高2の授業、依然つまらない? 意識付け課題

新しい学習指導要領が小学校から順次、全面実施に入るのと同時に、本格的な大学入試改革が始まる「2020年改革」が、目前に迫っています。
中央教育審議会も、初等中等教育の総合的な見直しの中で、高校改革についても検討することにしています。そうした中、肝心の高校生をめぐって、心配なデータが公表されました。

勉強も「しない」広がる

国の「21世紀出生児縦断調査」は、21世紀に入ってから生まれた子どもを継続的に観察する、ユニークな調査です。現在、2001年出生児と2010年出生児の二つの調査が進行しており、このうち2001年出生児に関しては高校生になって以降、文部科学省が厚生労働省から調査を引き継ぎました。最新の18年調査では、高校2年生になりました。

「ためになると思える授業がたくさんある」と回答した割合(「とてもそう思う」「まあそう思う」の合計)は、中学1年生の時に82.4%と高く、中2で78.3%、中3で76.6%、高1でも76.9%だったのですが、高2では68.0%に落ち込みました。一方、「楽しいと思える授業がたくさんある」になると、各74.9%→70.5%→69.2%→66.3%→56.4%と、高校に入ってから落ち込みが激しくなっています。

休日に学校外(家や塾)の勉強時間を尋ねると、高2で「しない」の割合が29.9%と、高1に比べ3.6ポイント増えました。中学校では1年生16.0%→2年生17.8%→3年生10.2%でしたから、高校受験を終えた後、勉強する意欲の低下が広がっています。ただし、2時間以上勉強する割合は31.1%と、高1の時に比べ4.1ポイント上昇していますから、勉強する層としない層に二極分化している様子がうかがえます。

大学にも主体性が求められる中で

もちろん高3になれば、大学など上級学校への受験を控え、勉強時間は全体として上昇するものと見込まれます。しかし保護者の世代に比べて、えり好みしなければ大学が入りやすくなっている中、ためになると思えるような授業や、楽しい授業がないまま、勉強の意欲がそこまで高まるのか、心配になります。

現行の指導要領の下でも、(1)知識・技能(2)思考力・判断力・表現力(3)主体的に学習に取り組む態度……という「学力の3要素」を育むことになっているはずです。入試改革では、(3)を「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)」と捉え直した上で、3要素すべてを評価して入学者を選抜することになっています。また、新指導要領では、学力の3要素をさらに発展させて、どの教科・科目でも(1)知識・技能(2)思考力・判断力・表現力等(3)学びに向かう力・人間性等……という「資質・能力の三つの柱」をバランスよく育むことにしています。学力の3要素にしても資質・能力の三つの柱にしても、(3)の部分がおろそかになっては、(1)や(2)も十分に育つとは言えません。大学には入れたとしても、より主体性が求められる入学後の教育に苦労する可能性は高いでしょう。

もちろん、勉強時間が多い生徒が増えているのは、好ましい変化と言えます。しかし少子高齢化が進む中、誰一人取り残さず、社会で活躍してもらえる力を付けさせることが求められています。高校には今後、生徒の学習意欲を高める授業づくりや、勉強への動機付けに、ますます取り組んでもらいたいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※21世紀出生児縦断調査(2001年出生児) 第17回調査
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa08/21seiki/kekka/1420755.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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