広がる長期休み明けのSNS相談

長期休み明けの学校が始まる時期は、子どもたちの心身の不調が出やすい時期でもあります。誰にも相談できずつらさを感じている子どもに対して、SNSを利用した相談事業が広がりを見せています。スマートフォン(スマホ)を使って利用しやすい反面、文字によるやりとりの難しさもあります。
国は自治体がSNS相談事業を実施するに当たり、支援や考え方を明らかにしています。

昨年は30自治体で1万件

長い休みのあとは環境の変化が大きいので、子どもたちは生活リズムを取り戻すのに時間が掛かります。勉強の悩みや友達関係などから、学校に行くのが「不安だ」「つらい」と感じ、新学期前から大きなストレスを抱えてしまうケースも少なくありません。

文部科学省は2018年度より、都道府県や指定都市などがSNS等を活用した相談事業体制を整えるために補助事業を開始。2018年4月から12月までの間に30自治体(19都道府県、8指定都市、3市町村)が民間事業者に委託してSNS相談を実施し、計1万件以上の相談が寄せられました。

主な対象は中学生・高校生で、実施時期は8月下旬から9月上旬、12月下旬から1月上旬など、長期休業明けを挟む期間を設定している自治体が多くありました。受付時間は夕方から夜9時までなど、スマホなどを利用して相談しやすい時間帯に設定されました。
実施あとのまとめによると、1件あたりの対応時間は、10~30分未満が23%、30~60分未満が最多の26%を占めました。60~90分未満は18%です。
相談内容は、友人関係22%、学業・進路10%、いじめ問題10%となっています。その他、心身の健康・保健、教職員との関係、家庭環境、恋愛に関する悩みなど、相談内容は多岐にわたっています。

昨年度の取り組みを受けて、文科省の専門家会議は相談体制を構築する際の「考え方」をまとめ、▽現時点では児童生徒のみを対象とする▽プライバシーが確実に守られることを示す▽長期休業明け前、入試時期前後や日曜日など気持ちが落ち込みやすい時期に実施する▽生命に関わる緊急時には学校や関係機関と情報共有する……などを示しました。

相談しやすさの反面、配慮も必要

国がこうした対策を取るのには、理由があります。2019年版自殺対策白書によると、15~34歳の死因の1位は自殺となっており、これはG7の中でも日本だけとなっています。人口10万人あたりの自殺者数を示す「自殺死亡率」は全体が減少傾向にあるのに対して、10代だけが横ばいで推移しており、対策は待ったなしの深刻な状況にあります。

厚労省でも、今年3月にSNS相談事業の対応ガイドラインをまとめています。利用者が相談しやすい強みがある反面、文字だけのやりとりとなるので、相手の状況を把握するのに時間が掛かるなどの弱みもあるとして、相談業務の経験者であっても、新たに研修を行うことを呼び掛けています。

冒頭で紹介した文科省によるSNS相談の補助事業は今年度も継続されており、この夏から相談窓口を開設する自治体もあります。既にお子さんが学校から相談窓口のQRコードをもらっているかもしれません。お住まいの地域の教育委員会ホームページや広報誌などに掲載されることも多いようですので、確認してみるとよいでしょう。

(筆者:長尾康子)

※文部科学省 SNS等を活用した相談体制の構築に関する当面の考え方(最終報告)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/131/houkoku/1404563.htm

※厚生労働省 自殺対策におけるSNS相談事業(チャット・スマホアプリ等を活用した文字による相談事業)ガイドラインの公表について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04228.html

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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