大学生に足りないのは耐力と異文化適応力

2018(平成30)年3月卒業予定の大学生の就職活動が、いよいよ3月からスタートします。現在の企業は、大学生にどんな力や経験を求めているのでしょうか。経済同友会が行った「企業の採用と教育に関するアンケート調査」の結果では、企業が大学生に足りないと思っている力は「耐力・胆力」と「異文化適応力」であることがわかりました。

コミュニケーション能力はあって当然

調査は2016(平成28)年9~10月、経済同友会の会員企業を対象に実施し、197社(22.6%)から回答を得ました。新卒採用した大学生の資質・能力に関して、コミュニケーション能力などが備わっているかでは、ほとんどの企業が備わっていると回答しています。

ただし、「十分に備わっている」という回答のみを見ると、「コミュニケーション能力」が40.7%、「課題設定力・解決力」が29.1%、「耐力・胆力」が26.5%、「異文化適応力」が26.1%となっており、多くの企業が大学生に対して「異文化適応力」と「耐力・胆力」が足りないと見ているようです。経済同友会では、異文化適応力を「多様性を尊重し、異文化を受け入れながら組織力を高める力」、耐力・胆力を「困難から逃げずにそれに向き合い、乗り越える力」としています。

一方、企業が大学に人材育成の面で期待することは、「対人コミュニケーション能力の養成」が79.3%、「ストレス耐性(折れない心・粘り強さ)」と「職業教育・職業観の養成」が各60.1%などで、2014(平成26)年調査と比較すると、「ストレス耐性」が8.7ポイント増、「職業教育・職業観の養成」が12.9ポイント増と大きく伸びています。

大学に教育面で求めるのは「論理的思考能力や問題解決能力の養成」が91.2%、「専門的な学問教育」が72.2%、「ディベートやプレゼンテーション能力の訓練」が59.8%などでした。コミュニケーション能力や問題解決能力はあって当然、それにプラスしてストレス耐性や耐力・胆力の他、異文化適応力、職業観などを身に付けておいてほしいというのが、企業の本音だといえそうです。

約9割がインターンシップと採用を関連付け

大学生の在学中の学びで重視するのは、「学外での社会活動・経験」が71.7%、「基礎的な教育」が68.2%、「専門教育・研究」が63.0%などで、積極的に多様な経験を積むことを求めているようです。さらに採用で重視する在学中の経験は、「サークルや体育会等の活動」が75.0%、「海外経験」が49.5%、「アルバイト経験」が48.4%、「企業等でのインターンシップ経験」は25.5%などとなっています。

このうちインターンシップの経験を重視する企業は、少ないように見えます。しかし、インターンシップを採用とつなげて考えている企業は10.7%、採用につながるのが望ましいという企業は62.9%、インターンシップ結果を採用の参考にすべきという企業は12.6%で、合計すると86.2%の企業が何らかの形でインターンシップと採用を関連付けていました。就職日程の関係で大学3年生に対するインターンシップが難しくなったためか、大学1年生対象にインターンシップを実施する企業が増えています。インターンシップの動向が今後、注目されそうです。

※「企業の採用と教育に関するアンケート調査」結果(2016年調査)
https://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2016/161221b.html

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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