヒューマノイドを開発。

ロボットの研究・開発では、すべてにおいて前例のない手探りの開発が求められます。そんな時、私が学生たちに必ず言っていることがあります。それは、「心のリミッタを外せ」ということです。リミッタとは、運動や出力に制限をかける装置や機械のことを指す専門用語ですが、ロボットの研究・開発をしている過程で、学生は「昨年より強いロボットは開発できない」「もっと速く動くロボットは難しい」と自分自身で限界をつくってしまうことがあります。その限界を超えた時、新たな技術が生まれると信じています。
ただ、リミッタを切るにはリスクを伴います。「RoboCup」に参加してから7年がたち、そのうちに20台ものヒューマノイドを開発してきましたが、1台たりとも失敗なく作り上がったものはありません。無理かもしれないという極限を超えた時に、よい成果を上げることができるのです。ですから、完成した時の喜びは大きく、天にも昇るような気持ちになります。

アメリカでは自動運転の自動車が、既に公道で走り始めています。夢に描いていた未来が開かれつつあるのは、工学者たちの努力があるからです。日本でもそうした技術の開発に関われる人材を育成していきたいと考えています。


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<CQ出版/千葉工業大学 林原靖男/神奈川工科大学 兵頭和人(著)/3,888円=税込>

プロフィール


林原靖男

筑波大学第3学群卒業、同大学院にて博士号取得。桐蔭横浜大学にて助手、専任講師、助教授を経て、2006年度より千葉工業大学未来ロボティクス学科助教授、現在・教授。著書に『超入門!付属ARMマイコンで始めるロボット製作』(CQ出版)など多数。

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