東大の研究室で生物学の研究をする小5生。その才能の道筋を作った3つの図鑑とは【孫正義育英財団】

未来を創る人材として、「高い志」と「異能」を持った若者の才能を支援するために、孫正義氏によって設立された「孫正義育英財団」。現在は、選考によって選ばれた10歳から28歳まで、計240名のメンバーが在籍。プログラミング、数学、生物学、科学、アートと多種多様な分野の天才たちが活動しています。
生物学の研究を行う小学5年生・春山侑輝(ゆうき)さんの、好奇心とやる気を育てた家庭教育と図鑑についてお話を伺いました。

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才能への道筋はどんな図鑑で作られたのか?2期生・春山侑輝さんの親子で学び続けた家庭教育

孫正義育英財団2期生の春山侑輝(ゆうき)さんは、幼児期から図鑑に強い関心を示し、小学5年生の現在は、大学の研究室で大人たちに混ざり、生物学の研究を進める若き天才です。子どものペースを尊重しながら、興味を引き出す環境づくりについてお母様と本人に話を伺いました。

幼児向けの図鑑絵本に夢中だった0歳代

幼い頃から図鑑に、その中でも「生き物」への強い関心を示している様子がみてとれたという侑輝さん。お母様が最初に与えたのは、幼児向けの大型図鑑絵本でした。

「『図鑑絵本 ビッグチャム』という大判の、動物や虫の図鑑絵本シリーズがあるのですが、それを0歳代のときに見せてみたんです。ちょうど歩行器に乗っていた時期で、いろいろなおもちゃもある中、本を開いたまま立て、歩行器から眺めていることが多くて。周りはその様子を『変わってるね』と。でも私は、幼いながらにもすごく好きなんだろうな、と捉えて見ていました」(お母様)

『図鑑絵本 ビッグチャム』(全8巻/BL出版)

幼児期は、当時住んでいた地域の大きな公園にもよく通ったといいます。植物園にも行ったり、落ち葉を持ち帰っては観察したり。普段の外遊びの中でも、侑輝さんが興味を示す自然に、できるだけ触れさせたいという思いを大切にしていました。

対象年齢にこだわらなかった本選び

その後も生物や科学など、侑輝さんが興味を持ちそうだと思えるものは、書籍の対象年齢にこだわることなく、どんどん与えていったというお母様。

「育っていく中で、本好きであることだけはずっと変わりませんでした。子ども用の図鑑だけでなく、例えば大人向けの元素図鑑であるとか、ヴィジュアルが緻密で本格的なものだったら、侑輝は何時間でも眺めていたんです。そこで子どもの興味を引き出すには、大人用も子ども用もないんだと気付いたんですね。3歳ぐらいから図書館に連れていくと、私がそれまで選んだことのないようなものまで、自分から見つけ出して楽しむようになりました」

たとえ大人向けで全てを読みこなせなくても、夢中になれるものがあればいい。当時はそんなふうに考えていたといいます。

お母様自身は文系出身。それまでずっと理化学的なものへの苦手意識があったそうです。しかし、図鑑が与えてくれる噛み砕いた知識に侑輝さんと触れていくにつれ、一緒に面白さを感じるようになったといいます。
「例えば分子のシンプルな図解、丸や棒で成り立っているものは、侑輝はもちろん、私にもすんなり覚えられたんです」

子どもの目線に立ち返ること、そして親も同時に学んでいくこと。これは家庭教育の基本となる姿勢ではないでしょうか。

3歳で出会った古代生物の図鑑が才能を引き出した

生物学者になりたいという侑輝さんの直接のきっかけとなったのは、3歳のころに自ら選んだ『ポプラディア大図鑑WONDA 大昔の生きもの』という図鑑。古代生物といっても恐竜などではなく、もっと古い時代のものに興味を持ったといいます。

『ポプラディア大図鑑WONDA 大昔の生きもの』(監修・小林快次ほか/ポプラ社)

「例えば約5億年前のカンブリア紀の節足動物とか。あとはそれより前のエディアカラ紀(約6億年前。地質時代の区分のひとつ)のベンド生物群というもの。分類がまだよく分からず確立されていないものについて、今は専門書を読んで知識を深めています」(侑輝さん)

微生物や寄生虫など、高まるミクロの世界への関心。そして4歳で読んだ図鑑『MOVE 人体のふしぎ』の内容から、医学者・山中伸弥さんを知ったことで、免疫学やウイルスなど、ミクロの世界への興味はさらに広がりました

