ビリギャルの著者が語る 「才能の芽」を育むために保護者ができることは?

「あの人は才能があるなあ」「自分には特に才能がないから……」しばしばこんな使い方をされる「才能」という言葉。そもそも「才能」とは? 子どもの中にある才能の芽を伸ばすために、保護者ができることはなんでしょうか?
塾講師として1300人以上の子どもと向き合い、『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話』(以下『ビリギャル』)の著者でもある坪田信貴さんにうかがいました。

「才能がある」「地アタマが良い」は結果でしかない!?

『ビリギャル』は、僕の塾の生徒だったさやかちゃんという女の子が、全国偏差値30以下、学年最下位の成績から、1年間猛勉強して慶應義塾大学に現役合格したいきさつをまとめたものです。2013年にこの本を出版してから、お子さんの勉強について相談にこられる保護者の方々に、よくこんなふうにいわれるようになりました。

「さやかちゃんは、もともと才能があったんでしょう。地アタマがよかったんですよね」。僕が「はい、たしかに才能がありました」と答えると、「そりゃそうですよね」とため息をつく方が多い。「いや、あなたのお子さんもそうですよ。地アタマがいいし、ものすごく才能があります」。僕が真剣にこう付け加えると、たいていこんな答えが返ってきます。
「この子に才能なんかありませんよ。あったらこんな成績取らないでしょう」。

誰かが「東大に合格したから」「金メダルを取ったから」という理由で「才能がある」などというとき、人はその「結果」だけを見て言っています。
その結果を出すまでにどのような努力があったか何も知らなくても「才能」という言葉で片付けてしまう。

たとえばノーベル賞を受賞した人は、「子供の頃から発想が人と違っていた」「人の言うことに左右されない、自分を強く持った子だった」などと評されることが多いですよね。しかし、同じ人が罪を犯したとしたら「人の言うことを聞かず、まったく協調性がなかった」などと言われるのではないでしょうか。このように、人は結果からさかのぼって、少ない情報をつないで物語をつくってしまうものです。

「結果」を見たうえで「才能があった」と言っているだけ。結果を出す前から才能を見抜ける、「才能スカウター」をもっている人などいないと僕は考えています。

能力が磨かれて「尖った部分」が才能となる

「才能」は、「生まれつきの能力」をさす言葉ですが、「才能=能力」ではありません。
「能力」は「~する」力のこと。「立つ」力、「歩く」力、「書く」力……など、ごくシンプルなことであっても、あらゆる動詞は「能力」だといえます。成長の過程で、人は生活に必要な様々な能力を身につけているのです。
「能力」を高めていくと、人よりも飛び出した部分が出てきます。そのような部分を磨いていった“尖り”が、「才能」として認められるようになるのです。僕は才能の芽は、誰もが持っていると考えています。
では、その芽が「才能」になるには何が必要なのでしょうか。

「才能の芽」が育つ環境とは?

「才能がある」といわれている人たちに共通しているのは、「『~したい』という強い思いがあり、その人に合ったやり方を選んで努力を続けている」という点です。
こういうと、「うちの子には、特にやりたいことも好きなこともないし……」という方がいるのですが、やりたいことのない人というのはいないはずです。
小さい子を見ているとよくわかりますね。眠い、お腹がすいた、動きたい、など欲求がはっきりしていて、興味のあるものには手を伸ばします。しかし、「危ないから」「時間がないから」「役に立たないから」など、大人は様々な理由で子どもの行動を規制しがちです。

「才能」を開花させた人たちは、行動を規制されず、たくさんの失敗をして育っているケースが多いようです。
たとえば非常にイノベイティブな仕事をしているあるベンチャー企業の社長さんは、子供時代、地面に落ちたおにぎりを食べても、親御さんから止められなかったそうです。「不味いし、お腹を壊したらそれでやめるだろう」と(笑)。命に関わること以外は、あらゆる失敗をさせてくれたというのです。
大人がよかれと思って、「危ないからやめなさい」「そんなことは役に立たないから勉強しなさい」などと行動を規制することは、結果的にその子らしい興味や意欲を否定し、才能の芽を枯らしてしまうことにつながります。
しかし、「失敗させない」ことより、「失敗と向き合う」ことから学べるもののほうがずっと大きいのです。

僕にも4歳の娘がいるのですが、「命に関わること以外は止めない」ようにしています。
先日、クリスタルガラスのお店で、娘が「わあ、きれい!」と目を輝かせ、数万円のグラスに触れ始めたことがありました。ものすごくひやひやしましたが、店員さんに「すみません、娘が興味を持っているので触らせてやってください。万が一壊したら全部弁償しますから」と断って、したいようにさせておきました。結局何事もなく店を出られてホッとはしましたが、もし壊してしまったとしても、それは彼女にとってかけがえのない体験になったはずだと思っています。

このような話をすると、「では何でも肯定してOKといえばいいのですか」「それでは教育ができないのでは」という質問を受けることがあります。それについて私の答えは、「子どもの行動を規制せずに、子どもの伸びたい方向への成長を促すには『自分で気づかせる』ということが大切だ」ということです。そのための方法については、次回お話しします。

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幻冬舎/坪田 信貴 (著) 1,620円(税込)

プロフィール


坪田 信貴

坪田塾塾長。心理学を駆使した学習法により、これまでに1300人以上の子どもたちを「子別指導」し、偏差値を上げてきた。起業家としての顔を持ち、人材育成、マネージャー研修なども行う。テレビ、ラジオ、講演会で活躍中。著書に「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学現役合格した話」(KADOKAWA)など多数。最新刊は10月に発行された「『人に迷惑をかけるな』と言ってはいけない」(SBクリエイティブ)。

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