GIGAスクール構想ってなに?教育がどう変わるの?初めてでもわかる優しい解説
- 教育動向
令和の学びのスタンダードとして文部科学省により進められている「GIGAスクール構想」。1人1台端末と、通信ネットワーク整備により、個別最適化した学びの提供を目的としたものですが、具体的にどのようなものかわからないと思うこともあるのではないでしょうか? そこで、GIGAスクール構想とは何か、その背景や目的、教育がどう変化するのかなど、初めてでもわかる基本のキをご案内します。
GIGAスクール構想とは何か──1人1台端末で個別最適化された教育を実現
GIGAスクール構想が打ち出されたのは、2019年の2月。文部科学省の定義によると、「1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育環境を実現する」ものとなります。
少しわかりづらいため噛み砕いて説明すると、1人1台の端末とICT環境の整備で、子ども1人ひとりに適したより深い学びが実現できるということです。
一斉教育から個別最適な教育へ
一方向から双方向へ
誰1人取り残さないかつてない大きな教育環境の変化となります。文部科学省は、GIGAスクール構想について3分でわかる公式プロモーション動画も制作しているため、見るとより理解が深まるでしょう。
GIGAスクール構想の必要性と目指すもの──変化の激しい社会を生き抜く力を
なぜ今、GIGAスクール構想が必要となるのでしょうか。また、それにより何を目指していくのでしょうか。次の2点が挙げられます。
まず1つ目は、劇的に変化する社会を生き抜く力をつける教育が必要であるということ。ビッグデータやAI、ロボットテクノロジーといった最先端技術の急速な発達により、子どもたちが生きていく時代は、今とは全く異なる変化の激しいものとなります。これらは「Society5.0」とも言われ、社会のあり方そのものが劇的に変わるわけです。
そのときに、これまでと同じような教育を行うだけでは太刀打ちできません。社会の急激な変化に対応して、教育も変化するためには、STEAM教育やアクティブラーニング、創造性を育む個別最適化されたプログラムなど様々な新しい手法が必要となります。その土台を支えるのがGIGAスクール構想なのです。
2つ目は、日本の競争力を高めるために教育のICT化への遅れを取り戻す必要があるということ。実は、日本は他国に比べて学校のICT化が進んでいないという残念な状況にあるのです。
OECD(経済協力開発機構)の「生徒の学習到達度調査2018年調査」を例に見てみましょう。「ICT活用調査」では、学校の授業でのデジタル機器使用はOECD加盟国の中で最下位に沈んでいます。そのため、国際的な競争力を高めるためにもGIGAスクール構想による教育環境整備が求められるわけです。
GIGAスクール構想で子どもの教育に起こる変化とは
GIGAスクール構想によって、学校における教育はこれまでの一斉学習から、個別最適化された21世紀型の学習へ深化・転換します。文部科学省も
これまでの教育実践の蓄積 × ICT = 学習活動の一層充実。主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善
と表していますが、具体的にどのような変化が起こるのでしょうか。例とともに見ていきましょう。
・一方向から双方向へ
これまでの対多数の一斉授業ではなく、電子黒板で画像や動画も活用し子どもの興味関心を高める授業ができるようになります。また、子ども1人ひとりの理解度や反応も手軽に把握できるようになるため、双方向のやり取りも増加。きめ細やかな指導ができるようになります。
・生徒個人に合った課題へ
課題や宿題も変化します。これまでのように全員同じ一斉の課題ではなく、蓄積された学習履歴やレベルに合わせた個別最適化された課題に取り組むことが可能になります。
・グループ学習が豊かに
グループ学習のリサーチでは、本だけでなくインターネットや動画など様々な材料にアクセスすることができるようになります。また、チャットツールや共同編集ツールを活用して、意見交換や議論も充実するでしょう。さらには、画像や動画の利用などプレゼンテーションの質も高めていくことができます。
・教育ソフトの充実
端末やICT環境の整備により、デジタル教科書などのデジタルコンテンツ、生徒一人ひとりのレベルや学習状況に応じて出題されるAIドリルなど、学びを豊かにする新しい教育ソフトが充実します。
GIGAスクール構想の進捗と実践例
新型コロナウイルスの感染拡大による学校教育への影響を踏まえ、GIGAスクール構想も急ピッチで進められています。当初は2023年度中に1人1台端末配備の計画でしたが、2020年度中の完了を目指すよう前倒しが行われています。
しかしながら、2020年8月末時点で端末配備済み自治体はわずか2%。7割は3学期に配備予定ですが、自治体間格差も生じているのが現状です。
そのような中でも、様々な自治体でICTを活用した新たな教育事例も生まれています。たとえば、千葉県柏市立手賀東小学校では「オンラインによる校外学習」を実施。3年生の社会科「身近な地域の様子や見学」の単元において、地域の農家の方へのインタビューをオンラインで実施するなど、ICTを活用しながら地域の様子を学び、伝える工夫をしています(文科省「小中高等学校におけるICTを活用した学習の取組事例について」より)
GIGAスクール構想により整備されたICTの活用の可能性は、授業や学習だけに止まりません。家庭と学校のコミュニケーションや課題・提出物のやり取り、教員のテレワークの実現など様々な活用が広がっています。令和の学びのスタンダードとして、現在進行形で進化中。お子さまの学校での取り組み状況についても、ぜひ確認してみましょう。
まとめ & 実践 TIPS
GIGAスクール構想は、単なるICT環境整備ではありません。劇的に変化する社会を生き抜く力を子どもたちが養成できるよう、様々な新しい教育手法が展開されるものです。個別最適化された学びが提供される中では、子どもたちの自主性・創造性もより求められます。また、慣れない端末の操作で戸惑うお子さまもいらっしゃるかもしれません。家庭でも適切なフォローをしていけるとよいでしょう。
出典
文部科学省・GIGA スクール構想の実現へ
https://www.mext.go.jp/content/20200625-mxt_syoto01-000003278_1.pdf
文部科学省・「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」令和元年6月25日
https://www.mext.go.jp/a_menu/other/1411332.htm
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