心理カウンセラーの国家資格が誕生

「公認心理師」というカウンセリングの資格ができたことをご存じでしょうか。日本で初めての心理職の国家資格として注目を集めています。9月には実務従事者などを対象に第1回の国家試験が実施されます。よりよい相談体制ができるだけでなく、スクールカウンセラー(SC) などの待遇面での改善が期待されます。既に大学でも、養成に向けたカリキュラムを開始しています。

2018年に第1回試験

公認心理師の資格は、2017年に公認心理師法が施行されたことにより創設されました。これまで心理職の資格は「臨床心理士」「認定心理士」「産業カウンセラー」「学校心理士」などの民間資格のみでした。それぞれ認定の基準や試験のあり方などはさまざまで、一定のレベルを保つため国家資格化が検討されてきました。
心のケアを必要とする人に対して、心理状態の観察や分析、相談や助言、援助をする専門職として初めての国家資格です。学校や児童相談所、病院など、同法施行規則で定められた施設で既に実務経験がある人などを対象にした第1回の試験が今年9月に行われ、11月30日に合格者が発表されます。合格者には公認心理師登録証が交付されます。
今回の資格創設により、相談をする人がよりよい支援を受けられる環境がさらに整備されると考えられます。

心理系の大学も次々対応

厚生労働省と文部科学省は公認心理師養成のカリキュラムを示し、心理系の学科やコースのある大学も2018年度から対応を始めています。基本的には学部だけでなく大学院まで学ぶ必要があるため、公認心理師養成のカリキュラムで学ぶ人が資格を得て現場に出るのは、数年先のことです。
その間は、既に実務経験のある人や、大学院で学んでいる人が「公認心理師試験」を受けて資格を取得する経過措置が取られます。9月の第1回試験を受験できるのは、こうした受験資格を既に持っている人ということになります。

これまで心理職は大学などでは人気があるものの、▽民間資格を取得するまでに時間がかかる▽常勤採用がされにくい▽報酬もまちまち……と「不安定な職業」と見られていました。国家資格化されれば、いわゆる職能団体ができ、専門家としての待遇改善につながる可能性があります。
学校では1995年度からSCの配置がスタートしています。児童生徒のいじめ問題等の対策強化に向けて、文部科学省は今年度、公立小中学校への配置を2万6,000校から700校増の2万6,700校に拡充する方針です。

災害時に被災した子どもの心のケアや、いじめや不登校への対応など、心理職に期待される役割は、学校でもますます大きくなっています。今回の国家資格化で、よりよい相談体制が充実することが期待されます。

(筆者:長尾康子)

公認心理師とは(厚労省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116049.html

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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