中学校で「英語を楽しく学び続ける」ためには?

前回は、なぜ中学校で英語が苦手になってしまうのか、をご紹介しました。今回は中学校で英語を楽しく学び続けるにはどうしたらよいのか、についてご紹介します。

中学校の英語も変わりつつある

2021年度からスタートする中学校の新しい学習指導要領では、英語の「授業は英語で行うことを基本とする」となり、保護者の方が受けられた授業のように、単語や文法を正しく習得することだけを中心にするのではなく、「聞く「読む」「話す」「書く」の4技能の力をバランスよく伸ばしていく方向に変わりつつあります。単語や文法は、その4技能を使ったコミュニケーションの中で使いながら習得を高めていくことになります。先生と生徒がやりとりするなど、「聞く」「話す」といったコミュニケーションもこれまで以上に重視されるようになるので、小学校から中学校への接続がしやすくなります。今回の教育改革では、大学入試や高校入試でも「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能の力を問うものに変わる方向に進んでいますが、中学の定期テストも、ペーパーテストで「読む」「書く」力を評価するだけでなく、スピーキングテストなどで、「聞く」「話す」力も評価するようになります。

「聞く」「読む」「話す」「書く」のサイクルで英語を学ぶ

小学校で楽しく学んだ英語を、うまく中学校の英語学習につなげ、英語4技能の力をつけていくためには、「聞く」→「読む」→「話す」→「書く」の手順で学んでいくことが有効です。例えば、 ‘ I like apples.’という表現でどのように行うとよいか紹介してみましょう。

①「聞く」
中学校でもまずは ‘I like apples.’ という音をたくさん聞きます。中学校の授業で聞く量が少ないな、と感じたら、学校などで販売される教科書本文のCDを何度も聞くことをお薦めします。すでにお子さんが小学校の外国語活動でたくさん行ってきたことですが、まずは文字を見ないで「聞く」ことから始めることが重要です。その際、何度も音を聞きながら、その音声と意味を頭の中で結びつけます。

②「読む」
次に音を聞きながら、英語の文字を目で追います。ここで英語の音と文字を一致させます。音を聞きながら、文字を鉛筆や指で追っていきます。文字が読めないという場合の多くは、その音と文字につなげることが不十分だと考えられます。この、音と文字の一致を繰り返したあとは、音なしで文字だけから音を再生して読みます。その時、「りんごが好き」という意味を思い浮かべながら、何度も「声に出して」音読します。ただ声に出して読むだけではなく、意味を考えながら文字をしっかり見て音読することが大切です。そうすると、applesのsをしっかり目で確認し、音にも出せるようになります。ここで「正しさ」を身につけることができます。小学校外国語活動で英語の音の意味がわかって話すことができる生徒が、中学校で読めないと言われる場合、この「音と文字の一致」と「意味を考えながら音読する」ことが十分行われていないことが多くあると言われています。

③「話す」
意味を考えながら十分に音読したあとに、「りんごが好き」と心をこめて‘ I like apples.’と話してみます。だれか聞いてくれる相手がいる場合は、その人に伝えてみるのも良いでしょう。音読を十分行ったあと、何も見ずに「話す」ことで単語や文法を正しく自分のものにすることができるようになります。また、applesの部分を他の好きなものに変えて話してみるのもよいでしょう。使える単語の幅が広がります。

④「書く」
最後に書きます。音の意味がわかり、その音と文字を一致させて読めるようになる。たくさん音読した英文を気持ちを込めて正しく話す。そのあとにその英文を書きます。書く時はまず見本の文または一部単語を入れ替えたものをそのまま書き写します。書き写す時には、英文のルール(文頭を大文字にする、単語の間を空ける、文末にピリオドやクエスチョンマークをつけるなど)にも注意します。書き写した英文を、もとの英文と見比べて確認します。書くことと見比べることで、間違いや気を付けるべきポイントに気づき、単語や文法、文を書く際のルールをさらに正しく身につけられるようになります。この書き写しをたくさんすることで、書きたい英文を思い出して書いたり、一部の単語を変えて違う英文を書けるようになります。

中学校では、単語や文法を取り出して正しく理解したり、練習するようなことも、もちろん行われますが、最終的には、「聞く」「読む」「話す」「書く」のコミュニケーションの中で使えるようにすることを目指しています。インプット(「聞く」「読む」)をして、それをアウトプット(「話す」「書く」)するサイクルで繰り返し学習していくことは、同じ単語や文法を何度も使って定着を高める意味でも、4技能それぞれの力を高める上でも有効な学習です。新しく学ぶ単語や文法は、まず「聞く」「読む」「話す」「書く」の順番で学習しますが、ある程度使えるようになったものは、学習目標や必要性に応じて4技能の順番は関係なく、バランスよくどんどん使っていくとよいでしょう。小学校で学んだ英語を、中学校にも楽しく学び続けるためにも、是非実践してほしいと思います。

プロフィール


加藤由美子

1987年(株)ベネッセコーポレーション入社。1997・98年Berlitz・Singapore学校責任者として駐在。帰国後はベネッセの英語教育事業開発を担当。
研究部門異動後は、ECF(幼児から成人まで一貫した英語教育の理論的枠組み)開発やARCLE(ベネッセ教育総合研究所が運営する英語教育研究会)の立ち上げ、小中高校生の英語学習実態調査、中高の英語指導調査、英語力を上げた学校の研究などに携わる。2019年度からは言語教育研究にも携わる。文部科学省「国際バカロレアに関する国内推進体制の整備」事業審査委員(2021年)。

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