コロナ禍で変わる学校図書館のあり方 電子図書館の利用が増える一方、冊数不十分による地域格差も

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子どもたちが本に親しむ場として大切な、学校図書館(学校の図書室)。
しかし、学校図書館の蔵書量は、必ずしも十分ではありません。コロナ禍で図書室が利用しづらい状況が続く中、コンピューター端末上で利用できる「電子書籍」の可能性も広がっています。現状や課題は、どうなっているのでしょうか。

この記事のポイント

冊数の「標準」達成は不十分

学校図書館に置く本の冊数について、文部科学省は、標準とする目安を示しています。
たとえば全校で18クラスある小学校では1万360冊、15クラスの中学校では1万2160冊が標準です。
しかし、文科省が2020年3月現在の状況を調査したところ、この標準を達成している学校の割合は、全国平均で小学校が71.2%、中学校が61.1%であることがわかりました。前回の調査よりは増加してはいますが、十分とはいえない状況です。
都道府県別に見ると40%前後にとどまっている自治体もあり、地域格差が見られます。

コロナ禍で「電子図書館」整備する自治体も

新型コロナウイルス感染症が再び拡大する中、学校図書館も、感染防止策を継続しながらの運営が求められます。そんな中、安全に読書ができ、子どもたちの本離れを防ぐために注目されているのが、電子書籍の活用です。

たとえば、栃木県矢板市では、市内の小中学生が共通で使える学校電子図書館「ともなりライブラリー」を開設し、約3000冊の電子図書のコンテンツを整備しています。静岡県熱海市では、市立図書館が電子書籍の貸出を行っており、それを市内の小中学校が利用しています。熊本市では、市立図書館の電子書籍を、学校用の図書館カードで借りられるようシステムを改修したところ、利用件数が増えたといいます。

文科省調査では、電子書籍を所蔵している学校の割合は小学校で0.2%、中学校で0.3%と、ごくわずかですが、「GIGAスクール構想」で児童生徒1人1台のコンピューター端末が整備されたことで、可能性は大きく広がってきそうです。

予算や学校司書を増やすのも課題

国は2017年度から5か年計画で、学校図書館の整備を進めているところです。しかし、財源は地方交付税として措置されており、各市町村が使い道を自由に決められるため、蔵書の整備に回されないことも多く、地域格差が生じやすくなっています。
そのため、学校図書館で子どもたちの読書の手助けをする「司書教諭」の配置も、小中学校で60%台にとどまっています。

まとめ & 実践 TIPS

学校図書館は、子どもが自分で足を運ぶだけでなく、「読み聞かせ」や、国語や社会科などの授業支援、総合的な学習の時間での調べ学習にも活用されるなど、「情報センター」の役目も持っています。標準達成に向けた整備の必要性は、ますます高まっています。
紙か電子かという図書の形態にかかわらず、コロナ禍でも子どもたちが豊かな読書体験と学習ができる環境を作るため、自治体が積極的に予算を講じることも求められます。

(筆者:長尾康子)

※ 文部科学省 令和2年度「学校図書館の現状に関する調査」の結果について
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/dokusho/link/1410430_00001.htm

※文部科学省 図書館の振興 子供の読書活動の推進等に関する調査研究
令和2年度 子供の読書活動の推進等に関する調査研究-調査報告書-(令和3年3月)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/index.htm

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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