自主的にスポーツしたい子を80%に 国の第2期計画

文部科学省は、第2期スポーツ基本計画を策定しました。「一億総スポーツ社会」の実現を基本方針に掲げていますが、その基礎を作るのが子ども時代であることは言うまでもありません。 折しも、2020(平成32)年の東京オリンピック・パラリンピックをターゲットにした小・中学校の次期学習指導要領も告示されました。学校体育はどう変わるのかを中心に見ていきましょう。

嫌いな子は半減を目指す

スポーツ基本計画は、2011(平成23)年に制定されたスポーツ基本法に基づき、文部科学相が定める5年間の計画です。現行計画は2016(平成28)年度で終了しましたが、その間、東京五輪の開催が決定したこと(2013<平成25>年)、それを契機に障害者スポーツが厚生労働省から文科省に移管され(14<同26>年)、文科省の外局としてスポーツ庁が創設されたこと(15<同27>年)といった大きな変化がありました。

そこで第2期計画では、「スポーツが変える。未来を創る」をキャッチフレーズに、スポーツの「楽しさ」「喜び」こそがスポーツの価値の中核であることを強調。すべての人が自発的にスポーツに取り組み、スポーツで(1)「人生」が変わる!(2)「社会」を変える!(3)「世界」とつながる!(4)「未来」を創る!……としています。

このうち、学校体育をはじめとする子どものスポーツに関しては、自主的にスポーツをする時間を持ちたいと思う中学生の割合を、現行の58.7%から80%に引き上げるとともに、スポーツが「嫌い」「やや嫌い」の合計を16.4%から8%へと半減させること、子どもの体力水準を1985(昭和60)年ごろの水準にまで引き上げることを、施策目標に据えました。

現在は、中学生で運動する子としない子に二極分化していることが、同庁の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(全国体力テスト)から明らかになっています。子どもをスポーツ嫌いにさせないこと、運動習慣を付けさせることが必要になっています。

体育もアクティブ・ラーニングの対象

次期指導要領では、総則に「健康で安全な生活と豊かなスポーツライフの実現」を目指した教育の充実を掲げ、小学校では、各種の運動を通じてフェアプレーを大切にするなどスポーツの意義や価値に触れることや、健康と運動の関わりを重視。中学校では、現行指導要領(2008<平成20>年改訂)で新設された「体つくり運動」で「実生活に生かす運動の計画」を考えさせるとしています。

体育というと、どうしても保護者世代は体を動かすだけだと思いがちですが、現行指導要領では「言語活動」として、体を動かすのを止めて考えたり話し合ったりする活動も取り入れられています。さらに次期指導要領では、どの教科などでも(1)知識・技能(2)思考力・判断力・表現力等(3)学びに向かう力・人間性等……を育成するため、アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び、AL)を取り入れるとしており、体育も同様です。

同計画で言うスポーツへの参画は、スポーツを「する」だけでなく、「みる」「ささえる」も含んでいます。東京五輪をきっかけに、将来を担う子どもたちの豊かなスポーツライフにも思いをいたしたいものです。

※第2期スポーツ基本計画について(答申)
http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/shingi/001_index/gaiyou/1382785.htm

※次期学習指導要領
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000878&Mode=0

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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