範囲の決まっていない模試になると、まったくと言ってよいほど漢字が書けません[中学受験]
平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。
質問者
小4男子のお母さま
質問
漢字が苦手です。範囲が決まっているテストではそれなりに書けて点数も取れますが、範囲の決まっていない模試になると、まったくと言ってよいほど漢字が書けません。読みも同様ですが、読解力はあるので、特別な読み方以外は読めているようです。
小泉先生のアドバイス
「理解して覚える」「反復する」「五感を使う」ことで「短期記憶」を「長期記憶」にする。
「範囲が決まっているテスト」では書けるが、「範囲の決まっていない模試」になると書けないというのは、漢字の勉強方法に問題があると思います。たとえば、テストの直前に試験範囲の漢字を必死で覚えるような勉強方法でも、確かにある程度の点数をあげることはできます。しかし、そうして得られた記憶はいわゆる「短期記憶」であり、すぐきれいさっぱり忘れてしまいます。試験勉強では、一度覚えたらなかなか忘れないという「長期記憶」にまで記憶の質を高める必要があるのです。
それでは「短期記憶」を「長期記憶」にするにはどうしたらよいでしょうか。よく言われるのが、「理解して覚える」「反復する」「五感を使う」といった勉強方法です。「理解して覚える」というのは、丸暗記ではなく、意味付けをして覚えるということです。たとえば「静(セイ・しずか)」という漢字を覚える時は、「『争いが青くなる(つまり澄んだ状態になる)』から『しずか』なんだ」という具合に漢字の成り立ちから覚えるのも一つの方法です。
また、「反復練習」も効果的でしょう。人はすぐに忘れます。次のことを覚えるためにも、忘れることは必要なのでしょう。しかし、重要なことを忘れないためにはどうするか? それは、完全に忘れる前に重ねて覚えれば良いのです。よくあるやり方は、漢字の練習帳を1冊決めて、寝る前に一定の範囲を10分ほどで暗記し、翌朝確認するという方法です。忘れてしまった漢字は、その場で覚え直します。その日の夜、寝る前にまた新しい漢字を暗記して……と、これを毎日、歯を磨くのと同じように繰り返します。そして、ある程度暗記した量がたまったら総復習しましょう。80%程度覚えていたら、次に進みます。なお、ここで100%、完璧に覚えることにこだわると次に進めませんから注意してください。「完璧にはこだわらない」というのは、意外に見落とされがちな反復練習におけるポイントの一つだと思います。
最後に「五感を使う」ですが、これは覚える時に、「声に出して読み、それを耳で聞く」「手で書いて、それを目で見る」といったことです。これは漢字の学習ばかりではなく、英単語や社会・理科の暗記事項を覚える時にもぜひ実施したい方法です。≪本を寝転びながら読む≫だけでは、覚えてもすぐに忘れてしまうのです。
さて、このようにして漢字を勉強すれば、徐々に模擬試験でも漢字の書き取りや読み取りで点数がとれるようになると思います。漢字は、積み重ねの努力がダイレクトに報われる学習分野です。やればできるという自信をつけるためにも、すぐにでも漢字の学習を始められると良いでしょう。なお、覚えなくてはならないのは「漢字」や「熟語」だけではありません。入試では、「ことわざ」や「故事成語」なども出ます。また、≪首をかしげる≫などの「慣用句」も覚える必要があります。最近感じるのは、漢字や熟語はできるのに、慣用句を知らないために本文の内容が理解できない子どもが増えていることです。おそらく、本文の内容が難しくなっているせいもあるのでしょう。覚えることはたくさんあります。効果的な暗記法で、効率的な勉強をさせたいものです。