ナイチンゲールは統計学で命を救った?!「統計学」の重要性がますます高まる現代、おこづかいの平均値と中央値の違いを子どもに説明できますか?

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「みんな持ってる」
「おこづかいが友達より少ないよ」

欲しいものがある、おこづかいの値上げの要求などの際に、子どもがよく使う言葉です。こんなとき、「うちはうち、よそはよそ」でごまかしていませんか? 子どもがクラス平均などの具体的な数字を提示してくると、成長を感じながらも、ちょっと焦ってしまいますよね。でも、おこづかい交渉は、統計やデータの正しい見方を知るチャンス

「統計教育」は小学校でも重要な学習内容となり、今、注目の学問。これからの世の中、大量の情報で迷子にならないために、誰もが統計リテラシーを高めておくことが大事です。

この記事のポイント

おこづかいのクラス平均額が1万円超え?あわてず中央値をチェック

『こども統計学 なぜ統計学が必要なのかわかる本』より

『こども統計学 なぜ統計学が必要なのかがわかる本』(カンゼン)は、親子で楽しく統計学が学べる本。こちらから、おこづかい交渉にも役立つ統計学の基本を紹介します。

・「平均」が「ふつう」とは限らない

「ふつうってこと?」のイメージがある「平均」ですが、ふつうとは思えない数値が出てしまうことも。クラスメート5人のおこづかいがそれぞれ100円、500円、500円、1000円、50000円の場合、合計金額は52100円。合計金額を人数(5)で割ったものが、平均額の10420円です。50000円(他の値から大きく外れた値、外れ値)の人が一人いることで、平均額がずいぶん高くなってしまいます。

こんなときは「中央値」「最頻値」もチェック。真ん中の値「中央値」、最も多く出現する「最頻値」はどちらも500円。これでは「おこづかいはふつう1万円!」とは言えませんね。

・テストの点数にも「平均値」と「中央値」がある

ニュースなどで耳にする「平均年収」も、収入がとても多い人を含めた数値。令和2年の賃金構造基本統計調査でも、一般労働者の賃金の平均値は中央値より高くなっています。

テストの点数の「平均点」と「中央値」はどうでしょう。テストの点数には上限があるため、「平均点をクリアした!」と思っても、高得点の人数が多ければ中央値が平均値より高いこともよくあります。どちらもチェックしておいたほうがよさそうです。

統計は、世の中のいろんなところで役に立っている

『こども統計学 なぜ統計学が必要なのかわかる本』より

・ナイチンゲールは、統計学で命を救った

お金やテストの点数について調べるほか、統計学は命を救うことにも役立っています。看護師ナイチンゲールは「白衣の天使」だけでなく、「医療統計学の母」としても有名。戦争中に衛生状態と死亡率の関係などのデータを集め、野戦病院の衛生状態の改善に貢献しました。

衛生的な環境があれば助かる命が多いことは、今では多くの人が知っていること。それが当たり前になったのも、統計学のおかげなんですね。

・統計を使えば、説得できる!

ナイチンゲールが衛生の大切さを説いたように、統計をエビデンス(根拠)として用いると、説得力バツグン。おこづかいの金額を決めるときは、金融広報中央委員会(知るぽると)が発表している全国の子どものおこづかい額調査が交渉の材料になりそう。データを用いて話すことは、子どもたちの将来の仕事でもきっと役に立つはず。

統計学を知って、だまされないようになる

『こども統計学 なぜ統計学が必要なのかわかる本』より

・統計で、「思い込み」や「かんちがい」に気づける

断片的な情報から思い込みやかんちがいをしていることは、大人でも多いもの。「外国人による窃盗事件」のニュースが大きく報道されたら、「外国人の犯罪が増えているのかな…」という印象を持つ人もいるでしょう。でも、統計データを見ればそれが「思い込み」だと気づけます。

・統計の読み方を知っていれば、だまされない

『こども統計学』では遠近法を使ったグラフなど、見る人がだまされやすいグラフについても紹介しています。ビッグデータと呼ばれる大量のデータに囲まれて暮らす現代では、統計データを正しく読み取る力が大事。子どもはもちろん大人にも、ぜひ身に付けてほしい力です。

統計学で、活躍の場が広がる

『こども統計学 なぜ統計学が必要なのかわかる本』よりベネッセ教育情報サイトが作成

・小学生でも使える、PPDACサイクルとは?

PPDACサイクルとは、統計を使って問題を解決するフレームワーク。Problem(問題を設定する)、Plan(計画を立てる)、Data(データを集める)、Analysis(データを分析する)、Conclusion(結論を出す)の頭文字から「PPDAC」と呼ばれています。小学校の算数にも取り入れられ、大人にも有用なフレームワークです。

・データサイエンティストになって、活躍できる!

膨大なデータを分析し活用する「データサイエンティスト」のように、統計学の知識を必要とする職業も注目されています。専門家ではなくても、統計で考える力は今後ますます重要に。基礎から学んでおいて損はない学問といえるでしょう。

まとめ & 実践 TIPS

様々な情報に囲まれ、正しく統計データを読み取る力が必要な昨今。おこづかい問題をきっかけに、親子で統計学の「基本のき」を知ってみませんか。

執筆/樋口かおる

『こども統計学 なぜ統計学が必要なのかがわかる本』(渡辺美智子:監修、バウンド:著/カンゼン刊)

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厚生労働省 令和2年賃金構造基本統計調査 結果の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/index.html

総務省統計局 なるほど統計学園 ナイチンゲールと統計
http://www.stat.go.jp/naruhodo/15_episode/episode/nightingale.html

プロフィール

渡辺美智子

慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授。理学博士。日本学術会議連携会員。統計数理研究所客員教授、独立行政法人統計センター特別参与。専門は統計学、とくに、多変量解析と統計教育。2012年度第17 回日本統計学会賞受賞。著書・監修は『レッツ! データサイエンス 親子で学ぶ! 統計学はじめて図鑑』(日本図書センター)、『統計と地図の見方・使い方 データから現象や課題と解決策をさぐろう』(PHP研究所)、『今日から役立つ統計学の教科書』(ナツメ社)など多数

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