「僕はこの登場人物ではないからわからない」と言い、想像力というものがまったくありません[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小4男子(性格:大ざっぱ)のお母さま


質問

普段から図鑑などを好んで読んでいるせいか、説明文は得意ですが、物語文や詩の読解が不得意です。特に詩の読解は壊滅的です。登場人物の気持ちを選択しなさい、というタイプの問題だと、「僕はこの登場人物ではないからわからない」と言い、想像力というものがまったくありません。


小泉先生のアドバイス

国語の問題の≪約束≫をお子さまに理解させる。

想像力があるかないかというのは、そのものに対して興味があるかないかに強く関係していると思います。興味があることに関しては、もっと知りたいと思うでしょうし、そこに想像力が加わってくるものです。たとえば、いつも仲良しの友達にあいさつしても、返事が返ってこなかった場合、当然気になります。何か気にさわることを言ったのかとか、身体の具合が悪いのではないかとか、それこそいろいろ想像してしまいます。でも、どうでもよい友達なら、そうでもないでしょう。お子さまにとって、図鑑などの本は≪仲の良い友達≫なのですが、物語や詩は≪どうでもよい友達≫なのだと思います。ですから、「想像力というものがまったくありません」というのではなくて、「物語や詩に興味がありません」ということなのでしょう。

それでは、物語や詩に興味を持たせるにはどうしたら良いのでしょうか。これは好き嫌いの問題ですから、なかなか難しいかもしれません。無理強いしてもよけい拒否してしまう可能性がありますし、何かのきっかけで興味を持つこともあるでしょう。子どもが本に興味を持つようになるためには、そのようになる環境を作ることが大切だと思います。たとえば、今回の場合は、お子さまの身近に常に物語を置いておく方法も良いと思います。または、図鑑や説明的文章が好きなら評論的随筆も違和感なく読めるでしょうから、そこから物語的随筆(たとえば、向田邦子さんの随筆のようなもの)を経てより物語的な文章にたどり着くという方法もあると思います。なかなか大変な誘導ですが、その子どもにとっておもしろい本に出会えれば、案外簡単に行く場合もあります。

あるいは、文学に無理に興味を持たせるのではなく、テストの点数を上げる方法のほうが良いかもしれません。その方法とは、入試における物語文では登場人物の気持ちを考えさせる場合、必ずその気持ちの根拠となるものが本文にある、という国語の問題の≪約束≫をお子さまに理解させることです。入試では答えを一つに絞らなくてはならないので、気持ちを間接的に表す心情表現が明確に出ている箇所を問いに使う場合が多いのです。図鑑が好きとか、説明文が好きという子どもは、感覚的というよりも論理的にものごとを考えるでしょうから、物語の内容よりも、このような仕組みがあることのほうに興味を持つ可能性が高いと思います。クイズのような感覚で問題が解けることがわかると、その仕組みに興味を持つということです。

たとえば
……
「うらやましかったんだよ」
「はぁ?」
思わずアイスクリームをすくう手が止まった。
……

と本文にあり、傍線部の時の心情を問われたとしたら、(もちろん、前後の話の流れにもよりますが)「はぁ?」という言葉から「驚き」が想像できるという仕組みです。

間接的心情表現とそれが表す気持ちの関係については、良く解説された問題集の解答・解説をご覧になれば納得されると思います。あるいは、拙著『まとめ これだけ!国語』(森上教育研究所スキル研究会)でも詳しく説明してありますので、機会があれば本屋さんでご覧ください(ただし、5、6年生向きなので、4年生には少し難しいかもしれません)。このやり方で、物語文が苦手な何人もの生徒さんの偏差値を伸ばしてきました。お子さまにも有効である可能性があると思いますので、試してみてはいかがでしょうか。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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