通信制高校の見直し 生徒の多様性を重視した高校教育の在り方とは

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文部科学省が、通信制高校の在り方を見直すことにしました。2021年9月、「『令和の日本型学校教育』の実現に向けた通信制高等学校の在り方に関する調査研究協力者会議」の初会合を開催しています。
通信制高校をめぐる会議体を設けるのは、これで3度目です。今回は何が焦点になるのでしょうか。

この記事のポイント

私立「広域」が人気

もともと通信制高校は、働きながら学ぶ人などを対象に、自学自習と添削指導を中心に、卒業資格を与えようという狙いで制度化されました。通信制高校の数は、昭和の時代まで公立が中心で、全国で80校台にとどまっていました。

時代が平成に移ると、私立(学校法人立、株式会社立)の新設が徐々に増えていき、1998年度以降に急増。2000年度は113校、21年度は260校を数えます。この20年間で、公立が生徒数を半減させる一方、私立の生徒数は2倍以上になりました。

私立の多くは、三つ以上の都道府県から生徒を募集する「広域通信制高校」です(公立は1都道府県内に限る「狭域通信制」)。その上、各地に設定したサテライト施設や提携サポート校などに登校する「通学コース」の存在も、人気を集める要因になっています。

問題校対策から全日制・定時制を含めた検討へ

広域通信制高校をめぐっては、2015年に株立ウィッツ青山学園高校(三重県伊賀市、2016年度で廃校)で不適切な学校運営や指導が発覚するなど、たびたび問題化。文科省も2016年、2019年に協力者会議を設置して、対策を強化してきました。

一方、今回の協力者会議は、少し毛色が違います。中央教育審議会(中教審、文部科学省の諮問機関)や政府の教育再生実行会議の提言を受けて、広域通信制に限らず、通信制高校の在り方、さらには全日制・定時制・通信制という課程区分の在り方までも検討しようというものです。

心理的・経済的に多様な生徒の受け皿に

2017年度の調査では、通信制高校の生徒のうち、それまでに不登校を経験していた生徒が、広域通信制で66.7%、狭域通信制でも48.9%を占めていました。

また、ひとり親家庭の生徒が各18.7%、26.9%、特別な支援を必要とする生徒が各3.0%、11.8%、心療内科医に通院歴のある生徒も4.8%、11.0%と、心理的・経済的に困難を抱えていたり、発達に課題があったりする生徒の受け皿にもなっています。

一方で、東京五輪スケートボード金メダリストの堀米雄斗さんのように、競技や芸能活動など、やりたいことに集中するため積極的に通信制を選ぶなど、多様な生徒を引き付ける場でもあります。

まとめ & 実践 TIPS

生徒の多様性という点では、全日制課程や定時制課程も同じです。定時制にしても、もはや働きながら学ぶためというより、午前・午後・夜間の3部制など、生徒の生活実態に応じた態勢を取っている高校が増えています。

これまでは、課程区分や学科などの枠によって、高校教育が提供されてきました。これからは、多様な生徒の実態に応じて、どう高校教育を提供するか、という発想の転換も求められそうです。
「生徒を主語にした」(2020年11月の中教審高校教育ワーキンググループ審議まとめ)高校づくりが期待されます。

「令和の日本型学校教育」の実現に向けた通信制高等学校の在り方に関する調査研究協力者会議
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/171/index.html

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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