新しい指導要領の「実現」に何が必要?

文部科学省は現在、新しい小・中学校の学習指導要領と幼稚園教育要領(幼稚園は2018<平成30>年度から、小学校は20<同32>年度から、中学校は21<同33>年度から、それぞれ全面実施)を3月中に告示すべく、急ピッチで作業を進めています。
昨年12月に中央教育審議会が答申をまとめて以来、学校現場では、どうやって新しい授業に対応するか、関心はますます高まっています。ただ、求められる教育があまりにも盛りだくさんなため、その趣旨の実現には、さまざまな課題があることも確かです。

今まで以上に授業の工夫が必要

中教審答申のタイトルは「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」です。通例なら「~指導要領等の改善について」で済ませるところを、今回わざわざ「必要な方策等」と入れたのは、単なる学校の努力だけでなく、先生の数を増やしたり、ICT(情報通信技術)機器をそろえたりする「条件整備」も伴わなければ、順調にはいかないだろう……という問題意識からです。

次期指導要領では、「何を教えるか」にとどまらず、児童生徒が「何ができるようになるか」「どのように学ぶか」を工夫することが求められます。「何を学ぶか」についても、教科間や学校段階間のつながりを踏まえておく必要があります。具体的には、教科・領域を超えた学力観である「資質・能力の三つの柱」(【1】知識・技能【2】思考力・判断力・表現力等【3】学びに向かう力・人間性等)を育成するために、授業が「主体的・対話的で深い学び」になるよう、アクティブ・ラーニング(AL)を取り入れるとしています。

ALは、単に活動をアクティブにすればよいわけではありません。活動を通じて子ども一人ひとりの頭の中をアクティブにして、社会に出てからも役に立つ資質・能力にまで高めることが求められます。しかも学習内容は減らさないというのですから、今まで以上に授業を効率化しなければ、年間授業時間内に収めることもできません。

先生の増員やICT整備を

そうした改訂趣旨を実現するには、まず、先生一人ひとりが改訂の趣旨を正しく理解し、他の学校種や他の教科等のことも把握したうえで、各学校でカリキュラム研究や授業研究に取り組むことが必須です。

ただでさえ、教員の多忙化が指摘されています。本来なら、先生の数を大幅に増やす「教職員定数の改善」を、計画的に行いたいところです。しかし現在、国会で審議されている2017(平成29)年度予算案では、通級指導や外国人児童生徒の教育などに充てる教職員定数は充実(基礎定数化)させるものの、加配定数は全国で395人の改善にすぎず、しかもAL分は10人です。

文部科学省は毎年、7〜10年間を計画期間とする教職員定数改善計画を要求していますが、財務省は認めません。今後、正式な次期指導要領の告示を受けて、どれだけ先生の増員が必要か、きちんと計算したうえで、新たな改善計画を要求することが求められるでしょう。

ALを行うには、子どもの活動を助けるにも、先生が効率的に授業を進めるにも、ICT機器が効果を発揮します。ICT整備は、国の補助金ではなく地方交付税で措置されているため、地方自治体で予算をつける必要があります。中教審答申をもとに、2月議会での真剣な議論が期待されますし、保護者や地域住民も声を上げていく必要があるでしょう。

※中教審答申
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/siryo/1380469.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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