2021年度全国学力調査を分析 コロナ禍でも学力が下がらなかった理由とは?

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文部科学省が、2021年度全国学力・学習状況調査(以下、全国学力調査)で実施した「経年変化分析調査」の結果を公表しました。前年度の2020年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、全国一斉の臨時休校が行われるなど、子どもたちの学習にとって大変な年でした。

しかし分析の結果、2016年度の前回調査結果と比べ、国語では特に学力の低下は見られず、算数・数学では、むしろ若干上がった可能性すらあるというのです。結果をどう受け止めるべきでしょうか。

この記事のポイント

変化がわかる3回目の調査

全国学力調査は、毎年違う問題が出題されるため、前年度の正答率と比較しても、統計的な意味はありません。
それに対して経年変化分析調査は、学力の動向を把握するため、同じ問題を出して行っています。2013年度の「きめ細かい調査」以来、今回が3回目です。

前回と比べると、国語では小・中学校とも「児童生徒の学力の低下や向上といった変化は認められなかった」としています。
一方、算数・数学では「(全体的にみて学力スコアが高いほうへ)若干移動している」と指摘し、「若干学力が向上しているとも解釈しうる」としながらも、次回2024年度とも比較して分析する必要があると、慎重な姿勢を示しています。

いずれにせよ、コロナ禍による休校が続いても、全体としては学力が下がらなかったとは言えそうです。

学校側の努力が反映?

「現場の先生が、元気をもらえた」……。調査結果が報告された2022年3月の「全国的な学力調査に関する専門家会議」では、教育委員会や学校現場の委員から、歓迎の声が相次ぎました。

2020年2月末、突然の全国一斉休校が要請されて以来、学校側は対応に追われました。休校中はプリント教材の他、まだICT(情報通信技術)端末が十分でないなかでオンライン授業なども試みられ、学校再開後は、何とか授業の遅れを取り戻そうとしました。そうした努力が反映された結果だというわけです。

家庭格差や教科バランスに心配

もっとも、安心はできません。全体としては変動がなくても、家庭によっては、学力に格差が開いた可能性もあります。

また、コロナ禍の影響を分析した福岡教育大学の川口俊明准教授は、学校再開後に音楽科のリコーダーや家庭科の調理実習が制限され、逆に国語や算数・数学などが進んだという声があったことを、同会議に報告しました。

まとめ & 実践 TIPS

2021年度結果については、今後も詳しい分析が行われる予定です。全体的な結果が良好だったからといって、安心はできません。
また、全国学力調査で測れるのは、ペーパーテストでわかる一部の学力だけです。他教科も含め、全体のバランスが取れているかを検証することも求められます。

いずれにしても、コロナ禍のような想定外のことがあっても、子どもの学力と育ちを十分に保障できるような学校づくりが求められます。そのためにも全国学力調査の結果を、有効に活用することが期待されます。

全国的な学力調査に関する専門家会議(第5回)配付資料
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/2021/mext_00044.html

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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