小児科医が教える! アレルギーを撃退する「掃除法」【基礎編】

アレルギー疾患を抱える日本人は、約2人に1人ともいわれます(厚生労働省『アレルギー疾患対策の方向性等』2011<平成23>年8月)。大きな原因の一つが、ダニやホコリ、カビなど家庭内のハウスダストだといわれています。ハウスダストを減らすには掃除が重要ですが、間違った方法ではかえって、症状を悪化させてしまうことも。そこで今回は、小児科医の池谷優子先生に、アレルギーを撃退する正しい掃除法について伺いました。



アレルギー疾患が急増中!

近年、ぜんそく・鼻炎・花粉症・食物アレルギー・ペットアレルギー・アトピー性皮膚炎など、アレルギーと診断される子どもが、急増しています。アレルギーにはさまざまな種類があり、症状やその程度もさまざまですが、いったいアレルギーとは何なのでしょうか。

私たちの体には、外部の細菌やウイルスなどの異物から守ってくれる防衛システム「免疫」が備わっています。たとえば、私たちは一度、はしかにかかると、二度とかかりません。それは、はしかに対する「抗体」(異物を排除しようとする物質)ができ、再びはしかウイルスが体内に侵入しようとすると、戦って防御してくれるからです。ところが、防御する必要のない異物に対して、免疫が過剰に防御反応を起こしてしまうことがあります。
たとえば、鼻の粘膜に花粉が付着して「異物」とみなされると、免疫反応により、花粉を追い出そうと鼻水やくしゃみが起こります。これが花粉症です。
つまり、アレルギーとは、免疫が本来害のないものに対して反応してしまう、免疫のありがた迷惑な過剰反応です。困ったことに、現代の生活環境の中では、アレルギーの原因となるものがたくさん存在します。花粉のほかに、ダニやハウスダストが挙げられます。ダニやハウスダストは季節に関係なく身の回りにあるため、常に刺激を受けることにより、さらにアトピー性皮膚炎、鼻炎やぜんそくといったアレルギー症状を引き起こしてしまうのです。



1日4回も掃除をしていたのに息子がぜんそくに……

アレルギー疾患の治療は、「症状を起こさせない」「症状を抑える」ことが基本ですが、原因となるものを除去・回避するのが一番の近道です。
アレルギーの症状により差はありますが、ダニやハウスダスト対策はすべてのアレルギーに共通かつ最大の注意点であり、しっかり掃除することが大切となります。
というのも、我が子が、ハウスダストが原因のぜんそくになってしまった経験があるからです。小児科医という仕事柄、アレルギーの知識もあり、こまめに掃除もしていたので、「そんなばかな!」という気持ちでいっぱいでした。
症状を抑えるために掃除と布団干しが重要だと、1日4回も掃除機をかけ、布団を頻繁に干し、布団たたきでバンバンたたいていました。しかし、症状は悪化の一途をたどり、治まる気配はありませんでした。

「どうして症状が改善しないのだろう?」。冷静になり、医療用のマニュアルだけでなく、さまざまな掃除の方法を調べ、自分の掃除について振り返ってみたのです。そこで気付いたのは、よいと信じて行ってきた掃除法が、むしろぜんそくを誘発していたことでした。



正しい掃除法でぜんそくの発作が治まった

たとえば、掃除機がけですが、頻繁に掃除機をかけることそのものが、ホコリをまき散らす原因となっていたのです。フローリングのようなつるつるした場所では、まず拭き掃除で表面のホコリをぬぐうことが大切です。さもないと、掃除機から出る排気で、表面のホコリを空中にばらまいてしまうことになります。また、布団干しの際に布団たたきでたたくのも、ダニを押しつぶしまき散らしていただけだったのです。布団の表面に出てきたダニやその死骸はたたけばたたくほど粉砕されて細かくなり、より舞い上がりやすく、体に吸収されやすくなっていたのでした。
自らの掃除法を見直して以来、次男は、ぜんそくの発作を起こさなくなりました。

次回は、池谷先生も実践しているアレルギーを撃退する掃除法を具体的に教えていただきます。


プロフィール


池谷優子

医療法人社団池谷医院医師。小児科専門医。医学博士。自身も3人の子どもの母親という立場から、子育て経験を生かした診療やアドバイスを行っている。著書『アレルギーを撃退する「おそうじ」マニュアル』(マキノ出版)。

子育て・教育Q&A