テスト問題、みんなとなら解ける!?

テストの問題は、1人で解くより、みんなとなら解ける……こう書くと、「何をばかなことを。テストは1人で解くのが当たり前じゃないか」と笑われるかもしれません。しかし実はここに、テストとは何のために行うのか、テストを通してどういう力を育てたいのか、という深い問いが含まれています。

話し合いで高いレベルの理解に

東京大学の白水(しろうず)始教授らの研究グループは、全国学力・学習状況調査(以下、全国学力調査)で出題された算数のB問題(主に活用)のうち、正答率が低かった三つの問題(2007、12、14の各年度)を、関東から四国まで5校の小学6年生110人に解いてもらう調査を行いました。
たとえば「平行四辺形問題」(2007年度)は、A問題(主に知識)のように抽象的な平行四辺形の面積なら正解できるのに、具体的な土地に置き換えたとたんにわからなくなる例として当時、報道などでも大きく取り上げられたものです。

調査では、まず1人で問題を解いてもらいました。実際の全国学力調査より出題数が少ないこともあって、平均正答率は高くなりました。その後、2人ペアになって再び問題を解いてもらいました。2人で、しかも2度目の解答ですから当然、平均正答率は1人の時より高くなります。
その後、一人ひとりに解き方を説明してもらい、高いレベルの理解によって正答したかどうかをチェックしました。すると、低いレベルの理解で結果的に正解したペアもあれば、話し合うことで高いレベルの理解に到達して正解できたペアもありました。各ペアの会話を全部録音して解析したところ、1人で正解できた子も、正解できなかった子との対話によって高いレベルに到達したケースや、正解できなかった2人が対話によって一緒に高いレベルに至ったケースがみられました。

こう紹介しても、「何だ、当たり前じゃないか」と思われるかもしれません。しかし、ここに新しい学習指導要領(2020年度の小学校から順次、全面実施)、さらに言えば、2020年度から始まる大学入試改革をはじめとした「高大接続改革」という、大きな教育改革に関するヒントが隠されています。

主体的・対話的で「深い」学びへ

新指導要領は、各教科や特別活動などで「主体的・対話的で深い学び(AL)」を行うことによって「資質・能力の三つの柱」(1)知識・技能(2)思考力・判断力・表現力等(3)学びに向かう力・人間性等)をバランスよく育むことを目指しています。
そうして小・中・高校で育んだ資質・能力を、大学教育でのアクティブ・ラーニング(「能動的学修」と訳される)によって更に伸ばし、社会に出た時にどんな課題にも対応できる「汎用的能力」にまで高め、活躍してもらおうというのが、高大接続改革の狙いです。
 これからの先行き不透明な社会では、必ずしも正解のない課題を発見し、取り得るべき最適の解を見つけ、実行していくことが不可欠になります。1人で解決できなければ、時には文化的背景が全然違う人とも協力しながら、解決策を探っていく必要があります。

全国学力調査のB問題にしても、そうした将来に結び付く学力を問いたいという意図から出題されてきました。さまざまな学習課題にクラスで協力しながら「主体的」で「対話的」に取り組むことを通して「深い学び」へと至るような授業や学習が有効であることを、同グループの研究が教えてくれていると言えるでしょう。

(筆者:渡辺敦司)

※協調的問題解決能力をいかに評価するか-協調問題解決過程の対話データを用いた横断分析-
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcss/24/4/24_494/_pdf/-char/ja

※新学習指導要領(文部科学省ホームページ)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/index.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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