2022年4月から必履修の「歴史総合」、どんな科目?

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2022年4月から「歴史総合」「地理総合」「公共」が高校の必履修科目として新たに導入されます。なかでも「歴史総合」は、歴史に関する興味・関心の高まりもあり、特集記事や関連書籍もみられるようになりました。
そこで今回は新科目「歴史総合」についてご紹介していきます。

この記事のポイント

近代以降の世界と日本の歴史を扱う「歴史総合」

これまでは「世界史(世界史Aまたは世界史B)」と「現代社会」が必履修科目でしたが、歴史は「歴史総合」、地理は「地理総合」、公民は「公共」が必履修となり、中学社会で学習した3分野をバランスよく履修・学習するようになりました。

これまでの高校の歴史科目では、日本の歴史は「日本史A・日本史B」、世界の歴史は「世界史A・世界史B」の科目に分けられ、A科目は近現代(おもに18世紀以降)を、B科目は全時代をそれぞれ学習していました。

今回の改訂ではA科目で扱っていた近現代の歴史は「歴史総合」で日本史・世界史を合わせて学習することになり、全時代を扱うB科目はそれぞれ「日本史探究」「世界史探究」で学習することになりました。

『「歴史総合」はこれまでの「日本史A」と「世界史A」を足し合わせた科目』という見方もありますが、学習指導要領では「近代化(産業・貿易の発展過程など)」「大衆化(大衆の政治参加、女性の地位向上など)」「グローバル化(人や情報の移動など)」のテーマをもって学習する科目と示されています。

つまり歴史上の出来事の経緯を追うだけの学習でなく、たとえば「18世紀ごろに各国ではどのような商品を生産し、流通させていたのか?」というようなテーマをたてて、世界やそのなかにおける日本の歴史を学習していきます。

  • ・「歴史総合」は近現代(おもに18世紀)以降の世界と日本の歴史を扱う
  • ・「近代化」「大衆化」「グローバル化」のテーマで学習

資料の扱いが増え、資料を吟味する姿勢が求められる

保護者世代に「源頼朝や足利尊氏の顔を思い浮かべてください」といえば、当時の教科書にあった肖像画をイメージされる方が多いかと思います。しかし現在の中学校の歴史教科書では、源頼朝も足利尊氏も肖像画ではなく、像の写真が載っているのが一般的です。
このように歴史の研究が進んだことで、従来の資料の扱いや評価が変わることがあります。

「歴史総合」では、「資料に基づいて歴史が叙述されていること」を理解し、資料そのものを吟味する姿勢を養うことが学習指導要領で示されています。
これまでの歴史科目での資料問題といえば、資料が示す内容が正しいという暗黙の前提のもと、資料から読み取れる内容について問われていました。しかし「歴史総合」では、資料が作成された経緯(直接見聞したものか、伝聞か)や資料の性格(公的な報告か、私的な覚え書きか)なども含めた、資料の吟味も求められています。

大学入学共通テスト(以下、共通テスト)でも資料を扱う問題が増えていますが、たとえば中国の朝廷による資料の改ざん(21年度世界史B・第3問)やインド統治をしたイギリス人行政官の文書(21年度世界史B・第4問)など、資料が作成された経緯や資料の性格に言及した出題もみられることから、今後の入試においても資料の読み取りに加えて、資料そのものの吟味を求める出題が増えると考えられます。

  • ・「歴史総合」では資料が作成された経緯や資料の性格なども含めた資料の吟味も求められる
  • ・共通テストでも資料を扱う問題が増え、なかには資料の吟味が必要な出題も

「歴史総合」は2025年度入試でどう出題される?

では2022年4月の高校1年生が受験する2025年度の共通テストの「歴史総合」で、どのような出題がされるのでしょうか。

実は共通テストを実施する大学入試センターのホームページで、新科目の「歴史総合」「地理総合」「公共」「情報」のサンプル問題がすでに公表されています。
サンプル問題は教科書の検定中に作成されたため、実際の教科書の内容とは異なる可能性があることに注意する必要がありますが、学習指導要領が示す「近代化・大衆化・グローバル化などをテーマに、資料を吟味する姿勢」を問うような出題がみられます。

たとえばサンプル問題の第1問では、歴史上の「自由」を示す複数の資料について、それぞれが「人種差別の撤廃による自由」「性差別の克服による自由」「植民地支配からの独立による自由」のいずれにあてはまるかを考察させる問題でした。

このようなサンプル問題への反応や、今後実施される共通テストでの出題結果なども踏まえて今後出題の検討が進められると思いますが、すでに共通テストでみられるような資料を多く扱う出題傾向は、「歴史総合」でも踏襲されると考えられます。

  • ・大学入試センターが作成したサンプル問題が参考に
  • ・共通テスト同様、資料を多く扱う出題が予想される

小学生からできる「歴史総合」への心がけ

小学校では6年生から歴史を学習しますが、将来の「歴史総合」の学習を見据えて、どのようなことを心がければよいのでしょうか。

社会の歴史分野といえば、歴史用語や年号を一問一答形式で答える問題が出題され、とにかく【教科書の太字】を丸暗記する学習スタイルがよくみられました。しかし「歴史総合」のねらいやサンプル問題をみると、【教科書の太字の周辺】にある意義・影響などの文脈の理解がより問われるようになると考えられます。

これは「刀狩」という【教科書の太字】の暗記よりも、【教科書の太字の周辺】にある「武士と農民の区別を行った」という意義や背景などの文脈の理解が問われるということです。そのため、教科書で学習する際も【教科書の太字】だけを丸暗記するのではなく、【教科書の太字の周辺】をていねいに確認する学習姿勢が求められます。

また「歴史総合」では資料の扱いが増え、資料を吟味する姿勢も求められるようになりました。小学生の間では、戦国武将や幕末維新の人物などが人気となるようですが、その人物のエピソードがいつごろ、だれによって残された資料をもとに書かれているのか?なども調べてみると、将来「歴史総合」を学ぶ上で大事な体験になると思います。

またこのように資料そのものに注目し、吟味を加えながら事実を確かめて思考を積み重ねていくプロセスは、「歴史総合」だけでなく他教科の学習にも役立つと思われます。

  • ・【教科書の太字の周辺】にある意義や背景などの文脈を理解する
  • ・人気の歴史人物のエピソードのもとになった資料を調べてみる

まとめ & 実践 TIPS

新たに必履修科目となる「歴史総合」は、近現代の日本と世界の歴史を「近代化」「グローバル化」などのテーマをもとに、資料を扱い、資料を吟味しながら学習する科目となります。そして「歴史総合」の学習で行われる資料そのものに吟味を加えながら思考を積み重ねていくプロセスは、他教科の学習にも役立つと考えられます。

株式会社プランディット 社会課 十河(そごう)
編集プロダクションの株式会社プランディットで、進研ゼミを中心に、小学校から高校向けの社会(地歴公民)の教材編集を担当。

プロフィール



1988年創業のベネッセ・グループの編集プロダクションで,教材編集と著作権権利処理の代行を行う。特に教材編集では,幼児向け教材から大学入試教材までの幅広い年齢を対象とした教材・アセスメントの企画・編集を行う。

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