中学生の英語コミュニケーション能力を伸ばす「MAP」

英語にたくさん触れ(聞く・読む)、英語をたくさん使う(話す・書く)ことは、英語コミュニケーション能力を伸ばすために必要です。しかし、ただ単に触れたり、使ったりする量を増やすだけでは不十分です。ではどうすればよいのでしょうか。田中茂範先生(慶応義塾大学名誉教授)は、次の3つの要素を、英語にたくさん触れる・使う際の内容に取り入れることが重要だと述べています。(*1)
(*1)ARCLE新企画リレーコラム「第1回マイイングリッシュの育成」2017年
http://www.arcle.jp/note/2017/0021.html

eaningful(ミーニングフル)
子どもにとって理解可能であり、面白いと感じ、それをやる価値があると実感する
Authentic(オーセンティック)
子どもが本物と感じる(リアリティを感じる)
Personal(パーソナル)
子どもが自分事として、自分の英語(my English)を構築することに役立つと感じる

英語コミュニケーション能力を伸ばすために必要な「MAP」

「学校の授業でmeaningfulで、authenticで、personal(MAP)な活動を提供すれば、教室は英語を自然な形で使う場に変わる。そして、そういう場づくりが、英語を使うことに対する必要性を生み出す」と田中先生は述べています。幼児や小学生の英語の学びには、実物や物語など、MAPを取り入れやすい教材を使うことができます。一方で、中学生以降の英語学習では、学習すべき単語や文法が教科書の中で提示されており、MAPなしでそれらを理解し、練習し、覚えるものとして指導されてしまいがちです。しかし、それでは中学生の頭や心はなかなか動きません。

では、どのように中学生の英語学習にMAPを取り入れていけばよいのでしょうか。長年、公立中学校で英語指導をされてきた加藤京子先生(兵庫県立北条高校)の指導事例からご紹介します。(*2)たとえば、中学1年生初期であれば、「‘I want’を使って家で欲しいものを20個英語で書こう」というようなものから始めてみてはいかがでしょうか。これなら、知っている単語や文法が少ない中学1年生でも実行できます。10個ぐらいなら書けたとしても、さすがに20個思い浮かべ、書くのは難しいと思います。それでも「20個を考え尽くして書く」という内容と量の組み合わせが絶妙な課題設定だと思います。自分の欲しいものならば、すぐに思いつかなくても考え続ける楽しさがあります。リアリティを感じ(authentic)、面白く、やる意味があると思い(meaningful)、自分事(personal)として、英語をたくさん書くこの活動は、英語コミュニケーション能力を高める条件の「量(たくさん)」と「質(MAP)」の両方を兼ね備えています。これを行う場合に、まず声に出して言ってから順番に書いていくと「話すこと」「書くこと」の両方の学習になります。小学生の場合であれば「20個、声に出して言ってみる」だけでも十分に「話すこと」の練習になります。これなら、少しの工夫で家庭でも親子でも楽しく実践できると思います。小中学生のお子さんだけでなく、家族みんなで欲しいものを英語で言ってみてもよいでしょう。
(*2)上智大学・ベネッセ英語教育シンポジウム2014
http://www.arcle.jp/report/2014/0002.html

子どもの英語コミュニケーション能力を伸ばすために大切なこと

文法や単語が身についていないと、英語を使うこと(聞く・読む・話す・書く)はできません。単語や文法などの基本的な「知識・技能」を習得するための練習はもちろん必要です。それはベネッセ教育総合研究所が行っている「英語コミュニケーション能力を伸ばしている学校の研究」からも明らかになっています。しかし、練習を練習で終わらせるのではなく、また、練習が終わってから実践に移すのでもなく、学習しつつある「知識・技能」を使いたいという思いを持ち、「聞く・読む・話す・書く」の活動の中で「知識・技能」を定着させながら、実践できる力を伸ばしていくことが求められています。そうした活動が、子どもが自らの頭と心を動かす真の学びになるのだと思います。子どもたちは、正解が一つではないこれからの社会で、自ら考え、判断し、行動に移していくことが求められます。それを、たくましく、しなかやに、そして楽しみながら行ってくれることを応援したいと思います。その時に、MAP(meaningful, authentic, personal)は保護者の皆さんにとって、大切なMAP(地図)、すなわち英語学習のあるべき方向性にヒントをくれるものになると思います。また、MAPは、英語とのいい出合い、英語で体験することや学ぶことの喜びを子どもたちに与え、長い時間と努力を必要とする英語学習において、学び続けるエネルギーの源になってくれると思います。

プロフィール


加藤由美子

1987年(株)ベネッセコーポレーション入社。1997・98年Berlitz・Singapore学校責任者として駐在。帰国後はベネッセの英語教育事業開発を担当。
研究部門異動後は、ECF(幼児から成人まで一貫した英語教育の理論的枠組み)開発やARCLE(ベネッセ教育総合研究所が運営する英語教育研究会)の立ち上げ、小中高校生の英語学習実態調査、中高の英語指導調査、英語力を上げた学校の研究などに携わる。2019年度からは言語教育研究にも携わる。文部科学省「国際バカロレアに関する国内推進体制の整備」事業審査委員(2021年)。

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