いじめ防止、学校の課題は? 基本方針の策定でQ&A‐斎藤剛史‐

2013(平成25)年9月に施行された「いじめ防止対策推進法」は、国公私立を問わず小学校から高校まで全部の学校に「学校いじめ防止基本方針」の策定と「いじめ防止対策委員会」といった校内組織の設置を義務付けています。ただ、これらが本格的に動き始めるのは今春の新学期からとなりそうです。というのも、学校現場にとっても初めての経験で、どこも手探り状態だからです。このため国立教育政策研究所は、学校がどう対応すればよいのかをまとめた生徒指導リーフ増刊号「いじめのない学校づくり 『学校いじめ防止基本方針』策定Q&A(以下『Q&A』)」(外部のPDFにリンク)を作成し、全国の学校に配布しました。内容を知っておくことは、保護者などにとっても非常に有益でしょう。

「Q&A」の中身を具体的に見ていきましょう。
まず、学校ごとに策定するいじめ防止基本方針は、単なる理念を示したスローガンではないとくぎを刺して、「いじめが起きないように、どのような取組を、どのくらいの回数、どの学年のどの時期に……といった内容まで書き込む必要がある」と述べています。基本方針は保護者に周知されることになっていますので、どれだけ具体的な取り組みが盛り込まれているかがチェックのポイントになるでしょう。もし示された基本方針が、抽象的な内容だけなら、その学校の対応は不十分と言わざるを得ません。
また、同基本方針はいじめ発生後に用いる「対応マニュアル」ではないとも強調しており、「いじめ防止」(未然防止のための取組)、「早期発見」(いじめの兆候を見逃さない取組)、「いじめに対する措置」(発見したいじめへの対処)の3段階における具体的な対応を示すよう求めています。このうち最も重視しているのが、「いじめ防止」の段階における取り組みです。「被害者・加害者を発見するまでもなく、すべての児童生徒がいじめに巻き込まれる可能性がある」からです。

さらに、いじめ防止の3本柱として「規律・学力・自己有用感」の育成を挙げ、具体的には「わかる授業」を行うよう求めています。静かに授業が始められ、子ども全員にわかる授業を展開すれば、生徒指導上の問題の多くは未然に防止できるという考え方です。ここで言う「わかる授業」とは、単に学力向上を目指す授業ではなく、すべての子どもが授業に参加して活躍でき、理解できるという授業です。このため「Q&A」は、教員が互いに授業公開などを行うことが必要であるとしています。さらに、「自己有用感」とは、自分は他人や社会の役に立っているという意識であり、「社会体験」などを積ませる取り組みを計画的に行うことが重要であるとしています。
このほか、「いじめの早期発見」では、隠れたいじめを見つけるため、定期的なアンケート調査や相談活動などのほか、メモや日誌など従来は教員個人レベルにとどまっていた情報を共有する仕組みをつくることを挙げています。そして、「発見したいじめへの対処」では、「速やかに止めることを最優先」するとしています。

どんな基本方針が学校から示されるのか、保護者は注意深く見守ることが必要でしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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