マインクラフトでプログラミング的思考が学べる理由とは? タツナミ シュウイチさんに聞きました
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子どもたちに大人気のゲーム、マインクラフト(Minecraft、通称「マイクラ」)。教育版は小中学校で教材として使われていることをご存じですか? マインクラフトを使ったプログラミング教室も、人気の習い事になっています。
でも
「マイクラでプログラミングが学べるってどういうこと?」
と疑問に思うかたも多いですよね。
そこで、日本初のプロマインクラフターであり、教育現場でのマインクラフト活用を研究しているタツナミ シュウイチさんに「マインクラフトの教育的効果は?」「なぜマインクラフトでプログラミング的思考が育つの?」など気になることを聞いてみました。
タツナミ シュウイチさん NOT OFFICIAL MINECRAFT CONTENT. NOT APPROVED BY OR ASSOCIATED WITH MOJANG
マインクラフトは自由なプラットフォーム
・マインクラフトはプログラミング教育に活用されている
—タブレットやChromebookの端末配布がすすみ、子どもたちから「学校でマイクラをやってる!」と聞くようになりました。学校ではどのようにマインクラフトが活用されているのでしょう?
タツナミ シュウイチさん(以下タツナミ):ここ1、2年で大きく変わりましたね。学校で使われているのは教育版マインクラフト(Minecraft: Education Edition)。教育版にしかない機能もありますが、基本的な操作方法はNintendo Switchやパソコンなどでできるマインクラフト(有料)と変わりません。
使われ方は先生によって千差万別。理科の先生が化学ブロックを使って元素を教えたり、歴史の先生が地元の重要文化財を再現する取り組みをしたり。マインクラフトはそれだけ様々な要素を持っているんですね。
—そもそも、マインクラフトはどんなゲームなのでしょう。
タツナミ:3Dのブロックを使って、画面の中で物をつくったり探索したりできるサンドボックス(砂場)ゲームです。ストーリーも一応用意されてはいますが、それは気にせずひたすら建築を続けてもいいし、大きな計算機をつくってもいい。自分自身で世界をつくることができる自由なプラットフォームだと考えています。
—「ゴールを目指さなくてもいい」のは、問題解決力につながりそうです。マインクラフトがプログラミング教育に使われる理由を教えていただけますか。
タツナミ:プログラミング教育には「論理的思考力・創造性・問題解決力を養う」「コンピューターを動かすための指示を知る」の両面があります。マインクラフトはそのどちらにも役立つということで、多くの先生に使われているのだと思います。
コンピューターに出す指示に似た「レッドストーン回路」(特殊なブロックを使う仕掛け)で遠隔操作の仕組みをつくることもできます。
タツナミさんの作品「MakeCode実践ワールド【再現】世界遺産 ギザの三大ピラミッド」 NOT OFFICIAL MINECRAFT CONTENT. NOT APPROVED BY OR ASSOCIATED WITH MOJANG
マインクラフト部の生徒が教材となるワールドを制作
・マインクラフトの教育的効果①:プログラミング的思考を育てる
—プログラミング的思考(論理的に考えていく力)は今とても重要だと言われています。マインクラフトでプログラミング的思考が伸びるのはなぜですか?
タツナミ:何かをつくり出すことをよく「0から1へ」と言いますが、厳密には0.01をたくさん組み合わせることで1になると思います。マインクラフトは自由度が高く素材もたくさんあるので、子どもたちが目標を設定して方法を考え、つくり出す行程を体験しやすい。楽しいし、視覚的にわかりやすいので取り組むハードルも低いですよね。
—大人の場合、具体的な指示がないと難しいこともあります。自由度が高いなかで、子どもたちの問題解決力の高さを感じることはありますか?
タツナミ:特別支援学級での教材に使用した教育版マインクラフトのワールドは、大阪市立水都国際中学校・高等学校マインクラフト部の生徒たちと共同で制作したんです。それも中学校1年生が中心で。
大人とともに進める“仕事”としての責任もあり、仕組みがうまくいかない、勉強との両立など大変なこともありました。でも完成後にマインクラフト部の生徒達から「最後までできて良かった」と聞くことができて、本当に子どもたちの能力は計り知れないと感じました。
—すごい。元々、マインクラフトのスキルが高かったのでしょうか?
