第一志望校の偏差値について考える[中学受験]
偏差値は、生徒の学力を示す尺度だが、同時に学校の難易度を示す尺度にもなっている。塾や模試の資料を見ると、学校の偏差値には、80%偏差値、50%偏差値、20%偏差値がある。80%偏差値は、その学校の合格可能性が80%の偏差値の受験生が10人受験した場合、8人は合格することを示している。50%偏差値、20%偏差値も同様で、この偏差値は、該当の模試を受験した昨年の受験生の成績や、その受験生の入試結果から算出した「結果偏差値」をもとに、それまでの模試の受験者の状況から算出しているものだ。
合格可能性は、80%が上限となっている。これは、どのような試験でも同様だが、どんなに模試の成績がよくとも、本番の試験でも得点できて絶対に合格する保証はない。とくに中学入試では、受験生が小学生ということを考えると、精神的に安定して受験できるかという疑問もある。つまり、模試で80%偏差値の成績がとれたとしても不合格になることもあり、50%偏差値や20%偏差値の成績でも合格することもあるのだ。
いざ受験する学校を決める時には、我が子の偏差値をもとに、学校を探すことになる。しかし、我が子の偏差値が目標としてきた志望校の80%偏差値に届かない時に、どうしたらよいか、という相談を受けることが多い。志望校の偏差値というと80%偏差値のイメージが強いようだ。こうした相談には、「その学校がどうしても入りたい学校で、お子さまの偏差値が志望校の50%偏差値程度であれば、積極的にチャレンジされてはいかがですか」とアドバイスしている。というのも、身近に50%偏差値(時には20%偏差値)の学校を受験して合格を勝ち取った受験生がたくさんいるからである。
最近、「80%結果偏差値」と「進学者偏差値」の違いを調べる機会があった。下に掲げた表がその結果である。出口となる2012年の大学合格実績に対し、入口となる2006年の中学入試偏差値の差から、学力を伸ばしてくれる学校を分析する時には、進学した生徒の偏差値である「進学者偏差値」を使うべきで、「80%結果偏差値」を使用するのは不適切ではないか、という疑問があった。「進学者偏差値」を発表していない学校もあったが、学校ランクによって「80%結果偏差値」と「進学者偏差値」の違いが大きくなると「80%結果偏差値」を入口のデータとしては使えない心配もあった。「80%結果偏差値」と「進学者偏差値」の差が一定であったので「80%結果偏差値」を使用しても問題はないことがわかった。
学校や模試によっても異なるが、その時点の調査では学力の高い生徒の一部が他校に流れるので、合格者の平均偏差値は進学者よりも2~3ポイント高いだけだった。
進学者の平均偏差値は、受験者とほぼ同じで80%偏差値よりも2~3ポイント低かった。進学した生徒には、80%偏差値から50%偏差値の成績の生徒が多い。80%偏差値以上の成績の生徒は少なく、50%偏差値程度の生徒が最も多い学校もたくさんある。試験は水物なので、いくら偏差値の高い生徒でも、本番で失敗することがあり、反対に、模試では偏差値が低くても、たまたま相性のよい問題に当たって、合格を勝ち取る場合もある。
入試日程がぶつかれば、どの学校を第一志望にすべきか迷うと思う。子どもの偏差値と第一志望校の偏差値にもよるが、目標としてがんばって受験勉強をしてきた志望校であれば、50%偏差値でチャレンジさせるご家庭も多いのが、実態のようだ。
※合計は、付属校、進学校、半付属校の平均値
※小数点第2位で四捨五入した数値を使用しているため、表内の合計に誤差が生じている場合もある。