学力向上のカギも握る!?「自己調整力」

2020年度から小学校で新しい学習指導要領が全面実施になるのを前に、中央教育審議会の教育課程部会は、新しい学習評価の在り方について報告をまとめました。その中で、今後の教育で注目されそうなキーワードが浮上してきました。「自己調整力」です。どうやら、学力をアップさせるカギも握っているようです。

4観点から3観点に変更された「態度」の評価で

指導要領の改訂に合わせて文部科学省は、指導要録に記載される事項や参考様式、評価の観点などを通知しています。指導要録は、通知表や調査書などの原簿として、各学校に作成が義務付けられています。
学習評価をめぐっては、かつては学級や集団の中での位置を表す「相対評価」(集団に準拠した評価)が行われていましたが、2004年度からは「目標に準拠した評価」に代わっています。かつては「絶対評価」とも呼ばれていましたが、文科省は今、絶対評価という言葉を使っていません。むしろ「観点別評価」と言ったほうが、なじみがあるかもしれません。
現行指導要領までの観点別評価では、「関心・意欲・態度」「思考・判断・表現」「技能」「知識・理解」の4観点が設定されていました。観点別に学習状況をA・B・Cの3段階で評価し、それをもとに教科の評定を付けることにしています。

一方、新しい指導要領では、学校教育法で規定する「学力の3要素」を拡張させた「資質・能力の三つの柱」(知識・技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等)が設定されたことに伴い、学習評価も、これに合わせて(1)知識・技能 (2)思考・判断・表現 (3)主体的に学習に取り組む態度——の3観点に整理し直すことにしました。
このうち(3)は「学力の3要素」の3番目と同じものです。「学びに向かう力・人間性等」には、感性や思いやりなど、評定で評価することはなじまないものが含まれるため、評価の観点としては「態度」に限ることにしました。

もう一人の自分、「メタ認知」

そうはいっても、具体的にどう評価すればよいのか、先生方も戸惑います。そこでWGの報告書(議論の整理)では、評価の仕方を詳しく説明しています。報告書では、主体的に学習に取り組む態度を、(1)粘り強く学習に取り組む態度(粘り強さ)(2)自らの学習を調整しようという態度(自己調整力)……という二つの側面に分けています。

これらは、心理学で言う「メタ認知」と関わっています。メタ(高次の)認知とは難しい言葉ですが、報告書では「自己の感情や行動を統制する能力、自らの思考の過程等を客観的に捉える力」としています。自分の姿をもう一人の自分が外から眺める、あるいは、鳥が空中から地形を俯瞰ふかんする(見渡す)イメージだと言えばわかりやすいでしょうか。メタ認知は最近、ビジネス界などでも注目のキーワードになっています。
報告書では、学習の調整方法は人によって違い、一律に指導することのないように注意を促しています。結局、学習を通して、それぞれが身に付けていく必要があります。

何がわかって何がわからないのか、どうしたらできるようになるかまで自分を客観視でき、それに向かって感情や行動をコントロールできる自己調整力を身に付けてこそ、知識・技能や思考力・判断力・表現力等に関わる資質・能力を伸ばすことができるのです。

(筆者:渡辺敦司)

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プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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