中学校でなぜ「英語が苦手」になるの?

今の保護者世代の多くが、英語に出合い、学習をスタートするのは中学1年生の春でした。筆者も中学校に進学し、初めての英語の授業に、わくわくドキドキしたり、アルファベットの文字を筆記体で書くのが嬉しかったりしたことを懐かしく思い出します。
しかし、今は、小学校でも高学年で「外国語活動」が行われています。そのため、わくわくドキドキ感は以前より少なくなった一方で、中学校での英語学習がスムーズにいくというイメージがあるかもしれませんが、実はそうでもありません。下の図はベネッセ教育総合研究所が行った「中高生の英語学習に関する実態調査2014」の結果ですが、中1の前半・後半に英語を苦手と感じるようになった生徒がたくさんいるのがわかります。そこで、お子さまが中学校でなぜ英語が苦手になるのか、中学校で英語を楽しく学び続けるにはどうしたらよいのか、を2回に分けてご紹介します。

小学校の時に「英語が好き」でも油断は禁物

小学校で行われている「外国語活動」は「聞く」「話す」が中心。英語の音声を聞いたり、先生のまねをして話したり、歌やゲームを楽しみながら英語に慣れ親しんでいきます。しかし、中学校に入ると英語にいきなりつまずいてしまう生徒が多くいるのは、小学校で学んだことを中学校の授業にうまくつなげられないことがあるからです。

一つ目ののハードルは、「文字の読み書き」です。小学校でもアルファベットの音や大文字・小文字の形に慣れ親しんだり、書き写したりしますが、外国語活動での学習の目標はそこまでなので、意外としっかりと覚えられていないことがあります。保護者の方に伺うと、「アルファベットぐらいはうちの子もできます」とおっしゃいますが、実はそうでもありません。アルファベットソングは歌っているようで、実は最後のZまできっちり言えない児童はたくさんいます。また、大文字・小文字を書き写すことはできても、「lを小文字で書いて」というように、見本なしで音だけ聞いて文字を書いてと言われるとパッと書けないこともあります。特に小文字は、中学の英語学習では単語や文を書く時に、大文字よりもたくさん書く必要がありますが、大文字よりも形が左右対称でないものが多く、また上に出るもの、下にでるものなど高さもいろいろあるため、きっちり書けるように習得するまでに時間がかかります。実際に丁寧に指導されている中学の先生から小文字には2から3倍の時間をかけるとうかがったこともあります。しかし、一般的な中学校の授業では、小学校外国語活動を行っていることもあり、アルファベットの音を聞いて、文字を思い浮かべて大文字と小文字を書き分けることなどは中学入学後、短い期間ですぐに求められるような場合も多くあります。そうなると、例えば、音を知っている「apple」などという身近な単語でも書くことにつまずいてしまうのです。

次のハードルは、「正しさ」を求められることです。小学校の外国語活動では間違いはあまり指摘されず、まずは英語を楽しく使うことを大切にします。しかし、中学では教科の知識・技能として正しく理解し、身に付けることが目標となるため、単語のスペルや文法の間違いを授業中でも指導されたり、定期テストで減点されたりします。また新しい単語や文法がどんどん出てきますから、それらを理解し、正しく覚えていくことも求められます。そうなると一気に英語が苦手になってしまうこともあるでしょう。

中学校で英語の学習につまずきをつくらず、楽しく学び続け、英語の力を伸ばすにはどうしたらよいのでしょうか。そのヒントは、「聞く」→「読む」→「話す」→「書く」の手順で学んでいくことです。
次回は、この「学び方」について、ご紹介いたします。


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。

プロフィール


加藤由美子

1987年(株)ベネッセコーポレーション入社。1997・98年Berlitz・Singapore学校責任者として駐在。帰国後はベネッセの英語教育事業開発を担当。
研究部門異動後は、ECF(幼児から成人まで一貫した英語教育の理論的枠組み)開発やARCLE(ベネッセ教育総合研究所が運営する英語教育研究会)の立ち上げ、小中高校生の英語学習実態調査、中高の英語指導調査、英語力を上げた学校の研究などに携わる。2019年度からは言語教育研究にも携わる。文部科学省「国際バカロレアに関する国内推進体制の整備」事業審査委員(2021年)。

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