「大学入学共通テスト」に向けた対策

現在2020年に向けて大きな教育改革が進行しています。この教育改革によって求められる能力が変わり、教育内容が変わり、大学入試が変わります。大学入試センターはその一環として、この11月に、2020年から大学入試センター試験に替わって実施される「大学入学共通テスト」のプレテストを実施しました。現在の高校1年生からはこの「大学入学共通テスト」を受験することになります。大学入学共通テストと大学入試センター試験とは何が異なり、また、どんな学習を心がけなければならないのでしょうか。今回のプレテストは、2020年から実施される本番テストの方向性を示すものであると考えられるため、プレテストの内容をもとに、いくつかの観点に絞って考えてみたいと思います。

Q1. プレテスト内容の特徴を教えてください。

A1.
全教科を通じて知識そのものを問う出題が大きく減り、問題文をよく読み取らないと解答できない問題が増えました。問題文は、日常的・社会的な題材が増え、資料類、データ、会話文等種々のものが扱われるようになっています。知識を問うのでは無く、活用する力を問うということが鮮明になりました。

【国語】: ① 現代文・古典を問わず、一つの大問の中に複数の文章や資料、会話文等が含まれており、それらの統合的な解釈が求められた。
② 問題数が1大問増え、第一問が120字程度までの記述式解答。
③ 文学的文章では小説だけではなく、詩やエッセイ等幅広い素材。

【数学】:① 全体的に文章量が多く読解力が必要。本文中に定理や公式を与えている問題もあり、覚えることよりも活用することに重点。従来より必要な計算量は減少。
② 日常的・社会的な題材と説明文・課題提示文から、自分で数学的性質を読み取る必要のある問題が出題。

【英語】:① リーディングとリスニングの配点が各100点。リスニングのウエイトが増加。
② リーディングは、設問文が全て英語。語法・文法の単独問題はなく、読解問題の素材は日常的なものも含めて幅広く扱われた。
③ リスニングは、聞き取りと同時に、問題冊子から読み取らなければならない情報量も多く、素早い処理力が求められた。

Q2. 共通テストの設問を解くためにはどのような力が必要なのでしょうか。

【国語】:① 第一問の記述式設問は、本文・設問文と同時に、与えられた条件文を正確に把握することが重要。その条件に当てはまるように、本文中から情報を取り出して解答を構成する力が問われます。
② 一つの大問に複数の文章や資料等があり、それらを比較検討して、統合的に解釈する力が重要。日常扱われる図表・規則条文等の読み取りや解釈に慣れておく必要があります。

【数学】:① 厳密な論理性より「設問を解くひらめきや能率的な処理能力」が求められるものが含まれます。文章量が多くなっており、設問が論理性をどこまでを求めているか素早く読み取ることが必要になります。
② 日常的な題材を使った課題に対して、適切な数学的モデルを適用する力が求められます。一般的な問題集には少ないこのタイプの問題にも慣れておく必要があります。

【英語】:① リーディングでは論理的な思考力が重視されます。「事実と意見の区別」「作者の意図を考える」ことなどが求められます。これらは国語でも重視されますので日頃から意識しておきたいところです。
② リスニングでは、アメリカ英語だけでなくイギリス英語や英語圏以外の人の英語も使われるようになりました。また後半はスクリプトが1回しか読まれません。配点が上がっただけに対策が必要です。

Q3. なぜ求められる学力が変わるのでしょうか。

A3. 各教科に共通して言えることですが、実際に社会で必要な力に近いものが求められるようになったといえるでしょう。現代は変化が激しく次々に新しい知識・技能が必要になる時代です。知識をたくさんもっているかどうかよりも、課題を解決するために必要な知識を活用できるかどうかが重視されるようになりました。

Q4. 共通テストに対応するためにはどのような学習が重要でしょうか。

A4. プレテストをみると、全教科を通じて読まなければならない文章や図表・資料の量が増え、テーマや資料の種類も多様になっています。様々な素材を統合的・論理的に早く正しく読み取らなければなりません。

そのためには、様々な文章を読んだり書いたりする際の作法として、読むときに発揮する論理的な思考スキル、書くときに発揮する論理的な思考スキルを身につける必要があります。つまり、「課題をとらえ」「主張をとらえ」「根拠をとらえる」方法を学ぶことです。

はじめから難しい文章ではなく、平易な文章から始めて、徐々に文章のレベルを上げて読解・表現できるできるようにすることが効果的です。共通テスト対策だけでなく、「なぜか国語が苦手でどうすれば点数が上がるかがわからない」「どの教科でも問題が難しくなると何をすればよいかわからなくなる」という人は、ぜひ試してみてください。


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。

プロフィール


鎌田恵太郎

1986年福武書店(現ベネッセコーポレーション)入社。進研模試副編集長、学力分析システム(現スタディーサポート)開発責任者を経て、2003年ベネッセ教育総研主任研究員、2005年ベネッセ教育研究開発研究センター主席研究員、2013年ベネッセ教育総合研究所アセスメント研究開発室室長/主席研究員。

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