国立大学の授業料、値上げ拡大する!?

国立大学の授業料は安い……。保護者の世代にとっては、そんな印象が強いのではないでしょうか。しかし今後は、そうした状況が変わってくるかもしれません。2020年2月に議論を始めた文部科学省の検討会議が、課題の一つに「授業料の自由化の是非」を挙げているからです。

法人化で「標準額」設定、2割増までの制限

その前に、まず国立大学の授業料が現在どう決まっているのかを見てみましょう。かつて国立大学は、文字通り国の直轄でした。授業料や入学料も、文部科学省(旧文部省)と財務省(旧大蔵省)との折衝で決まっていました。

1975年度、国立大学の授業料は3万6,000円で、私立大学の平均額が18万円余りだったのに比べれば5分の1と、確かに安いものでした。しかしその後、授業料と入学料が毎年交互に値上げされるような状況が続きました。2003年度は52万800円と、私立大学(約81万円)の65%ほどでした。ちなみに75年度に5万円だった入学料は、28万2,000円になっていました。

一方、2004年度から国立大学は、国直轄から「国立大学法人」に移行しました。各大学を法人化することで、自律的な運営を図ってもらおうとしたのです。それには財政も含まれており、授業料は省令で定める「標準額」を基準として、2割までの上乗せが認められています。

ただし標準額は2005年度に53万5,800円へと引き上げられて以来、据え置かれています。その結果、18年度は私立大学(約90万円)の59%ほどに縮小しています。

今は5大学にとどまるけど…

法人化から15年たっても、学部レベルで標準額を上回る授業料を設定するのは5大学(東京工業大学は63万5,400円、東京芸術・千葉・一橋・東京医科歯科の各大学は上限の64万2,960円)にとどまっています。それも、19年度や20年度の入学生からの話です。ただし、20年度から「全員留学」を打ち出した千葉大学に見られる通り、引き上げた分を基に教育環境を充実させようという動きです。

教育の充実には、お金がかかるのも事実です。典型例は、教員一人当たりの学生数を示す「ST比」です。体験学習や調査、ディスカッションなどアクティブ・ラーニング(AL、高等教育では「能動的学修」と訳す)を行うには人手が掛かりますし、グローバル化対応で外国人教員を増やすにも人件費は不可欠です。

一方、2017年度から給付型奨学金が創設されたり、所得に応じて返還月額が決まる「所得連動返還型奨学金制度」が導入されたりするなど日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金事業の充実に加え、20年度からは授業料等減免制度の拡充や給付型奨学金の拡充を内容とする「高等教育の修学支援新制度」が始まります。

もちろん検討会議は国立大学法人の経営全般を審議するもので、授業料の自由化にしても方針が決まったわけではありません。ただ、時代は国立大学の授業料を一律に抑えるという方向から、国公私立を通じて経済的支援が必要な家庭の負担軽減をどう図るか、という方向にシフトしていることは確かなようです。

(筆者:渡辺敦司)

※国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議(第1回) 配付資料
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/105/1408397_00001.html

※日本学生支援機構ホームページ
https://www.jasso.go.jp/

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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