新型コロナで子どもの貧困対策が急務!

新型コロナウイルスの感染拡大が、2020年度に入っても止まりません。3月の全国一斉臨時休校に加え、4月に入っても休校措置を延長する自治体や学校が続出しています。授業の遅れや夏休みの短縮なども心配ですが、今から手を打っておく必要がありそうな課題もあります。子どもの貧困対策です。

家計と学力、格差の「連鎖」が心配

家庭が貧困状態にあると、子どもが穏やかな気持ちで勉強できなかったり、塾に行けない、本が買えないなど教育費が十分に掛けられなかったりして、学力の格差を生むことが、全国学力・学習状況調査の追加分析などからも明らかになっています。生活保護世帯で育った子どもが、学力面や家計面の理由で進学を諦め、就職にも困難をきたして生活保護に陥る、といった「貧困の連鎖」があることも指摘されています。これは決して子ども自身の責任ではなく、社会全体で考えるべき課題だといえます。
一連の休校措置により、授業が行えないばかりか、家に閉じこもる子どもの心身のストレスが加わって、さらに勉強の遅れが心配になります。さらに、小さい子どもを持つ家庭では、平日に家にいる子どもの面倒を見るために、仕事を休まざるを得ない保護者が多く出ていることが、深刻な問題になりました。
感染は世界に拡大しており、経済への影響も長引きそうです。不況が続けば、保護者の仕事や収入にも、不安が広がります。子どもの貧困をめぐる条件は、ますます悪化しそうな気配です。
そうした中、内閣府が19年度の「子供の貧困実態調査に関する研究」報告書をまとめました。2013年の「子どもの貧困対策推進法」成立以来、政府も「子供の貧困対策大綱」を定めるなどの対策を強化しており、その一環として行ったものです。

親子の健康状態も悪く

報告書では、北海道から鹿児島まで、6道府県と14市町村が行った子どもと親のアンケート調査を集め、分析しています。
共通する質問項目によると、たとえば、親が希望している子どもの進学先として、「中学まで」または「高校まで」と回答した割合は、調査した11自治体のすべてで、非困窮世帯(生活に困っていない家庭)より困窮世帯(生活に困っている家庭)のほうが高くなっており、最も差が大きかった自治体では3.8倍にもなっています。
同様に、困窮世帯では▽父親の仕事は非正規が多い(最大9.2倍)▽親の健康状態はよくない(最大3.9倍)▽子どもの健康状態もよくない(最大3.5倍)▽親に頼れる相手がいない(最大5.3倍)……ということが確認されました。
子どもの健康状態をめぐっては、親に質問している自治体と、子どもに質問している自治体がありましたが、両方に質問している自治体の場合、子どもの回答のほうが、親の回答より悪く回答する傾向がありました。
報告書では、全国共通で調査する際の項目案も作成しています。子どもの貧困対策は、各自治体の調査にもある通り、現在でも待ったなしです。これ以上、貧困の格差を広げないためにも、国や自治体が一緒になり、実態に応じて早急に手を打つ必要があるでしょう。

(筆者:渡辺敦司)

※内閣府ホームページ「子供の貧困対策」
https://www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/index.html

※内閣府「子供の貧困実態調査に関する研究 報告書」
https://www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/chousa/r01/pdf-index.html

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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