大学・学部の本格的な再編統合が始まる?

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永岡桂子文部科学相(兼教育未来創造担当相)は2022年9月2日、今後10年間の大学改革などに関する工程表をまとめ、閣議報告しました。5月にまとめた教育未来創造会議(議長・岸田文雄首相)の第1次提言「我が国の未来をけん引する大学等と社会の在り方について」を実現するためのものです。これによって今後、大学や学部の本格的な再編統合が進むものとみられます。

この記事のポイント

「文理横断」推進や女性活躍も

第1次提言では、(1)自然科学分野を専攻する学生の割合を5割程度へ(2)あらゆる分野で女性が活躍できる社会へ(3)誰もが家庭の経済事情に関わらず学ぶことができる社会へ(4)生涯にわたって学び続ける社会へ……などを掲げました。
工程表では、2022年度、2023年度、2024~2026年度、2027~2031年度という4段階で、10年間で取り組むスケジュールを細かく示しました。
そうした改革の柱として「進学者のニーズ等も踏まえた成長分野への大学等再編促進」「学部・大学院を通じた文理横断教育の推進」「理工系や農学系の分野をはじめとした女性活躍推進」を掲げていることが注目されます。

実質的な「全入時代」で続く定員割れ

2022年度の大学の数は807大学と、前年度より4大学増えています。学部の学生数も約263万2千人と、過去最高を更新しました。一方で、主な入学年齢である18歳人口は減少の一途をたどっています。
現役受験に限っても、志願者数に占める進学者数の割合を示す「収容力」は9割を超えています。1割弱は第1志望大学を目指して浪人を選んでいるものの、えり好みさえしなければ、どこかには入れる実質的な「大学全入時代」に入っているのです。
私立大学では、3割以上で定員を満たせない状況が続いています。進学率も今後、伸び悩むと予想されており、もともと大学や学部の再編統合は必至な情勢にあります。

デジタルやグリーンの成長分野に転換へ

現在、デジタル分野に貢献する先端IT(情報技術)人材や、成長が見込めるグリーン分野を担う人材の不足が指摘されています。そうした分野への転換を促すためにも今回、再編統合を打ち出したというわけです。
文科省は既に、半数の定員割れを起こしている大学には、学部再編を認めない方針を固めています。これによって、大学自体の再編統合も進むものとみられます。

まとめ & 実践 TIPS

人気のある大学でも近年、時代の変化に応じて既存の学部・学科を再編する動きが加速しています。今ある大学や学部・学科が、ずっと続くとは限りません。
逆に今後、あまり名前が知られていない大学や学部が、人気が急浮上する可能性もあります。大学選びでは、いつまでも「昔の名前」にこだわっていられなくなりそうです。

(筆者:渡辺敦司)

教育未来創造会議 提言(第1次提言と工程表)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kyouikumirai/teigen.html

大学、短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準の一部改正案に関するパブリックコメント(意見公募手続)の実施について
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185001257&Mode=0

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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