タツナミ:いえ、それまであまりマイクラをやったことがない生徒もいました。マインクラフトに慣れている人がメンター(アドバイスする係)になってチームを動かし、特にくわしい人にはプロジェクトマネージャー(スケジュールやクオリティを管理する係)をやってもらいました。スケジュールを管理する人、全体の計画を見る人などマインクラフト部のなかで組織化して。私たち大人は見守って、必要なときは手を差し伸べて伴走する形です。
ワールド制作中のマインクラフト部
マインクラフトでコミュニケーション能力・協働力向上を支援
・マインクラフトの教育的効果②:協働力を培う
—それはとても学びがありますね。ワールドにはどんな仕組みがあるんですか?
タツナミ:今回は「コミュニケーション能力及び協働能力向上支援」の教材として、ゲームプレイだけでなく「協力」できることを目指しました。具体的にはチーム4人が同時にアクションすることでゲートが開いたり、食べ物を分け合ったりする仕組みです。そういったアイデアもマインクラフト部の生徒たちによるものです。
—実践してみていかがでしたか?
タツナミ:実践はつくば市立学園の森義務教育学校の特別支援学級で行いました。学年構成はバラバラで、コミュニケーションが苦手な生徒もいたのですが、マインクラフトでよく遊んでいる人がメンターになったり、「じゃあ行こうか」と声をかけあったりすることで楽しい協働プレイができました。
大好きなマインクラフトを共通言語にすることは、コミュニケーションを円滑にする効果が非常にあると確認できました。
—好きなものが同じだと話が通じやすくなりますし、目的があることで協働作業もしやすいですね。
タツナミ:そうですね。マインクラフト部での制作も、特別支援学級での実践も、複数の人と同じワールドで遊ぶマルチプレイで行っています。協働でワールドをつくったり課題を解決したりすることは、周りの人と協力して主体的に学び合う経験になると思います。
参加者4人がいっしょに行動する仕掛けも用意されたワールド NOT OFFICIAL MINECRAFT CONTENT. NOT APPROVED BY OR ASSOCIATED WITH MOJANG
どんなことに夢中になるのか、親は見守って
・マインクラフトの教育的効果③:創造性・表現力を養う
—家でマインクラフトをする場合も、学びにつながればいいなと思います。でも、親にマインクラフトの知識が全然ないことも…。大丈夫でしょうか。
タツナミ:おそらく子どものほうがすぐにくわしくなるので、親子でいっしょにやってもいいですし、できなくてもいいんです。親御さんがマインクラフトやゲームの専門家である必要はなくて、子どもの専門家であれば十分。「時間を決めてやる」「ご飯までにしよう」などの声かけなどは必要ですが。
—親はどう見守ればいいですか?
タツナミ:学校で先生はクラス全体を見守らなくてはいけないので、全員の伴走することはむずかしいこともありますよね。家庭ではその子がどんなことに興味を持って、夢中になるのか見守ってあげてほしいです。科学や歴史、マインクラフトをきっかけに興味を持てる素材がたくさんあります。気になったことを探求して、つくってみることはきっと創造性や表現力につながります。
もちろんマインクラフトに興味がなくてもいいし、子どもの好きなものを許容してあげるだけでいいと思います。
マインクラフト部が制作したワールド NOT OFFICIAL MINECRAFT CONTENT. NOT APPROVED BY OR ASSOCIATED WITH MOJANG
まとめ & 実践 TIPS
スタートしたばかりで、戸惑いを感じる人も多い子どものプログラミング教育必修化。コードを書くコーディングといった技術面が気になりがちですが、大切なのはプログラミング的思考。マインクラフトで、創造性や論理的思考を伸ばすのも良さそうです。
なんといっても楽しくて、大人も子どもも夢中になってしまうマインクラフト。まだプレイしたことがないという人は、ぜひ試してみてくださいね。
執筆/樋口かおる
『マイクラおじさん』に聞く! マインクラフトでプログラミングを学ぶ、実際の方法は?
文部科学省「プログラミング教育」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1375607.htm
Minecraft公式サイト
https://www.minecraft.net/ja-jp
Minecraftカップ2021全国大会
https://minecraftcup.com/
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