減らせるか放課後児童クラブの待機児童
子どもが小学校に入学する時に共働き家庭が直面する悩みの一つに、放課後の子どもの預け先をどうするか・・・という問題があります。
厚生労働省と文部科学省はこのほど、放課後児童クラブ(学童クラブ)の整備を充実させる計画を公表しました。目標値を達成し、学童保育の待機児童解消につながるか、注目が集まっています。
2023年に152万人の受け入れ目指す
保育所を卒園したあと、小学校に上がったら子どもをどこに預けるかという問題は、共働き家庭の「小1の壁」と言われています。その解消のために2014年、厚労省と文科省は「放課後子ども総合プラン」を策定しました。
学校で放課後の遊びの場を提供する文科省の「放課後子供教室」と、厚労省が所管する「放課後児童クラブ」を一体的に実施し、2019年度末までに約30万人分を整備し120万人分を確保するとしていました。
ですが、2017年の放課後児童クラブの待機児童数は1万7,170人で、子どもの居場所が十分に確保されたとは言えません。今後、女性の就業率の増加で学童クラブのニーズはさらに高まるとみられているため、2019年から向こう5か年の新たなプランが策定されました。それが今年9月に公表された「新・放課後子ども総合プラン」です。
新プランの目標は放課後児童クラブを2023年度末までに計約30万人分整備して待機児童を解消し、152万人が利用できるようにすることです。新たに整備する場合は、学校の使われていない余裕教室や図書館などの施設を「徹底的に」活用し、放課後児童クラブの8割を小学校内で実施することを目指すとしています。
求められる縦割り超えた連携
新たにできる放課後児童クラブが小学校内に設置されれば、子どもは放課後もそのまま学校にいられるため、保護者は安心な面もありますし、自治体にとっては会場確保の心配がなくなります。しかし「放課後子供教室」と「放課後児童クラブ」を一体的に実施しているのは現在、全国で4,500カ所余りと、当初の1万か所という目標には届いていません。
なぜ一体化が進まないのか、その理由として▽人材の確保が困難▽小学校内に余裕教室などの場所がない▽市町村の教育委員会と福祉部局などの理解や連絡調整が困難、などが指摘されています。
もともと放課後児童クラブは、学童保育として1940年代に広まり、98年に制度化された歴史があります。運営主体は行政や社会福祉法人やNPO法人など多様化が進んでいます。目的は「子どもたちの生活や遊びを支援する」といっても内容には幅があるのが現状で、厚労省は質の確保を図るため2015年に「運営指針」を出しています。
一方、「放課後子供教室」は2007年度から始まった新しい制度で、放課後や土曜日の教育環境づくりを目的として、学習支援やスポーツ、工作や文化活動などのプログラムを提供するもので、預かる時間も自治体ごとに異なります。
経緯や仕組みが異なる両者が一体的に放課後児童クラブを運営するために、新プランでは両者をつなぐコーディネーターの活用や学習・体験プログラムの共通化を求めています。
「子どもの主体性を尊重し、健全な育成を図る放課後児童クラブの役割を徹底」すると念押ししているように、一体化を急ぐあまり放課後児童クラブで過ごす子どもが置き去りにならないよう、福祉と教育の「縦割り行政」の壁を越えた連携が求められています。
(筆者:長尾康子)
厚生労働省「新・放課後子ども総合プラン」の策定について
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000212051_00002.html
文部科学省「新・放課後子ども総合プラン」の策定について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/09/1409159.htm