2025/01/20
実践現場レポート③ 集住地域での支援 岐阜県可児市ばら教室KANI(日本語初期指導教室)
外国にルーツをもつ子どもの指導・支援は、地域によって背景が異なることもあり、他の学校や団体、自治体の取り組みを知る機会が少ないという実態があります。多様な実態や取り組みをお知らせする意義は大きいと考え、実践の現場に伺ったり、指導者・支援者の方々にお話をお聞きしたりした機会をもとに、実践現場レポートとしてご紹介します。
今回は、可児市立蘇南中学校・国際教室のレポートに続き、可児市のばら教室KANIの訪問レポートです。当日は、ばら教室室長の若原俊和先生、ばら教室外国籍児童生徒コーディネーター大口裕子先生、可児市教育委員会の多文化共生指導主事 佐合佑介先生にお話を伺いました。
可児市での日本語初期指導
外国籍の住民の集住地域である可児市※1では、日本の学校に初めて通うことになる日本語指導が必要な児童生徒を対象とした初期指導教室、ばら教室KANI(以下、ばら教室)を設けています。外国籍の子どもの不就学の問題※2もあることから、可児市では、対象となる児童生徒のいる保護者が、市役所の市民課に手続き等に来た際に、学校教育課と連携し、できるだけその場で学校に関する手続きや面談などにつなげているとのことでした。
※1:可児市は、人口約9万9,800人(2024年7月1日現在、可児市統計)、製造業が盛んであることからフィリピンやブラジルなどの外国籍市民が多く在住。市の調査によると永住を希望する外国籍市民も増えている。
※2:文部科学省(2024)「令和5年度外国人の子供の就学状況等調査結果の概要」
※2:文部科学省(2024)「令和5年度外国人の子供の就学状況等調査結果の概要」
ばら教室には、第1ばら教室と第2ばら教室があり、子どもたちは、在籍する小学校・中学校に通う前に、最初の約2か月を第1ばら教室で、その後の約2か月を第2ばら教室で学びます。訪問時(2024年11月)、ばら教室には、21名(第1ばら教室8名、第2ばら教室13名)の児童生徒が通っており、11名の職員(室長1名、外国籍児童生徒コーディネーター2名、学習指導員8名)が指導・支援あたっているとのことでした。
ばら教室での日本語の授業の様子
第1ばら教室でも、第2ばら教室でも、午前中に日本語を2時間、算数(数学)を1時間学習し、午後は総合の時間として、書写や図工、体育や母語を使っての活動などを行っています。日本語の指導は、ばら教室での20年の実践をもとに、他の自治体実践なども参照し、習熟度を6段階に設定したカリキュラムと教材をもとに行われています。第1段階から第3段階を第1ばら教室で、第4段階以降を第2ばら教室で学習しますが、上の段階に進んでもカタカナや数字の読み方など前の段階の学習内容を繰り返し学習しているとのことでした。
訪問した日、第1ばら教室では、子どもたちが、4つある習熟度別のクラスに分かれて、日本語を学習していました。ばら教室に通って3日目と10日目という3名の児童のクラスでは、子どもたちの母語も交えながら、挨拶や「これは・・・です」という文型などを学習していました。また、ばら教室に通って3週間目という児童のクラスでは、絵と言葉を組み合わせるカードを使って、先生とマンツーマンで顔・体の部位の名称を学習していました。最も習熟度が高い中学生のクラスでは、場所の都市名、施設名(動物園など)を確認した後、「○月×日、[人]は[場所]に行きました」という文章を作る学習が行われていました。
訪問した日、第1ばら教室では、子どもたちが、4つある習熟度別のクラスに分かれて、日本語を学習していました。ばら教室に通って3日目と10日目という3名の児童のクラスでは、子どもたちの母語も交えながら、挨拶や「これは・・・です」という文型などを学習していました。また、ばら教室に通って3週間目という児童のクラスでは、絵と言葉を組み合わせるカードを使って、先生とマンツーマンで顔・体の部位の名称を学習していました。最も習熟度が高い中学生のクラスでは、場所の都市名、施設名(動物園など)を確認した後、「○月×日、[人]は[場所]に行きました」という文章を作る学習が行われていました。
第2ばら教室でも13名が習熟度別に5クラスにわかれて学習しており、どのクラスも先生と子どもたちがやり取りをしながら、学習を進めていました。もうすぐばら教室を終えて在籍校に通う中学生のクラスでは、教科の名称(国語、理科など)を学んだり、形容詞を使った文を作ったりしていました。

(第1ばら教室での授業の様子)
在籍校に通うまでのステップの設定
ばら教室では、日本語だけでなく、日本の生活習慣や学校での日常生活に関することも学んでいます。また、教室の中で学ぶだけなく、児童生徒がばら教室から在籍校に通うまで、徐々に慣れてステップアップできるように仕組みづくりがなされています(図1)。
例えば、第1ばら教室は市の施設で、ばら教室に通う子どもと学習指導員のみの空間ですが、第2ばら教室は、市内の広陵中学校の校舎内に設置されており、第2ばら教室に通いながら、学校の雰囲気や他の生徒の様子などに慣れていきます。また、第2ばら教室に通う間に、3~6回、在籍校への登校日を設定し、実際に在籍校で過ごす体験を重ねていきます。とても緊張する体験ですが、回数を重ねることで、教室の場所がわかったりクラスメートに顔見知りができたりと学校に慣れるだけでなく、在籍校に通うようになるまでに、ばら教室でもっと力をつけなければならないという気づきを得る児童生徒も多いとのことでした。約4か月の学習を終えた児童生徒は、「修了式」を経て、それぞれの在籍校で学ぶこととなります。

今回の訪問では、初期日本語指導についてだけなく、在籍校に通うまでの支援についてもお伺いすることできました。お忙しい中、教室訪問を受け入れてくださりありがとうございました。