コロナの不安、乗り切る伝え方は

新型コロナウイルスの感染予防をしながらの通学は、子どもや保護者はもとより、先生方にとっても、気を使う日々が続きます。非日常のストレスから、不安や焦りを感じる子どもも少なくないことでしょう。不安がストレスとなり、友達関係などのトラブルにつながらないよう、対策が必要です。

「恐れ」が引き起こす負の連鎖

日本赤十字社が公開した「ウイルスの次にやってくるもの」と題するメッセージ動画は、200万回以上再生され、注目を集めています。感染症にまつわる「恐怖」が人々の心にどう広がっていくのかや、恐怖に飲み込まれないための対応策を、絵本風にして提起しています。
暗いニュースや間違った情報を餌にして大きくなる「恐怖」は、人々に猜(さい)疑心や被害者意識を生じさせ、「感染が広がったのはあいつのせいだ」などと、他者への攻撃や、人間関係の分断をもたらすとしています。感染していたら自分もその対象になる、という恐れから、体調不良を隠すようになり、かえって感染の拡大につながる、と警鐘を鳴らしています。
動画は、恐怖による感染の負のスパイラルを断ち切るために、▽時にはパソコンやスマートフォン(スマホ)を消して、暗いニュースばかりを見過ぎるのはやめる▽不確かな情報をうのみにせず、考える▽誰にもわからないことは、誰にもまだわからないことでしかなく、そのまま受け止める▽非難や差別の根本に、自分の過剰な防衛本能があることに気付く▽家族や友人と話し、生活習慣を整える……などの対処法を提案しています。

学級や家庭で話す時間を

文部科学省は、学校再開後の児童生徒に対する生徒指導上の留意点を、全国の教育委員会に通知しています。海外から帰国した児童生徒や外国人児童生徒、感染者や濃厚接触者とその家族、医療従事者などに対する偏見や差別は断じて許されないとし、▽アンケート調査等で、悩みを早期発見する▽特定の対象への偏見や差別が生じないよう、生徒指導上の配慮をする▽きめ細かな健康観察や、健康相談の実施▽コロナを理由としたいじめや偏見等に悩んだ場合の相談窓口の周知……を求めています。

今、誰もが見えないウイルスに対する恐怖を感じています。「感染したくない」という心理から、見えやすいもの、わかりやすいものをターゲットにして「安心感を得たい」という気持ちも、誰の心の中にも潜んでいると言えるでしょう。学校では、「偏見や差別をしてはいけない」と指導する前に、学級活動や道徳の時間を活用して、ウイルスがもたらす負のスパイラルについて話し合う時間を設けることが有効でしょう。ご家庭でも、話題にしてみてはどうでしょうか。
日本赤十字社は3月の時点で、新型コロナウイルスがもたらす感染症には「病気そのもの」「不安と恐れ」「嫌悪・偏見・差別」の3つの側面があるとして、ガイドを発表しています。こうした資料も教材にしながら、恐怖に振り回されず「正しく知り、正しく恐れる」ことが求められます。

(筆者:長尾康子)

※日本赤十字社 動画「ウイルスの次にやってくるもの」
https://www.youtube.com/watch?v=rbNuikVDrN4

※文部科学省 新型コロナウイルス感染症に対応した小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における教育活動の再開後の児童生徒に対する生徒指導上の留意事項について
https://www.mext.go.jp/content/20200527-mxt_k

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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