公立高入試も英語4技能の時代へ 東京都が先駆け

東京都教育委員会の検討委員会は、都立高校入試の英語に「話すこと」(スピーキング)の試験を導入することを求めた報告書をまとめました。これを受けて都教委は、2018年度中に実施方法などの検討をして、2019年度以降にプレテストを実施する方針です。
今後、高校入試の英語のスピーキング導入が全国的に広がることが予想される他、小中学校の英語の授業も大きな変化を迫られることになりそうです。

狙いは中学校の英語教育改革

2020年度から小学校で全面実施される新学習指導要領では、5・6年生で英語が教科化される他、英語に親しむ「外国語活動」が現行の5・6年生から3・4年生へと前倒しされます。さらに中学校(2021年度から全面実施)の英語の授業も、高校と同じように、原則として英語で行われることになります。これらの英語教育の改革の柱となっているのが、「聞く・読む・話す・書く」の4技能をバランスよく教えることで、グローバル化に対応する「使える英語」を習得させるという考え方です。
2020年度から大学入試センター試験に代わって導入される「大学入学共通テスト」の英語も、「聞く・読む・話す・書く」の4技能を評価するため、英語資格・検定試験で代替できるようになる予定です。これにより高校の英語の授業が大きく変わることは確実です。
一方、懸念されるのが小中学校の英語の授業の在り方です。都の検討委員会でも「話す」が高校入試などで評価されないため、都の公立中学校の英語は、従来通り「聞く・読む・書く」の3技能中心のままになっている可能性があると指摘されています。
都立高校入試の改革は、小中学校の英語教育で「聞く・読む・話す・書く」の4技能を一貫してバランスよく教えるように促すことが狙いとも言えます。

私立高校・中学校入試にも影響?

具体的には、英語資格・検定試験を実施している団体と連携して、通常の学力試験とは別日程で行う方針で、2018年度中にスピーキングのテスト方法などを公表、19年度以降に試行のためのプレテストを実施。その後、一部実施などを経て全面的に導入する予定です。実現すれば、中学校の英語教育にも大きな影響を及ぼすことは必至でしょう。
ただ、約5万人に上る都立高校受験者に対して、スピーキングテストの採点の公平性、テスト会場など試験環境などの平等性をどう確保するか、スピーキングテストの費用負担をどうするかなどが大きな課題となりそうです。
英語のスピーキング評価に関する高校入試改革の動きは他にもあります。大阪府は2017年度府立高校入試から英語を資格・検定試験の成績で換算できるようにした他、福井県は2018年度県立高校入試から資格・検定試験で一定レベルに達した受験生に英語の点数を加点することにしています。
東京都の方針決定によって、英語のスピーキングテストの導入は、全国の公立高校入試ばかりでなく、私立高校でも追随する動きが広がることが予想されます。また中学校の英語教育の変化に伴い、私立中学校入試でも同様の動きが広がる可能性もありそうです。

(筆者:斎藤剛史)

※「東京都立高等学校入学者選抜英語検査改善検討委員会報告書」について
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/2017/pr171214b.html

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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