渡された教科書は幾ら? 実は週刊誌より安いものも…

新学期を迎え、新しい教科書を渡されると、改めて「さあ、これから一年、新たな気持ちで勉強を頑張ろう」と思うお子さんも少なくないことでしょう。一方、ご自分のころと比べても「ずいぶん大判化して、厚くなったな」と感じたかたもいるのではないでしょうか。
小・中学校の教科書は無償給与されるため、保護者の負担にはなりませんが、その分は国の予算、すなわち国民の税金で賄われています。実際には幾らなのか、見てみましょう。ちなみに4月10日は「教科書の日」です。

1冊の平均は小学校で400円ほど

学校で使われる教科書が、文部科学省の検定を受なければならないことは、よく知られています。その検定教科書は、定価も、文科省が定める基準の範囲内で、それぞれ認可を受ける必要があります。

どの教科書を採択するかは教育委員会や学校によって違いますが、文部科学省によると、2016(平成28)年度は1点(1冊分)当たりの平均で、小学校407円、中学校547円、高校817円でした。無償給与される義務教育分について、児童生徒1人当たりの平均教科書費は、小学校が3,410円、中学校は4,944円。小学校6年間で2万460円、中学校3年間で1万4,832円になる計算ですから、トータルすると結構な額になります。

これら義務教育の教科書は、国公私立を問わず、国から無償給与されます。2016(平成28)年度の予算は411億円でした。

なお、2018(平成30)年度から「道徳の時間」が「特別の教科 道徳」(道徳科)に格上げされ、教科書が発行されることに伴い、17(同29)年度予算では前年度比5億円増の416億円を計上していますが、それ以外の定価はほぼ据え置かれています。

発行者には悩ましい面も

こうした教科書無償制度は、教科書発行会社にとって悩ましい面もあります。先生が使いやすく、子どもにも学びやすい教科書を目指して工夫を重ねていると、写真やグラフ、イラストを多用しなければならなくなるなど、コストがかさむ一方です。さらに、バリアフリー化も進めなければなりません。しかし、国の財政難により定価が抑えられているうえに、少子化に伴って需要冊数が年々落ち込んでいるため、各社とも大変な経営努力をしているのが現状です。

教科書会社でつくる一般社団法人教科書協会は、週刊誌(平均350円)より安い教科書が数多くあるとして、定価の引き上げに理解を訴えています。たとえば、小学校音楽は215円、中学校英語は276円。小学校書写になると158円で、新聞(全国紙朝刊136円)並みの値段です。

それでも、検定教科書が全国どこで学んでも一定の教育水準を担保し、日本の子どもたちの高い学力の維持に寄与していること、教科書無償制度が憲法の「義務教育は、これを無償とする」(26条2項)という規定によるものであることを、忘れてはいけません。他にも学用品や副教材など、家庭負担の教育費はかさみます。教科書無償は、最低限の保障です。

ちなみに、文科省のホームページには、各社の教科書の定価が一覧になっています。お子さんの受け取った教科書が実際に幾らなのか、計算してみてはいかがでしょうか。

※教科書の定価(文科省HP「教科書制度の概要」より)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/gaiyou/04060901/1235097.htm

※2017年度の各教科書の定価
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/1382797.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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