新型コロナで子どもを「失われた世代」にしないために ユニセフ報告書より

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国連児童基金(ユニセフ)は、新型コロナウイルスで、世界の子どもがどのような影響を受けているかをまとめた報告書を公表しました。感染そのものだけでなく、教育や栄養、福祉への長期的な影響から、「失われた世代」を生まないよう、警鐘を鳴らしています。

この記事のポイント

感染者の9人に1人を占める

報告書の原題には、「Lost COVID Generation」(コロナによる失われた世代)という言葉が使われています。コロナ禍の長期的な影響が、子どもたちの将来を左右しかねない、と警告を発しているわけです。

報告書によると、2020年11月現在、世界87か国で新型コロナに感染した2570万人のうち11%を、20歳未満が占めています。つまり、感染者の9人に1人が子どもだということです。大人より症状は軽いものの、感染者数は増加しています。

貧困や栄養不良が急増

報告書は、ヘルスケアや教育、福祉などの社会サービスの中断によって、子どもたちが受ける影響を示しました。具体的には、▽分析対象となった国の約3分の1で、子どもの予防接種などの対象範囲が少なくとも10%減少した▽135か国で、女性と子ども向けの栄養サービスの対象範囲が40%減少した▽世界で2億6500万人以上の子どもたちが、学校給食を食べられていない▽急性栄養不良になる5歳未満の子どもたちが、600万~700万人増加する見込みである▽貧困の中で暮らす子どもが、2020年半ばまでに15%急増し、1億5000万人増えたと推定される……などとしています。

また、学校は地域での主な感染源ではなく、子どもたちは学校以外の場所で感染する可能性が高いこと、休校が長引けば子どもたちはそれだけ学習の機会を失い、将来の収入や健康にまで影響が及ぶことになると指摘しています。

六つの対策を呼び掛け

こうした危機に対応するため、ユニセフは、各国政府とパートナーに、(1)デジタル格差の解消などを通じて、すべての子どもたちの学びを保証する (2)プライマリーヘルスケア(基本的な健康管理)へのアクセスを保証し、ワクチンを手頃な価格ですべての子どもが利用できるようにする (3)子どもや若者のメンタルヘルス(心の健康)を支援し、子どもに対する暴力、ジェンダーに基づくあらゆる形態の暴力に終止符を打つ (4)安全な水、衛生へのアクセスを増やし、環境悪化と気候変動問題に対処する (5)子どもの貧困の増加を逆転させ、すべての人の包摂的復興を確保する (6)紛争や自然災害などの影響を受けている子どもとその家族を保護し、支援するための取り組みを強化する……を呼び掛けました。

まとめ & 実践 TIPS

感染拡大の終わりが見えない中、六つの呼び掛けを実現することは、世界の子ども、そして日本の子どもを、失われた世代にしないために、必要なのです。

(筆者:長尾康子)

日本ユニセフ協会 ニュースバックナンバー 新型コロナ感染、9人に1人が子ども 失われた世代を生まないために ユニセフ、報告書発表
https://www.unicef.or.jp/news/2020/0238.html

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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