算数オリンピックの金メダリストは、どんな風に育ったの?算数が得意になるヒントが欲しい

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算数オリンピックを知っていますか? 全国の算数自慢の小学生が集まり、算数のチカラを競い合うコンテストです。地区ごとの予選、ファイナル(決勝)大会を勝ち抜き、メダリストとなった選手は、その後も数学オリンピックや多方面で活躍していることで知られています。
そんなメダリストは、どうやって算数が得意になったのでしょうか。また、親はどのようなサポートをしてきたのか、保護者として気になるところを、2019年大会の金メダリストの服部圭太さんとお母さまに伺いました。

この記事のポイント

算数パズルやゲーム、日常の中で算数あそびを一緒に楽しんだ

「算数ができる子にしようとは、特に思っていなかったんですよ」と、驚きの内容を明るく話される、お母さまの寛子さん。小さいころは、ご両親がされていたスキーをはじめ、テニス、サッカー、ピアノ、算数、英語と幅広く体験させてきたそう。その中で本人が興味を持ったものを育てよう、と思っていたところ、圭太さんが算数に強く興味をひかれていることに気が付きました。

そのため、おうちに『algo(アルゴ)』(数字を推理して当てるゲーム)や立体五目並べといったさまざまな算数パズルやゲームを揃え、好きなように遊べる環境をつくったところ、小学2年生のときには、『ハノイの塔』(積み重なった円盤をルールに従って移動させるパズル)の最低移動回数2n-1回についてのレポートを書いたという、驚きのエピソードも。

また、できるだけ日常生活の中で「算数あそび」を楽しんだと言います。
「買い物のときにはお釣りの計算、車に乗っているときには『今時速何kmだから、あと何時間で着くかな?』と速さクイズ、電車に乗るときはICカードの残高を計算したり……。数字を見つけては、これで何か遊べないかな? と考えていました」

家族でスキーをしているときも、次々にやってくるリフトの番号を素因数分解して足し合わせたり、父子で問題をつくって出し合ったり。『父への挑戦状』と題された自作のプリントの束からは、圭太さんが楽しみながら算数と「遊んで」いた様子がうかがえます。

算数オリンピックを目指すようになってからは、問題集を中心に対策してきましたが、勉強という感覚ではなく、夢中になって取り組んでいたそうです。
スキー場でゴンドラに乗っているときも、パズルや問題集を解いていたとか。

試行錯誤して考えることが楽しい! となれば◎

圭太さんに「算数の面白さは?」とたずねると、「試行錯誤して考えられるところ」「難しい問題が解けると、嬉しくなる」と教えてくれました。シンプルですが、考えることが楽しいという気持ちは、学習の大きな原動力

現在中学2年生の圭太さんは、数学のほかに、物理にも興味が出てきたそう。「実験して、データをとって、考察して。理論通りにいかないときは、どうしてだろう? と原因を考えて、また実験して、というのが楽しい」という言葉からは、算数で芽を出した考えるチカラが、しっかりと育っていることがわかります。

通っているN中での数学の特別授業の様子。N高研究部では物理の研究もしている。

思考力、粘り強さ、探求力。どれも子どもに身に付けてほしい力ですが、保護者はどのようにするとよいのか、見当がつかないのが正直なところ。ですが、お母さまの言葉にそのヒントがありました。
「とにかく『成功体験を積ませる』ことを意識しました。何かで級や段位が上がったら、ケーキを買ってお祝い! って」

実は圭太さん、6歳のときにスキー検定1級を取得した、史上最年少の1級ホルダーでもあります。級が上がるごとにバッジがもらえることが嬉しかったそうですが、受からなくて泣いてしまったこともあったとか。それでも次に向かうよう励まし、受かったときには一緒に大喜びすることで、上を目指して努力し、達成する嬉しさを実感してもらいたかったそうです。

また、変わったところではゲーム『太鼓の達人』の最高段位「金達人」でもある圭太さん。級→段→玄人→名人→超人→達人、と段位が進むそうですが、「太鼓の達人で記録を更新したときも、もちろんお祝いします(笑)」とお母さま。どんなことでも褒める機会を逃さないマインドが、子どもがのびのびと才能を伸ばす秘訣なのかもしれません。

つまずいたときは、気分転換に誘ってみるのも効果的

小学2年生から参加し始めた算数オリンピックでは、3年生のときにキッズBEE(3年生以下の大会)で金メダルと長尾賞(特に優秀な成績の選手に贈られる賞)を受賞。毎年好成績を収めてきましたが、実は5年生のときに、大失敗をしてしまったのだとか。5年生向けのジュニア算数オリンピックではなく、6年生向けの大会にエントリーしたために入賞を逃し、すっかり落ち込んでしまいました。

全力で支えてきた分、親も正直ショックだったそうですが、これを機に何か別のことをしてみよう、と以前から興味のあった囲碁をやってみることに。初心者ながら2泊3日の京都合宿に参加したところ、みるみるはまり、短期間でアマチュア6段まで上り詰めてしまいました。何でもすぐに極めてしまうところはさすが、の一言ですが、この「うまくいかないときは気分転換をうながしてみる」ということも、親の関わり方として見習いたいポイントです。

京都での囲碁合宿では、全国に囲碁友だちができました

1年間どっぷり囲碁につかったあと、気を取り直して挑んだ6年生の算数オリンピックでは見事金メダルを取ることができ、喜びもひとしおでした。つまずいたときは、つい親もがっかりしたり、叱咤激励したくなってしまいますが、気持ちを切り替えて別のことに誘ってみるのも、ときには大事だということがわかります。

まとめ & 実践 TIPS

現在は孫正義育英財団の財団生でもあり、公立の中学校に籍をおきながらN中に在籍し、自分のペースで思う存分やりたいことに打ち込んでいる圭太さん。
算数の才能を見つけて伸ばしたコツは、小さい頃から生活の中で算数に親しみ、何よりも親子で一緒に楽しんできたことにありそうです。「考えること」の面白さを体感すれば、あとは自分から取り組むようになり、ますます得意になるという好循環が生まれていました。
まずは、考えることの楽しさや、問題が解けた喜びを感じられるようなサポートをこころがけ、子どもの算数の力を育てていきたいですね。

(取材・文 荻原幸恵)

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