『MOVE 人体のふしぎ[新訂版]』(編集・講談社 監修・島田達生/講談社

実は財団生を目指したきっかけも、侑輝さんの山中伸弥さんを尊敬する気持ちから。侑輝さんの科学への関心を知ったお母様の知人が、財団一期生決定のプレスリリースを送ってくれたことから存在を知り、財団副代表理事も務める山中さんに会えるかも、と小学1年生で選考に挑戦。見事選ばれました。

侑輝くんの描いたスケッチ

子どもの行動を肯定的に捉えられる環境の大切さ財団との出会いと、子どもに合った環境の模索

公立小学校に通っていた3年生までは、クラスメートとも話が合わず、授業に興味がもてず、集団生活がつまらなかったという侑輝さん。不登校気味にもなり、お母様も悩まれました。しかし財団生になったことで、それまでとは全く違う世界が開けたといいます。

「こちらが勝手に意識してしまった面もあるかもしれないのですが、通っていた小学校では、周りと合わせなくてはという同調圧力を感じて、本人もプレッシャーになって、思っていることを言えなくなったり。そういった、それまでネガティヴに捉えられていたことが、財団では全て肯定的に見てくださって。入ったばかりの頃は、異世界とも思える真逆の価値観にすごく驚いたんです」(お母様)

「財団では、僕よりもたくさんのことを知っている生物学系の人がいて、仲良くなれたのが良かったです。一緒に財団にある生物学の図鑑や専門書を読んだり、話題について語り合ったり。-学校ではそういう話ができなかったので…あとは同じ年代の友達ができたことが、一番楽しかったです」(侑輝さん)

小5の現在は、最先端テクノロジーを備えた財団の活動施設「INFINITY」を利用し、研究についての知識を深める日々です。適切な環境が整ったことで、お母様の気持ちにもだいぶ余裕が生まれたと言います。

「以前は学校とのやり取りなどで精神的にも辛かったのですが、財団に入れていただいたことをきっかけに、方向性も定まり、そういった悩みはほとんどなくなりました。最初からいろいろと教育的な環境を調べあげたわけではなく、進んでいった先で周囲から教えられて、今ようやくベストな環境にたどり着いた感じなんです。今は今で、子どもがやりたいことを、親として十分にやらせてあげられているのか、というまた別の悩みはありますが…」

夢はバイオ分野での起業

侑輝さんが今、開発を進めているのは「光合成をする塗料」。研究計画を執筆中です。この夏からはバイオエンジニアリングや化学生命工学を専攻とする、東京大学大学院工学系研究科・津本研究室で、実験にも取り組んでいます。

「侑輝は『もっと知りたい』という気持ちが強く、字や内容が完全に理解できていなくても、高度な図鑑や専門書を長時間眺めていたことが蓄積されて、今の研究につながったのかな、と。何も参照することなく、パソコンに向かって研究のアイデアを書いている様子を見ているとそう思います」(お母様)

東京大学大学院工学系研究科 津本研究室の皆さんから、研究に関するアドバイスをいただいている様子.

「『光合成をする塗料』は、物質としては一般的なペンキのようなものなのですが、例えば工業の場で使われることで、日光を使って二酸化炭素を酸素にできるんです。二酸化炭素の排出を少なくできるメリットがあり、地球温暖化を防ぐ助けにもなります。他にも「薬剤耐性菌」という、抗生物質が効かない細菌に対抗するための抗体医薬品を、スムーズに作る配合の開発もやっています」(侑輝さん)

研究の発想を得るのは、主に本から。あとはYouTubeもよく見るのだそう。
「英語のチャンネルなんですが、顕微鏡で見た微生物の映像と解説をずっと流しているものがあって、最近はそれをよく見ます」(侑輝さん)

当面の目標は「光合成をする塗料」をうまく実用化すること。将来的にはバイオの分野で起業をし、さらにたくさんの研究をしていきたいと語ってくれました。

まとめ & 実践 TIPS

幼少期から、子どもが夢中になる対象(=本)は進んで与え続けたお母様。子どもの目線に立ち返りながら、興味を持ったものを一緒に学んでいく姿勢は、家庭教育の基本としたいポイントです。


孫正義育英財団
https://masason-foundation.org

取材・文/畑 菜穂子

プロフィール

春山侑輝/はるやまゆうき

2010年生まれ。孫正義育英財団2期生。小学5年生。
得意分野は生物・バイオ、医療、科学。2、3歳頃から免疫システムや微生物・寄生虫等、肉眼では見えないミクロの世界で起こっていることに興味を持つ。

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