障がいがあってもなくても、すべての子どもがICTで学べる環境を【特別支援教育のICT活用】

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文部科学省の有識者会議で、今後の特別支援教育の方向性や課題の取りまとめ作業が行われています。その中で、特に注目されているのが、情報通信技術(ICT)の活用です。すべての子どもたちが共に学び、生きていく社会の実現のためにも、大きな一歩となりそうです。

この記事のポイント

特別支援教育めぐり文科省会議が報告へ

近年、通常の学級に在籍しながら、一部の授業を別の教室で受ける「通級指導」を利用する子どもや、特別支援学級・特別支援学校に在籍する子どもの数が増加しています。それに伴い、教室不足や、教員の専門性の確保、福祉や医療機関との連携などが課題となってきました。

そこで、文科省は有識者会議を設け、約1年半をかけてさまざまな議論を続け、その報告書の素案が、まとめの段階に入りました。

多様な障がい種別で活用

今は「GIGAスクール構想」により、通常の小中学校のクラスでも1人1台のコンピューター端末の整備が進んでいるところです。しかし実は、特別支援教育では以前からICTの活用が行われてきました。

たとえば、病気のために学校に通えない子どもが、入院している病院や自宅から、遠隔で学ぶオンライン授業が挙げられます。また、視覚障がいのある子どもは、文字を拡大して読み、音声読み上げ機能を使っています。重度の肢体不自由の子どもも、視線を利用してコンピューターを操作しています。この他にも、文字を書くのが難しい子どもがキーボードを使ってノートを取るなど、さまざまに活用されてきました。

報告案は、これらの実践例を取り上げ、ICTを「学習指導という側面にとどまらず、障がい者が情報をやり取りし、社会によりよくアクセスしていくために必要不可欠な存在」だと位置付け、環境整備と学習の充実を図る必要があるとしました。

端末の整備や指導力向上もポイント

有識者会議の委員からは、特別支援教育でのICTの必要性が認められ、一層の充実を図ることが明記されたことを評価する声が挙がりました。一方で、指摘された課題も少なくありません。

一つは、先生のICT活用スキルの向上です。障がいの状態に応じて、専門的な知識も必要になる場合もあります。先生に一任するのではなく、学校全体で、さらには教員養成段階から、体制を整えていく必要があります。

もう一つは、ICT機器の整備です。GIGAスクール構想の一環として、障がいがある子どもたちにも、すみやかな導入が求められます。特別支援学校の運営全体のデジタル化も急務です。

まとめ & 実践 TIPS

ICTの活用については、障がい児の学習や生活上の困難を改善・克服するため、指導効果の向上につなげるべきことは、もちろんです。ただし、ICT導入ありきになったり、ICTさえあればこれまでの教育活動の代わりになる、と考えたりするのは、早計でしょう。子どもたちが、それぞれの特性に応じて、主体的に学べるように生かすことが、何より大切です。
「誰一人取り残さない」とうたう「令和の日本型学校教育」(中央教育審議会答申案)にふさわしいのは、障害があってもなくても、ICTを使って得意なところを伸ばし、社会とつながる力を育成することではないでしょうか。

(筆者:長尾康子)

出典:
※文科省 新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議(第13回)会議資料
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/2020/03/1422997_00008.htm

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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