授業もテストもパソコンの時代に!?

萩生田光一文部科学相が、全国学力・学習状況調査を「コンピューター使用型テスト」(CBT)方式で行うことに、前向きな姿勢を示しました。国は2019年度補正予算から学校で1人1台端末などの環境を整備する国家プロジェクト「GIGA(ギガ)スクール構想」に着手しています。2020年度の小学校から順次全面実施となる新学習指導要領でも、コンピューターや情報通信ネットワークを活用した学習活動を充実するよう求めています。これからは授業もテストも、パソコンやタブレットなど情報端末を使うのが当たり前、という時代が来るかもしれません。

1人1台環境の整備とともに

CBT方式への移行は、1月31日に行われた定例の閣議後会見で表明したものです。前日に一部通信社が地方紙に配信した「2023年度をめどにパソコンで行う方式へ全面移行する方針を固めた」という記事の真偽を問われ、萩生田文科相は「早期のCBT化を図る必要があるということは、かねてから考えていた」と認めながらも、「23年度」という報道については、具体的な実施方法や準備、試行、専門的・技術的課題など、さまざまな検討を行ったうえで、年度を切らずに早期実現を図りたい考えを示しました。

萩生田文科相も言及していたように、全面CBT化にはGIGAスクール構想の実現が不可欠です。同構想は、2023年度までに(1)希望する全校に校内LANを整備(2)児童生徒1人1台環境の整備……などを行う目標を掲げ、国公私立を通じて補助を行うものです。19年度補正予算に2,318億円を計上。20年度予算案にも関連予算を盛り込んでいます。

公立学校に関しては、既に2018年度から5か年で毎年1,805億円を措置する計画が進行しているのですが、使い道が限定されない地方交付税のため、自治体が橋や道路などのインフラ整備を優先したいなどと判断すれば、予算が付かないことになります。そのため、都道府県や市区町村によって整備状況に大きな差が開いたままになっています。同構想は、そうした差を国家プロジェクトとして一気に解消しようというものです。

学習で「普段使い」求める新指導要領

CBTといえば、経済協力開発機構(OECD)が3年ごとに実施するPISA(生徒の学習到達度調査)は、2015年調査からCBT方式に移行しています。18年調査で中心分野となった読解力も、デジタル時代に対応した定義変更と出題が行われ、それが結果的に日本の順位を押し下げた一因ともなりました。

新指導要領における情報活用能力育成の目玉は、小学校にもプログラミング教育を必修化することだけではありません。総則に「各学校において、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図ること」と明記されるとともに、「コンピュータで文字を入力するなどの学習の基盤として必要となる情報手段の基本的な操作を習得するための学習活動」も行うよう求めています。これに対応して新年度から発行される小学校教科書のうち9割(現在は2割)で学習者用デジタル教科書も発行されます。

ICT機器を駆使して仕事や社会生活を営むのは今や当たり前で、人工知能(AI)時代にはますます不可欠となります。まさに「令和の時代のスタンダード」(GIGAスクール構想の説明資料)として、学校でも「普段使い」を進めたいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※萩生田光一文部科学大臣記者会見録(2020年1月31日)
https://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/mext_00029.html

※GIGAスクール構想
https://www.mext.go.jp/a_menu/other/index_00001.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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