淑徳大学 総合福祉学部 社会福祉学科 (1) 社会福祉士を育成しながら 現場の経験を生かして社会保障政策などを研究[大学研究室訪問]


日本が転換期を迎えた今、大学もまた大きく変わりつつあります。そんな時代に、大学や学部をどう選び、そこで何を学べば、お子さまの将来が明るく照らされるのでしょうか。答えを求めて、さまざまな大学の研究室を訪問します。今回は、社会福祉士の育成と社会福祉制度問題の解決などに取り組む、淑徳大学の結城康博准教授の研究室です。



淑徳大学 総合福祉学部 社会福祉学科 (1) 社会福祉士を育成しながら 現場の経験を生かして社会保障政策などを研究[大学研究室訪問]


■お年寄りや障がい者など、困難に遭っている人の悩みを、専門的な知識や技術で解決する社会福祉士

介護が必要なお年寄り、障がい者、虐待やいじめを受けている子ども、差別を受けている人、病気で悩んでいる人など、世の中にはさまざまな形で困難に直面している人たちがいます。そうした人たちの相談を受け、専門的な知識や技術を持って援助し、問題解決にあたる専門職が社会福祉士で、私が所属している社会福祉学科は、社会福祉士になるために必要な専門知識や技能を学ぶ学科です。

社会福祉士は国家資格です。なりたければ、国家試験に合格する必要があります。そして、国家試験を受けるには、大学や専門学校に通い、人の体や心、相談援助の方法、福祉に関する社会のしくみや法律など、さまざまなことを学び、福祉の現場などで相談援助の実習を決められた期間、経験していなければなりません。社会福祉学科では、4年間でこうした知識を身に付け、経験を重ね、卒業すれば国家試験の受験資格を得ることができます。また、介護の現場で働くことをめざす学生は、身体的な介護を行うためのホームヘルパーの資格も、在学中に取得しています。



■相談者の信頼や共感を得て、心を開いてもらうため、高いコミュニケーション能力が必要

社会福祉士は、困っている人から悩みを引き出し、解決するのが仕事です。話を聞きながら相手の心を探り、信頼や共感を得て、心を開いてもらう、高いコミュニケーション能力が求められます。そのために必要な相談援助の方法を身に付けることが、国家資格を得るための必須条件にもなっています。私たちの大学でも、さまざまなシチュエーションで、それぞれの人の立場に人になりきって話をするロールプレイングの実習などに力を入れています。

コミュニケーション能力を育てるために効果的なのは、専門的な授業だけではありません。家族や友達と話をしたり、部活やサークルで仲間たちと一緒に過ごし、組織を運営したり、専門以外に一般教養を身に付けたりすることも、コミュニケーション能力の幅を広げてくれます。社会福祉士になるには、大学ではなく専門学校に行くという道もありますが、専門学校で学ぶのは、専門的な知識や技能に限られます。大学では、1~2年生のうちには主に一般教養を学び、部活やサークル活動にも打ち込めますから、そうした経験は大きな財産になると思います。



■社会保障政策に現場の声を反映することは、現場を経験した研究者である自分の大きな役割

私の専門は、介護と医療を中心とした社会保障政策です。社会福祉士の資格取得にもそうした知識は必要ですから、学生たちに講義をする一方で、自分の研究もしています。実は私自身も、淑徳大学の社会福祉学科の出身です。しかし、卒業後すぐに研究者になったわけではなく、公務員として地域包括支援センターなどで約15年間、福祉の仕事をしていました。そして、働くうちに政治や経済が福祉の現場に大きな影響を与えることを実感し、仕事をしながら大学院に通って、政治や経済の視点から福祉を勉強していました。そんな時、母校の教員にならないかという誘いを受けたのです。

少子化のあおりを受けて、経営難に陥る大学も少なくない今、公務員を辞めるなんてもったいないという気持ちも、正直にいってありました。しかし、現場で15年間も仕事をしてきて、財源の確保などの問題点を痛感し、自分なりの解決策を考えてもいました。それを理論的に体系化したいという思いに背中を押されて、転身を決意したのです。公務員の時には自分の地域のことしか見えませんでしたが、研究者になると、全国各地の現場を回るので、地域による違いなども見えてきました。社会保障政策に現場の声を反映することは、現場を経験した研究者である自分の大きな役割です。そのために、政府の委員会に参加して積極的に発言し、マスコミで問題を訴えていきたいし、政治や経済の視点を持った社会福祉士や、現場の視点を持った研究者を育てたいとも思っています。



結城准教授は、一種類の介護システムだけで対応するのはなく、図のように利用者の経済的能力に応じて、介護システムの全体像を構築するべきだと主張している。
この図は、結城准教授の著書『日本の介護システム』(岩波書店)に掲載されているもの。


学生に聞きました!

末吉 夏菜さん(2010年入学、千葉県出身)

高齢者施設の実習で感じた、コミュニケーション能力の大切さ

自宅で祖父の介護をした経験などから福祉について興味を持ち、社会福祉学科に進みました。施設に実習に行って感じたのは、コミュニケーション能力の大切さです。ある時、ご家族の話を楽しそうにされているお年寄りがいました。私はてっきり、ご家族のかたもご健在なのだと思っていたのですが、あとから、実はそのご家族を亡くされていると知り、驚きました。そのかたの表情からは、まったくそんなことを読み取れなかったからです。「こうに違いない」と思い込むのではなく、相手のかたの立場になって話を聞き、気持ちを読み取らなければいけないなと感じました。

結城先生の授業からは、「お金」の大切さを教えられました。私は、介護を行うには「心」さえあればいいと思っていました。しかし、先生から、心のこもったいいサービスをしていても、経営がうまくいかなくて閉じてしまう施設がたくさんあると知らされました。いくら心が豊かでも、お金がなければどうしようもできない。そんな状況にならないためにも、経営面の勉強も必要だと思っています。

私は高校時代、チアリーディング部に入っていました。活動は本格的で、上下関係も厳しかったのですが、忍耐力がついたし、野球部やサッカー部の応援に行くなど、さまざまな経験ができました。おかげで大学に入ってからも、チアリーディングはもちろん野球やサッカーの話もできるし、吹奏楽部の人とは応援の話で盛り上がれるし、コミュニケーションのきっかけになっています。両親は、高校や部活、大学を選ぶ時も、私の気持ちを尊重してくれ、大学見学にも一緒に来てくれました。応援していてくれると感じられてうれしかったし、だからこそ、決めたことはきちんとやり抜かなきゃいけないなと思っています。

プロフィール



淑徳大学卒業。社会福祉士。公務員として福祉の現場で働きながら法政大学大学院で学び、政治学研究科博士後期課程修了後、母校で研究職に転身。専門は社会保障政策など。政府の社会保障審議会介護保険部会委員も務める。著書に『日本の介護システム』(岩波書店)など。

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