習慣にしておきたい。新学期が来る前の家計の見直し

幼稚園から高校まで、すべて私立に通った場合の学習費(*注1)は、すべて公立に通った場合と比べて「3倍も」かかると言われています。ただ、「幼児教育は無償化したし、それほどかかるということはないのでは?」「すべて私立に進学するわけではないし、何とかなるんじゃない?」などというかたもいるでしょう。

文部科学省では、「生きる力」というキャッチコピーを掲げて、小学校は2020年度から、中学校は2021年度から、高校では2022年度から学習指導要領を新しくしつつあります。親世代の教育のやり方とはまったく異なることから、新しい習い事や学習塾などに頼るという子育ての構図は今後も変わらないでしょう。今回は、新学期を控えた子育て世帯の教育費と家計の見直しを考えてみます。
*注1:学習費=授業料や学習塾などの費用も含む

就学援助等は今後、家計の救世主となるのか

幼児教育の無償化によって、今後、家計が楽になるわけではないでしょう。消費税の増税分を教育費の財源として振り分けるそうですが、使途拡大によって費用が増えてくると、少しずつ制度が改定されるというのは、これまでにもよくあったことです。児童手当が「すべての家庭に支給される」はずが、15,000円ではなく、所得によって5,000円にされたり、「すべて」の高校生の学費が無料になると決定した後でも、途中で所得制限ができ一定以上の所得のご家庭では援助が無くなったりしました。いったんできた制度が、制度の維持のために改正されるということはよくあります。

就学援助等ができたとしても、費用項目によって援助の対象になったりならなかったり、申請を知らずに間に合わなかったりと、意外と公的な給付は使い勝手がよくないことが多いものです。しかも、家計を楽にするつもりで、働き始めたら、所得制限を超えてしまい、援助が無くなったり、負担が増えたりということも起こります。ただ、よく「扶養の範囲内で働かないと損をするんでしょう?」と聞かれることがありますが、必ずしもそんなことはありません。

子どもを育てるためには地域特性は大事なポイント

住む地域によって、子どもにかける金額が異なる、ということを実感しているかたは多いでしょう。人口の多い地域であれば、習い事や塾も通える範囲にたくさんあります。競争が激しい地域なだけに、子ども周囲でも「〇〇ちゃんは、こんな塾に行き始めた」「××ちゃんは、こんな習い事を始めた」などということを聞くと、ついつい、自分の子どもが公園でのんびりと遊んでいていいのかどうか、不安に思うようになったお母さんは多いかもしれません。

下の表を見てください。学校外の活動費をまとめてみました。(出所:文部科学省「子ども学習費調査」より筆者抜粋)住む地域によって、10万円以上の差が出ているということは、一番お金のためられる小学校修了時までには100万円以上の差異(*注2)が出るということです。子育てをする場所を決めるのはなかなか大変ですが、中学から受験をすることが多い地域なのか、それとも公立の学校が充実しているのかなど地域特性に注目して住む場所を決めることで、教育費は格段に異なってくるのです。
*注2:1年間に10万円の差が出たとして、12歳まで累計した場合

この表を見ていただくと、学校以外の費用は、どこに住むかで全く違ってくることがわかるでしょう。どこに住むかで、かかる費用が年間16万円も違ってくる(中学校で指定都市に住む場合と5万人未満の地域に住む場合の比較)場合があるのです。できれば、子どもに「中学受験をさせる」「高校受験をさせる」などまでしっかりと計画を立ててから、子育てをしていく地域を考えたいものです。

新学期にかかる費用はすべて必要か!?

私たちファイナンシャルプランナーがよく言うのは、「子どもが小学校を卒業するまでは、貯蓄期間です」ということ。公立小学校に進学すると、公立小学校の学校教育費は、約6万3,000円です。(出所:文部科学省「子供の学習費調査」)この内訳の中には、修学旅行や遠足、見学費、学校納付金、図書、学用品、実習材料、通学関係費などが含まれています。この金額を見ると、小学校までがため時で、ここが貯蓄するためのがんばり時ということがわかるでしょう。

新学期から新しい習い事を検討するかたもいるでしょう。小学校から必修となる英語やプログラミング教室も盛況なようです。ただ、習い事を始める時には、月々の月謝以外の費用もしっかりと見積もる必要があります。春休みや夏休みの長期の休みで行われるイベントを見つけて参加してみるとか、いきなり習い事をするのではなく、親子で一緒に英語のラジオを聞くなど、できることから始めていくということもいいでしょう。今は、ネット環境がありますので、親子で一緒に勉強することで安上がりになることもあります。

新学期が始まると、学校関連の費用など、教育費が最初にまとまってかかってくるものが多いものです。最初に必ず必要なものか、それとも、少し調整がきくものなのか、などは必ず新学期を前にしっかりと確認しておきましょう。子どもが小さいうちにいろいろなことをさせてあげたい、今は嫌がっているけど、継続は力だから、など親の思いもあるでしょうが、将来的にもっとお金がかかる時、たとえば「海外留学をしたい。」「自分用のパソコンを購入したい」などの時にお金が不足してしまうことは親として悲しいものです。

子育て世帯では、新学期を前に家計の見直しは必須です。新学期から何か始めないと、などあせる気持ちもわかりますが、教育費は時期を調整することが難しい費用です。来たるべき将来の教育費に備えるために、新学期が始まる前の家計の見直しを習慣にしていただきたいものです。「今、必要な費用か」「少し待ってもよい費用か」などと、家計の費用について仕分けをしてみるというのはいかがでしょうか。   

*平成30年度子供の学習費調査
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/kekka/k_detail/mext_00102.html

プロフィール


當舎 緑

社会保険労務士、行政書士、ファイナンシャル・プランナー。資格取得をはじめ、教育・育児、マネーなど一般消費者向けのセミナー、執筆活動を行う。子どもにかけるお金を考える会(http://childmoney.grupo.jp/)のメンバー、一般社団法人かながわFP生活相談センター(https://kanagawafpsoudan.jimdo.com/)の理事でもある。金融機関での年金相談はじめ、区役所、県民相談の窓口での行政相談、病院でのがん患者就労支援相談の窓口で一般向けの相談にも応じている。家庭では3児の母でもある。

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