学校防災に地域連携の視点を

津波の被害の恐れがある地区ごとに避難計画を策定している市町村は37%にとどまっていることが、消防庁の調べでわかりました。東日本大震災での津波被害を忘れてはならない春の時期、避難所としての役割を担う学校も、地域と連携した防災対策が求められています。

市町村別の津波避難計画は策定されたけれど…

防災活動や防災教育に関連する法律は、東日本大震災の教訓を踏まえて、見直しが重ねられてきました。総務省消防庁が示しているものの一つに「津波避難計画の策定」があります。2011年の津波対策推進法で定められたもので、津波が発生、または発生する恐れがある場合に、避難場所や避難の経路を確保するための計画を指します。津波で浸水が想定される地域からの避難経路の指定、緊急避難場所への経路の指示、津波情報の収集・伝達の方法、避難訓練の実施体制や津波に対する教育・啓発などが含まれます。

消防庁は、海岸線を有しているか、海岸線を有しないものの津波による被害が想定される40都道府県の675市町村を対象に、この計画を立てているかどうか、2019年12月1日現在で調査しました。その結果、津波避難計画を策定済みなのは99%に当たる668市町村に上りました。前年より13市町村増えていて、計画の策定はほぼ達成したと言えます。
調査ではさらに、自治会単位など、より詳しい地域別の計画を策定したかも尋ねています。予想される津波の到達時間までに、安全な地域へ避難することが困難な「避難困難地域」の有無の確認や特定を進めているのは全体の約7割でしたが、避難行動を定めた計画やマップを「全地域で作成済み」「一部地域で作成済み」と回答したのは、合わせて37.5%の253市町村にとどまりました。「未作成」は62.5%の422市町村です。
調査結果を受けて消防庁は、計画未策定の市町村に策定を促し、住民参加による地域ごとの津波避難計画の作成や、避難困難地域の確認と必要な対策の推進などを図るよう、通知を出すとしました。

学校ならではの参加を

地区別の細かな地域ごとの避難行動の計画策定に当たっては、地域住民や市町村の防災担当職員、消防職団員を中心に構成することが推奨されています。消防庁の策定マニュアルでは、地域の学校や民間企業、漁業関係者、ボランティアなど幅広いメンバーを募り、ワークショップ形式で計画を作り、具体的なアクションプランを実行することを示しています。
事例を見ると、市町村の地域を学区に分けて考えた例も挙げられています。学校周辺の道路事情は、通学路を把握している学校関係者が最もよく知るところですし、ワークショップ形式の話し合いに慣れている教員も多いはずです。
津波避難計画のような地域の防災計画の立案に加わることで、各校の「学校防災マニュアル」を見直すヒントが得られるかもしれません。

(筆者:長尾康子)

※総務省 市町村における津波避難計画の策定状況の調査結果
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01shoubo01_02000148.html

※消防庁 津波避難対策推進マニュアル検討会報告書
https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/kento106.html

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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