AI時代に必要な学習とは?

人工知能(AI)の活用が企業などでも広がりつつある中、政府の「統合イノベーション戦略推進会議」が3月末、国の「AI戦略 2019」(有識者提案)をまとめました。今夏にも政府として正式決定したい考えです。特に、具体的な取り組みの第一に「教育改革」を挙げているのが注目されます。
これからの子どもたちが社会に出るころには、AIを使いこなして仕事をするだけでなく、山積する社会や世界の課題解決に貢献することも求められます。学校時代に、どのような学習が求められるのでしょうか。

全高校生が理数・データの基礎を習得

AI戦略案では、「人間尊重」「多様性」「持続可能」という三つの理念を掲げ、人類史上5番目の新しい社会である「Society(ソサエティー)5.0」を実現することで、世界に貢献すると同時に、課題先進国と言われる日本の課題も克服し、産業競争力も向上させることを目指しています。

戦略目標も(1)人材(2)産業競争力(3)技術体系(4)国際……の順で設定していますから、何より人材育成の重要性がうかがえます。しかも「『未来への基盤づくり』としての教育改革と研究開発体制の再構築は、本戦略の中での最重要項目」だというのです。
教育改革の大目標として、数理・データサイエンス・AIをデジタル社会の「読み・書き・そろばん」的な基礎知識だとして、持続可能な社会の創り手として必要な力を国民に育むため、▽すべての高校卒業生が理数素養や基本的情報知識を習得▽文理を問わずすべての大学・高専生が初級レベルの数理・データサイエンス・AIを習得▽小中学校で理数分野の世界トップレベルを維持し、国際的に低い理数分野への興味関心を向上……といった具体目標を挙げています。

保護者世代も含め、学校時代には理数系の得意・不得意で「文系」「理系」にわかれていった現状は否定できないでしょう。しかし、これからの社会では、そうも言ってはいられません。人文・社会科学系の知識も含めて、バランスよく学ぶことがAI時代には求められます。

新指導要領でも既に対応盛り込む

新しい学習指導要領では、既にそんな時代への備えを盛り込んでいます。
2020年度から新指導要領が全面実施となる小学校では、プログラミング教育が必修化されます。ここでは小学生にふさわしく、コンピュータがプログラムによって動き、社会で活用されていることを体験します。そうした基礎をもとに、中学校の技術や、高校の新しい必履修科目「情報Ⅰ」などで情報活用能力を育成するとともに、数学では、必要なデータを収集・分析して課題を解決するための「統計教育」を充実します。
また、高校では総合的な学習の時間(「総合的な探究の時間」と改称)の理数版として理科と数学にまたがる選択科目「理数探究」も新設し、大学入学共通テストの出題科目にもしたい考えです。

改訂の基になった中央教育審議会の答申(2016年12月)でも、AIがいかに進化しようとも、人間の強みを発揮して多様な他者と協働して答えのない課題に取り組むことができるようにすることの重要性を強調しています。

数理・データサイエンス・AIの学習を現代の読み・書き・そろばんにするといっても、単に「理系」の強化ではありません。AIに仕事を奪われるのではなく、誰もがAIを使いこなせる「人間の学習」(中教審答申)を目指しているのです。

(筆者:渡辺敦司)

※統合イノベーション戦略推進会議(第4回)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tougou-innovation/dai4/gijisidai.html

※学習指導要領 改訂のポイント
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1384661.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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